2021年01月23日 10:21 弁護士ドットコム
「8年交際した元カノに別れを告げたら、慰謝料200万を請求され困っています」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。
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相談者によると、元カノとは同棲はしておらず、お互いに実家暮らし。結婚の話を切り出したことはあるものの、彼女に「今はまだ考えられない」と言われたきりで、結納や婚約もしていませんでした。
そんな中、相談者に新たに好きな人ができました。そこで、元カノに別れを切り出したところ、200万円の慰謝料を請求されてしまったとのことです。
相談者は、婚約をしていないのに慰謝料を支払うことに納得いかない様子です。払う必要はあるのでしょうか。渡邊幹仁弁護士の解説をお届けします。
ーー相談者は、慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。
結論としては、単に交際していただけの彼女と一方的に別れても、慰謝料を支払う義務は生じません。
結婚をしていない男女の関係については、それぞれが合意していれば、どのような交際をして、どのような関係を築くのかは、当事者の自由です。裏を返せば、交際を終わらせるのも自由なのです。
婚姻届を提出し、夫婦の契りを結んだ男女については、法的な保護が与えられます。相応の理由がなければ、一方的に別れることはできませんし、どちらかに非がある場合は、慰謝料を支払う義務も生じます。逆に言えば、結婚していない以上、法的には保護はされないというのが原則です。
ーーもし、婚約をしていたり、内縁関係が成立していたりする場合はどうでしょうか。
婚約や内縁関係を一方的に破棄すると、慰謝料を支払う義務が生じる場合があります。話がまとまらなければ、調停や裁判に発展する場合もあります。
ーー「内縁関係」とは、どのような関係のことをいうのでしょうか。
内縁関係とは、「婚姻届こそ出していないものの、結婚した夫婦と同様の意思や生活実態がある男女の関係」のことをいいます。
内縁関係も、「婚姻に準ずる関係」として扱われます。この場合にも一方的に関係を解消すれば、夫婦が離婚する場合のように、慰謝料請求が認められることがあります。
ーーどのようなことをすれば「婚約した」といえるのでしょうか。
結納をしたり、互いの両親に挨拶をしたりしなければ、婚約したことにならないと思うかもしれません。しかし法的にいえば、婚約が成立する条件は「(将来)結婚しよう」と当事者が親権に合意することだけで足ります。
ただし、裁判に発展した場合、真剣な合意があったかが問題となります。言葉のやりとりだけでは「言った」「言わない」の話になったり、「言ったけれどもリップサービスだった」となる場合も少なくありません。
この点、客観的に見て、婚約という段階に至っていたと言えれば、婚約していたと裁判所が認める可能性が高いといえます。具体的には、結納や婚約指輪の交換、結婚式場を予約したり、結婚式の招待状を送ったりして結婚式の準備を始めていたなどの事実が重視されることになります。
ーー今回のケースでは、相談者は「彼女と婚約していなかった」と言っています。場合によっては、婚約が成立したとみられる可能性もあるということでしょうか。
はい。たとえば、交際期間中に「将来は専業主婦として自分を支えてほしい」と言って、彼女にそれまでしていた仕事を辞めてもらい、代わりに自分が生活費を支払っていた、などの場合は、婚約が成立しているとみられる可能性があります。
このような場合、交際を終わらせるにあたり、婚約を一方的に破棄したとして、慰謝料を支払う義務が生じる可能性もあります。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件や、刑事事件・犯罪被害事件を数多く取り扱っている。
事務所名:そらいろ法律事務所