デジタルプライバシーについて考える「データプライバシーの日」と定められた1月28日、世界中でオンライン上の個人情報を守る重要性を人々に喚起するさまざまな取り組みが行われました。このイベントに関わり続けているAppleは今年、データ追跡に関するレポート「A Day in the Life of Your Data」を公開、iOS 14/iPadOS 14の次のベータ版に「App Tracking Transparency」(以下、ATT)を組み込む計画を明らかにしました。後述しますが、ATTは脱cookieに匹敵するぐらい大きな影響をデジタル広告にもたらすとみられています。
下の画像は、2019年に米国で大きな話題になったNew York Timesの「Twelve Million Phones, One Dataset, Zero Privacy」から。ホワイトハウスとその周辺のスマートフォンユーザーのロケーションです。
個人情報どころか機密情報に関わる場所なのに、人の動きが露わです。モバイル機器から位置データが共有される際には、個々のデバイスが特定されないように匿名化されます。だから、データ追跡に使われても匿名の消費者アンケートぐらいのものと思うかもしれません。しかし、New York Timesは「確かに、位置情報は名前や電子メールアドレスのような特定可能な情報を含まない何十億ものデータポイントでしかありません。でも、それは子どもだましで、マップ上に表示される点は容易に実名に結びつけられます」と指摘しています。
「Twelve Million Phones, One Dataset, Zero Privacy」のようなレポートや、IABの「The Socioeconomic Impact of Internet Tracking」のような論文などを通じて、近年人々のプライバシー意識が高まっています。Appleの「A Day in the Life of Your Data」(PDFファイル)は、ジョンが7歳の娘エマと遊びに行く計画を立て、車で公園に行き、アイスクリームを買うという日常のストーリーを例に、個人の行動が追跡され、データが利用される可能性を分かりやすく解説しています。数々のレポートや論文をベースに、モバイル機器ユーザーがより自分の体験としてデータプライバシーの問題を考えられるように説明していて、ひと通り読むと注意すべき点や効果的な対策などプライバシー設定の勘所が分かります。ただ、残念ながら公開時点で日本語版がなく、日本語版のリリースを期待したいところです。
では、IDFAを用いずにどのように広告ターゲティングを行うかというと、Appleは「SKAdNetwork」というモバイル・インストールアトリビューションの通知を受けられるAPIを用意しています。Googleは、Google Mobile Ads SDKのバージョン7.64にSKAdNetworkのサポートを追加しました。ただし、SKAdNetworkはプライバシー保護を徹底している一方で、マーケティングツールとしては限定的であり、開発者やビジネスのニーズを満たす向上をGoogleはAppleに求め、パートナーとともにフィードバックを準備しているそうです。
Googleとは対照的にFacebookは、AppleがApp Storeにおける独占的な力を濫用し、広告効果に頼る中小ビジネスに大きな損失をもたらそうとしていると批判の声を強めています。New York Timesなどによると、反トラスト法(独占禁止法)違反での提訴を視野に入れているそうで、そうなるとEpic Gamesの「Fortniteの乱」のようにこじれる可能性も。Googleも、iOSではAppleのガイドラインに従うものの、Androidにおける広告識別の扱いについては不明です。