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外科医の折り鶴が"紙技"すぎる!"腹腔鏡手術のいい練習"と語る30代医師「最初の一羽は1時間かかりました」

2021年01月26日 13:50  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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手の術(わざ)を書いて「手術」。中でも、人の生死を左右する外科手術は、大きなプレッシャーを感じながらも正確無比に手先を動かすことが求められる。

ツイッターで1月中旬、手術で使われる鉗子で器用に折り鶴を折る動画が話題になった。投稿したオペ中さんは30代医師。曰く、"腹腔鏡手術のかなりいい練習になる"とのことだった。投稿には26日時点で、12.1万件のいいね、3.1万件のリツイートが寄せられている。

「300羽ほど折って5~6分に安定しました」


腹腔鏡手術は、お腹に数か所の小さな穴を開け、内部に挿入した小型カメラや手術器具を操る手術。通常は手先を見ることはできず、モニターに映し出された映像を見ながら行う。

投稿された動画では、スムーズな動作で折り鶴を完成させていく一部始終が映し出されており、リプライ欄には「凄すぎます!!しかもキレイな鶴!!」と絶賛する声や、他の外科医から「これ一時期やってました。とても良いトレーニングでした」と共感する声が寄せられている。

オペ中さんは、キャリコネニュースの取材に「一般に、50羽ほど折れば安定して綺麗な鶴が折れるようになると思います」と答える。だが、手術で求められるのは正確さだけでない。折り鶴完成までに3分を切る医師もいると紹介した上で、

「初めた頃は誰もが時間がかかるものです。私の場合、最初の一羽は1時間ほどかかりましたが、徐々に時間は短縮し現在300羽ほど折ったところで5~6分に安定しました」

と話した。中には、これまでに数千羽もの折り鶴を折っている外科医もいるようで、フェイスブックにはタイムや完成度を競い合っているコミュニティがあると紹介した。

「利き手ではない手の鉗子操作の上達が得られるかと思います」

日本人であれば馴染みのある折り鶴だが、どうして腹腔鏡手術の練習になるのだろうか。オペ中さんは「折り鶴は両手を使わないと折れないのでいい練習になります」と答える。

「腹腔鏡手術では左右の鉗子を自在に操ることを求められます。(折り鶴では)特に、利き手ではない手の鉗子操作の上達が得られるかと思います」

また、腹腔鏡手術では前述の通り、3次元の構造を2次元のモニターで確認しながら操作する必要がある。この感覚を掴むのにも良い練習になるという。

「手術は『定型化』と言って手術の手順を決めて実行することが求められますが、折り鶴の手順の定型化をすることで手術同様の感覚が得られるかと思います」

折り鶴を折る動作と共通する部分は多いようだ。一方、ツイートでは「手術は生体ですから当然感触もプレッシャーも全く違います」とも投稿しており、やはり実際の手術とは異なる点も確かに存在するようだった。

「外科医=手術ではない」と強調

オペ中さんは、ツイッターへの投稿について「『手術が上手くなりたい』と思っている外科医の皆さんに『こんな良い練習法がありますよ!』と紹介したかったので投稿しました」と経緯を説明する。だが、実際には医療関係者以外からも多くの反響が寄せられている。

「想像以上に広まり驚いています。医療者以外の方からの反響も多く、腹腔鏡手術の良い啓蒙や普及に少しでも貢献できたかと思うと嬉しい限りです」

一方、寄せられたリプライの中で気になる点もあったという。「『外科医みんな鶴が折れる』『鶴が折れないと外科医失格』のように、鶴を折ることが当たり前みたいな誤った認識を一部の方に与えてしまったことです」。これについては、その後のツイートで

「腹腔鏡に携わる医師全員が鶴を折っているわけではありません。鶴を折る以外にも縫合等様々な練習があり、鶴を折れなくても一流の腕を持つ外科医は大勢います」
「鶴を折れなくても、外科医として非常に優秀で患者さんや周りのスタッフから信頼されている先生は大勢いることが皆さんに伝わればと思っています」

などと説明を補足している。「つまり『外科医≠手術』ということが伝えたい」とも語った。外科医は手術の力量だけでなく、術前術後管理、化学療法、緩和医療、集中治療、救急対応なども求められる。普段は知られざる外科医の練習方法に、思わず目を丸くした人も多いのではないだろうか。