近年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権GTLMクラスで、ワークスのポルシェ911 RSRを走らせていたローレンス・ファントールとアール・バンバーは、2021年シーズンは別々のチームからGTDクラスへと参戦する。このことは、ふたりの「友好的なライバル関係」に火を付けることになるのだろうか?
2019年のGTLMクラス王者であるふたりは、ポルシェのファクトリープログラムが2020シーズン限りで終了した後、フルシーズン参戦ができるGTDクラスのチームを見つけた。
ファントールはパフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 Rをドライブする一方、バンバーは新たに結成されたチーム・ハードポイントEBMの共同オーナー兼ドライバーとなったのだ。ファントールはザカリー・ロビションと、バンバーはロブ・フェリオールとともにフル参戦を果たす。
「僕らは何年もの間、同じマシンで戦ってきた。だから僕らには“友好的なライバル関係”がある」とバンバーは説明する。
「人は常に仲間を打ち負かしたいと思うものだ。彼(ファントール)と戦う今年は、とても良い、楽しいシーズンになると思う」
「僕はそれを楽しみにしているよ。今年のGTDは非常に競争が激しい。デイトナ24時間では約20台もいる。GTLMから来た身としては、たくさんのマシンがいるフィールドでドライブするのは本当に素晴らしいことだね」
一方のファントールは、トラックを離れた際の彼らの関係は、それぞれが新たな任務に就いてからも変わっていないと言う。このため、それぞれがウェザーテック・チャンピオンシップのパドックにおいて、フルタイムのドライバーとして活躍し続けることができる。
「僕らはいまでもお互いに電話をかけ、テキスト(メッセージ)を送り、いつもどおりいろんなことについて話しているよ」とファントール。
「僕らは、僕らが思っている程度にはプロフェッショナルだけど、お互いに後ろを走っている場合は、ポジションを失うことはどうしても避けたいよね」
「スティーブ(・ボルトロッティ。パフ・モータースポーツのチームマネジャー)に、マシンのバンパーがどれくらい高価なのか、確かめておかなくちゃな。アールが運転してるのは、彼自身がオーナーの車だろう? めちゃくちゃ怒るだろうし、金もかかるだろうから、後ろからぶつけてみたいよね!」
冗談はさておくとして、GTLMクラスで多くのシーズンを過ごしてきた彼らふたりが、ともにそれぞれのチームに新鮮な見解をもたらすことができると、バンバーは確信しているという。
「興味深い要素になると思う」とバンバー。
「そこには多くの新しい課題がたくさんあると思う。GTDでコースを改めて学ぶ必要もあるしね。正直なところ、シーズン中のライバル関係は非常にクールなものになると思う」
■違いはABSの有無とタイヤ。参戦台数が戦略にも影響?
近年のインターコンチネンタルGTチャレンジやニュルブルクリンク24時間レースにおけるポルシェ911 GT3 Rの経験から、GTLMクラスからGTDクラスへの切り替えでもっともアジャストが必要なのはブレーキについてだとバンバーは言う。
「ABSを使ったブレーキングに、再び慣れてきたところだ」とバンバーは語った。
「それが慣れる必要のある、特別な点だ」
「GT3ではピレリタイヤには慣れているが、(IMSAで使う)ミシュランにはまったく慣れていない。僕らはそれに慣れる必要がある」
「また、20台のマシンでのレーススタイルも、少々異なる。僕らはこれまで、通常は6台のクラスで戦ってきたからね。GTLMではトラックポジションを失うことを、それほど気にする必要がなかったから、アグレッシブな戦略を採ることができた」
「だがGTDでは、4番手から20番手に転落することもある。これがダイナミックに異なるところだと思う」
「トラフィックも、より頻繁にマネージメントすることになるだろう。だけど、(先週デイトナで行なわれた)予選レースではそれほど悪くなかったね」
「GTDでの経験を持つドライバーたちは、学ぶべきことがある僕らに対してアドバンテージはあると思うけど、それほど大きな問題ではない」
渡航制限の影響により、ファントールは先週の公式テストの前に初めて直接チームと顔を合わせたという。
「過去4年間、ポルシェのGTLMチームとともに戦ったので、確かに少しの適応は必要だけど、知らない環境ではないからね」とファントール。
「いま僕は新たな人々、チームメイト、これまでとは異なるクルマに慣れているところだよ」
「いまのところ、すべてが順調に進んでいる。チームに加わる前から、パフ・モータースポーツとザカリーについては素晴らしいと聞いていた」
「僕らは、タイトルのために戦うことができる、非常にいい環境にいると思う。それが、確かなる目標だよ」