2021年01月24日 10:01 弁護士ドットコム
結婚式には多くの手間と費用がかけられている。トラブルやアクシデントが起これば、新郎新婦の恨みを買うことにつながりやすい。
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式を挙げた女性から「私は一生に一度の結婚式を台無しにしたゲストのかたが許せません」という怒りの相談が、弁護士ドットコムに寄せられた。
相談者の女性によれば、披露宴の余興のプランは夫が担当した。
夫からは「何度か通ったことのあるニューハーフパブのかたに依頼」したこと、「ちょっと下ネタだけど大丈夫」と伝えられたことのほか、女性は当日まで内容を知らされなかったという。
「当日、みなさんが笑えるぐらいの下ネタから始まったのですが、最後に全員が全裸になり、会場全体がドン引きで、一瞬で結婚式の雰囲気がぶち壊されました」
「共犯」を疑われかけた夫も「ここまでするとは聞いてない」と驚いていたそうだ。
プランナーからも脱ぐなと事前に注意を受けていたにもかかわらず、「勝手に全裸になったようです」。
余興のお礼として、すでに数万円支払い済みだが、「結婚式のことを思い出すたびに、悲しさと悔しさと恥ずかしさがこみ上げてきて、いまだに涙する日々です」と悲痛な思いでいる。
相談者は、全裸になった人たちに対して、謝罪だけでなく、余興の料金の返還や、慰謝料の請求を求めたいと考えている。「全裸余興」の法的な問題について、髙橋裕樹弁護士が解説する。
ーー新郎新婦や多くの客の目の前で全裸になっています
結婚式余興でのサプライズは感動や盛り上がりを呼べば感謝されるものですが、場がしらけるどころかドン引きさせるような犯罪行為はやはり慎まれるべきでしょう。
今回のニューハーフパブの人たちの行為は公然わいせつ罪(刑法174条、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)に該当する可能性があります。
結婚式場が、不特定多数の人が出入りする場所である以上、公衆の面前といえます。股間を出してしまった場合、公然わいせつ罪になる可能性があると思われます。
ーー謝罪や返金、慰謝料などを求めることはできるでしょうか
新婦が謝罪を求めること自体は問題ないですが、実際、裁判で謝罪を義務付けるのは難しいでしょう。
また、余興のお礼は、委任契約の報酬というより贈与に近い性質のものだと思いますので、解除に基づく返金請求や損害賠償は難しいでしょう。
一方、結婚式で全裸になる行為は上記の通り犯罪、つまり違法で許容されない行為なので、不法行為に基づく慰謝料請求をすることは可能だと思います。
もっとも、お酒の入った席での余興をお願いし、「下ネタ」をするとまで宣言されていたのにゴーサインを出したのは他でもない新郎なわけですから、適切な対処・予防をしなかった新郎が責任の一部を負う可能性もあるかもしれません。
ーー余興にサプライズは付き物とはいえ、新郎新婦がある程度コントロールすべきかもしれませんね
現在はコロナ禍ですが、その中であっても、結婚式でサプライズをする方は今後も増えていくだろうと思います。
僕も自分の結婚式の二次会でクイズの回答を間違ったところ、サプライズでプロのムエタイ選手が現れてお尻を思いっきり蹴られました。盛り上がりましたが、星が見えました。
くれぐれも犯罪と怪我にはご注意ください!
髙橋弁護士の解説は以上となる。なお、この相談は、新型コロナウイルス感染が広がる前に寄せられた。当時とくらべて、今では「やり過ぎた余興」が起きにくいだろうが、いずれコロナが収束したとき、このような事態に注意したい。
【取材協力弁護士】
髙橋 裕樹(たかはし・ゆうき)弁護士
無罪判決多数獲得の戦う弁護士。依頼者の立場に立って、徹底的に親切に、誰よりも親切でスピーディな、最高品質の法的サービスの提供をお約束!でも休日は魚と戦う釣りバカyoutuber弁護士!
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