会話の中で「◯◯に住んでいそう」という言葉が出てくることがある。よくあるのは中目黒、吉祥寺あたりだろうか。その街に住む人に"特有の雰囲気"があるともいえる。
キャリコネニュースでは先日、自身が住んでいる三軒茶屋を愛しているがゆえに他者にマウントを取ってしまう「三茶マウントおじさん」を紹介したが、三茶にほど近い「三宿」(世田谷区)にも独自の雰囲気があるという。
「三宿在住の一般会社員は、芸能人・経営者の"恩恵"に預かっているとも言えます」
田園都市線三軒茶屋駅と池尻大橋駅の中間に位置する三宿。渋谷や中目黒から好アクセスなものの、最寄り駅から10分以上歩くことになる"駅遠"エリアだ。しかし、逆にこれが"隠れ家"感となり人気の街になっている。鉄道事情に詳しい恋愛コンサルタントの鈴木リュウさんは、
「三宿には芸能人や経営者などハイクラスの人が住んでいることで知られています。ただ、『三宿』という土地の知名度は高い人にとっては高いけど、知らない人には知られていない。そこが大きな特徴です」
と話す。鉄道が発達している東京都23区内では「駅名」で場所を表すことが多い。しかし、「西麻布」など最寄り駅が遠くても、例外的にその地名が知れ渡っている場所がある。一部の人にとっては三宿もその一つだ。
都心から近く、かつ最寄り駅がない場所に住む人は、「駅から遠くても大丈夫な人。移動は基本的にタクシーや車の人が多いです」とのこと。会員制スナックが多く、人目を避けるために引っ越してくる人も多い。地元コミュニティも強固で、芸能人や経営者と飲み仲間になることも珍しくない。
「街にはポルシェのカイエン、ベンツのゲレンデなど高級車が走っています。『ハイクラスが住んでいる』『高級住宅街』というイメージが一部で確立されており、三宿在住の一般会社員はその"恩恵"に預かっているとも言えます」
三宿に住んでいる人はハイクラスだけではない。というのも、「乃木坂・代官山は本当に年収が高くないと住みにくいですが、普通のサラリーマンでもぎりぎり住めるのが三宿」だからだ。
「20代後半から30代の一般企業務めで三宿在住という人は、三宿のまとうイメージを気に入っている人が多いです。単なるサラリーマンにも関わらずどこかで『自分はハイクラスなんだ、エスタブリッシュメントなんだ』と錯覚する人もいますね」
「"あえて三宿を選んでいる"というマイナー感で仲間意識が生まれる傾向も」
では、その恩恵を受けるのはどういった人なのか。鈴木さんは「渋谷か三茶の安居酒屋で飲むのが好きだけど、ハイクラスとの知り合いをつくりたい人」と相反する点を挙げる。また「"知っている人は知っている"三宿に住んで玄人ぶりたい」という点も重要だ。
「三宿自体そこまで広いエリアではなく、ここをチョイスする人は中目黒・代々木上原・恵比寿周辺より少ないです。"あえて選んでいる"というマイナー感で仲間意識が生まれる傾向にあります」
飲食店も少なく、行く店がかぶりやすいため「三宿交差点付近の新記(中華)美味しいよね」「山灯香(蕎麦屋)いいよね」など三宿話で盛り上がり、距離が縮まる。この"あえて三宿"に在住者は誇りを感じるようで、住んでいる場所を最寄り駅の三茶と言っていいのに、あえて「三宿」と線引する。
「三宿は30代が多く、住宅街で夜もそこまでうるさくないので、三茶・中野・下北沢民に対しては『店に若い人が多いし、柄の悪い人も多いし落ち着かない』、三宿より家賃の高い中目黒・恵比寿・六本木・乃木坂には『夜うるさくない?』など"三宿のほうが住む場所として正解"と言い張る人が多いですね」
三軒茶屋は住民同士の"いかに三軒茶屋に長く住んでいるか"というマウントがあるが、三宿は住民以外に"三宿の優位性を示す"傾向があるという。
「三宿で飲んでる人は、近所に住んでいる人かその友人のみ。なので友人に『よく行く居酒屋には俳優の◯◯も来ている』『たまたま飲んでる人が××社の役員だった』など、自分の飲んでる店はすごいというマウントをするケースがあります」
憧れの街に住んで嬉しい気持ちはわかる。しかし、マウントばかり取っていると鬱陶しいだけ。そこは自重したいところだ。