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夫が風俗通い、性病をうつされた妻「絶対に許さない」日常生活に支障も…離婚できる?

2021年01月20日 10:22  弁護士ドットコム

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「妊娠中から複数回風俗に通っている事が分かりました。離婚を考えています」などと、夫の性風俗店通いに関する相談が弁護士ドットコムには多数、寄せられています。


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その中には、風俗店へ行った夫から性病をうつされた人も少なくありません。



ある女性の場合、夫から謝罪はあったものの、許すことはできず、離婚を検討しています。そこで、性風俗店での性行為が「不貞行為」になるのか、慰謝料はもらえるのかと質問を寄せました。



夫の風俗通いを理由に離婚することはできるのでしょうか。長瀬佑志弁護士の解説をお届けします。



●風俗に行くことは「不貞行為」になる?

ーー夫の風俗を理由に離婚が認められる可能性はあるのでしょうか。



離婚を切り出して、夫が同意すれば協議離婚として成立しますが、そうではない場合、裁判で離婚が認められるかどうかになります。



認められるためには、離婚原因(民法770条1項1号ないし5号)にあてはまっているとともに、裁判所で棄却されないことが必要になります(民法770条2項)。



今回の場合離婚原因としては、夫が風俗に行ったことが、「不貞行為」(民法770条1項1号)または「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するかどうかが問題となります。



ーー風俗に行くことは「不貞行為」にあたるのでしょうか。



不貞行為とは、本人の意思に基いて、配偶者以外の者と性交をおこなうことをいいます。



夫が風俗店を利用しておこなった性交については、配偶者以外の者との性交ですから、「不貞行為」に該当するといえます。



また、仮に性交まで及ばなかったとしても、オーラルセックスなどの性交類似行為を繰り返すなど、度を超えた行為があったのであれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当たり得る可能性があります。



以上からすれば、風俗に1回だけ行ったとしても、「不貞行為」または「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚原因に該当する可能性があります。



ただし、夫が風俗店を利用したことは不貞行為にあたらないと判断している裁判例もあります(東京地裁平成25年3月22日判決)。



また、クラブのママがいわゆる「枕営業」として顧客と性交渉を繰り返したものの、この行為は不貞行為には該当しないと判断した裁判例もあります(東京地裁平成26年4月14日判決)。



まとめると、風俗に行った際にどこまでの行為に及んでいたのか、また夫が風俗に行ったことで夫婦間にどのような影響があったのかがポイントになるといえます。



●慰謝料は請求できる?

ーー相談者は夫に性病をうつされています。このような場合、夫に慰謝料を請求することはできるのでしょうか。



夫から性病をうつされたということは、夫は自分以外の女性と性交に及んで性病に感染したと考えられます。そのため、夫の第三者との性行為、つまり夫の「不貞行為」の証拠に当たるとして、離婚をすることは可能といえます。



もちろん離婚原因が夫の「不貞行為」であるならば離婚に伴う慰謝料請求は可能ですし、それに加えて性病をうつされたことで被った精神的・肉体的な苦痛への慰謝料を請求することも可能です。



(弁護士ドットコムライフ)




【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所
事務所URL:https://nagasesogo.com