年間エントリーリストの発表により、2021年のWEC世界耐久選手権LMP2クラスに参戦することが明らかになったベルギーのWRT(Wレーシングチーム)。そのチーム代表であるヴァンサン・ボッセは、これまで数々のGTレースを制してきた同チームが、LMP2カテゴリーへとステップアップする「適切な時期」にあると述べている。
WRTは今季、オレカ07・ギブソンで初めてWECへと参戦することになる。ボッセはこれが、将来のLMDhカテゴリーへの参戦に向けたステップとなることを望んでいる。
ここ数カ月、プロトタイプ界の動きに興味を示してきたボッセは、強力なLMP2のエントリーリストと、将来的にトップカテゴリーが盛り上がる可能性が組み合わさったことにより、2021年は彼のチームがWECへコミットするのに最適な瞬間となった、とSportscar365に対して語っている。
スパ24時間、ニュルブルクリンク24時間、そしてバサースト12時間など、いくつかの主要なGT3エンデューロをアウディとともに制してきたWRTは、2016年、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのスパ・フランコルシャン戦でLMP2クラスに参戦している。
ローレンス・ファントール、ドリス・ファントール、ウィル・スティーブンスによりドライブされたリジェJS P2・ジャッドで2位フィニッシュを果たした。その後も関心を失うことはなかったというが、これまでこのカテゴリーに戻ることはなかった。
「これまでは、うまくやるための方法と合理的な理由を見つけることができなかったんだ」とボッセは語っている。
「いま、私はLMDhの時代が来ることを信じている。だから決断のタイミングとしては完璧だと思う。LMDhは耐久レースの未来だ。明るい未来が目の前にあるし、私は自分たちをLMP2のトップチームのひとつに位置付けたいと思う」
「そこにはふたつのゴール(目標)がある。まずはGTで成し遂げたようなチームづくりを、LMP2でもすることだ」
「私はLMP2カテゴリーを過小評価しているわけではないので、それが1年以内に達成できるとは思っていないよ。だが、いまが我々にとって適切な時期であると判断した」
「ふたつ目の目標は、LMDhに向けて自分たちを適切なポジションに置くこと。我々はそれにふさわしい時期であると考えている」
「今日、もしシングルシーターを卒業したいと考える人がいたら、その世界から飛び出し、スポーツカーでキャリアを作っていかなくてはならない」
「これまでは、GTレースに参加するのが最善の方法だったと思う。なぜなら、それはプロとして稼ぐための近道だからだ」
「だがいまなら、ポルシェやアウディ、プジョー、トヨタ、グリッケンハウスといったチームが近い将来にスポーツカー・ドライバーを必要とすることが分かっている。このため、我々にとってもプロトタイプのレースに移行するのに最適な時期となった」
WRTのLMP2チームは、主にクラス1DTMプロジェクトのチームメンバーで構成される。
チームは過去2シーズン、DTMにアウディのプライベーターとして参戦してきたが、シリーズは2021年よりGT3マシンによるレースへと改められる。これは、もしチームがDTMへの関与を続けることを選んだ場合でも、これまでのようなスペシャリストたちを必要としないことを意味している。
元DTMプロジェクトリーダーのヨナス・ファンパクテンベクがLMP2プログラムを担当し、DTMテクニカル・ディレクターのセバスチャン・ビガーがWECでもその役割を再び担うことになる。
WRTはLMP2への参戦をDTMチームのほとんどでまかなうため、現在成功しているGT3のプログラムはあまり大きな変更なしに続けることができる、とボッセは説明する。
「何人かの新たなスタッフは入るかもしれない。でも、我々はDTMで3台の車を走らせていたからね」とボッセ。
「我々のDTMチームは、GTチームとは関連がない。つまり、大勢のスタッフが(LMP2プログラムに)参加可能ということだ」
「GTのプログラムには、一切の影響を及ぼさない。(GTのプログラムは)昨年と同じくらい大きいか、それ以上のものになる。まだそれについては取り組んでいる最中だが、かなり良いものになると思う」
ボッセはまた、新しいトップレベルのプロトタイプが2022~2023年に採用されるとき、WRTがLMP2と同時にLMDhへの挑戦をする可能性を示唆している。
LMP2プロジェクトのタイムラインについて尋ねられるとボッセは、「2シーズン以上はダメというわけではない。LMDhプログラムを実行することは、LMP2を止めることを意味しない。そこへの第一歩になるかもしれないね」と語っている。
■ドライバーにはロビン・フラインスを抜擢
ボッセは、チームの最初のLMP2ドライバーとしてエントリーリストに名を連ねたロビン・フラインスについて、このプログラムに「ぴったりである」と語っている。
WRTと同様、フランイスは以前にLMP2を一度だけ経験している。2018年のデイトナ24時間レースにおいて、フェリックス・ローゼンクビスト、ダニエル・ジュンカデラ、ランス・ストロールというラインアップに加わり、ジャッキー・チェンDCレーシングのオレカをドライブしている。
プラチナにカテゴライズされるオランダ人のフラインスは、LMP2の経験こそほとんどないものの、昨年アウディでランキング3位に終わったDTMや、2018年にWRTから出場したバサースト12時間での優勝に代表されるGT3レースなどで、際立つ結果を残している。
「ロビンはシングルシーターから転向して以来、常にWRTの一部であった」とボッセは語る。
「それは我々にとって、まさに完璧な選択だ。彼は私のチームで最高のドライバーのひとりであり、もっとも才能のあるドライバーのひとりである」
「ロビンは我々に加わることが可能だったし、完璧にフィットしている。彼のドライビングスタイルにもぴったりだと思うよ」
2021年のアウディファクトリーGT3ドライバーとしてラインアップに名前が挙がらなかったフラインスは、次のように付け加える。
「チームWRTと再会することを本当に楽しみにしている」
「僕たちは過去に大きな成功を収め、すぐにそれを維持することができた。ブランパンGTシリーズではオーバーオールとスプリント、ふたつのタイトルを手にした。いまの目標はGT3と同じように、すぐに成功を収めることだ」
WRTはシルバーにカテゴライズされるドライバーを含め、フラインスのチームメイトをまだ決定していない。チームはまた、プレシーズンテストのためにオレカ07シャシーのデリバリーを待っているところだ。