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2020年下半期の運勢も配信しているので、こちらもぜひチェックしてくださいね♡
2020年下半期の運勢 今週のおひつじ座の運勢illustration by ニシイズミユカ
渇望と充足
今週のおひつじ座は、「内なる異国」を覗いていこうとするような星回り。
歴史学者の加賀屋誠は、親鸞の『歎異抄』にある「悪人なおもて往生す、いわんや善人をや」を言い換えて、「悪人なおもて地獄に堕つ、いわんや善人をや」と言ってみせました(『地獄めぐり』)。
これは自分の心の内に人には言えないような欲動が在ることを自覚し抜いている悪人であれば、迷うことなく地獄(試練)の門を開いてそこを旅して巡ることができる一方で、どこかで自分は善人だと思っている人は、心の内にある欲動(本能)を自身で強く抑圧していることに気が付いていないのだと言えます。それでももし善を為したいという気持ちがあるのなら、なおのこと抑圧している欲動に目を向けるべきでしょう。
死後の世界としての地獄とはある種の「幻想の異国」であり、生の世界としての現実の実相を映し出す鏡のようなもの。そして、それは安穏とした日々を送るために、普段は我慢し排除している欲動が宿っている心の奥の「内なる異国」を充足させるためのものでもあったのではないでしょうか。今週のあなたもまた、欲動を禁止するのではなく、むしろ充足させることに目を向けてみるといいかも知れません。
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一茶の開き直り
今週のおうし座は、軽やかになど生きられない自分を現に生きていこうとするような星回り。
「これがまあつひの栖(すみか)か雪五尺」は、小林一茶が50歳になろうかという頃に詠んだ句。1月19日に父の十三回忌を済ませ、その後、長年にわたり揉めに揉めてきた継母と腹違いの弟との遺産相続問題にやっとの思いで決着を着け、36年にもわたる漂泊生活に終止符を打つ覚悟を決めたのです。
作者の故郷である北信濃は日本でもっとも雪深い地方であり、「雪五尺」も不思議ではありませんが、「これがまあ」というのはそんな故郷への挨拶であり、江戸とは違ってずっと土着的な生活意志が求められる今後をめぐって、率直な心情を表わしているようにも思えます。
一茶の生まれる前の時代に生き、旅に人生を捧げた松尾芭蕉は「幻の栖」の語をよく句に詠みましたが、そのロマンティシズム的な調べに比べると一茶の「つひの栖」の語にはグッと重たい響きが込められていますし、そこにはどこか、長所も短所も受け入れ、そうとしか生きられない自分だという開き直りのようなものさえ感じられます。今週のあなたもまた、どこかで土の匂いが消えず、長所も短所も含めた自分というものを改めて受け入れ、開き直ってみるといいかも知れません。
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出発点に立ち戻る
今週のふたご座は、明確に発話された言葉以前の身振りや所作によって構成される「全体的言語活動」に立ち返っていくような星回り。
デカルトの「われ思う、ゆえにわれあり」、この「思うわれ」を“てこの原理”として近代合理主義思想は出発していった訳ですが、問題はこの「思うわれ」を身体をもって現に生きている生身の人間にまで適用させてしまった点にあるのではないでしょうか。
そしてこの「他者とは私が彼にもつ意識にすぎない」などといったデカルト的な考え方を鋭く批判していったのがメルロ=ポンティという人物。彼は幼児の言語活動を分析していくなかで「意識とは、原初的には、「われ思う(I think that)」ではなく、「われ能う(I can)」である」(『知覚の現象学』)という考え方を引き出していきました。つまり、私たちは明確な意識をもって物事を考え、それを伝えられるようになる前に、すでに身体を介して誰かと共に生きることができていて、それが人間の根本なのだということ。
21日にふたご座から数えて「自分でも他者でもない無意識領域」を意味する12番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、身体をもってとにかくまず生きているという現実を第一義とした上で、そこで「身につけた」ものを大切にしていきたいところです。
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合縁奇縁
今週のかに座は、ざわざわするものが背中を走っていくような星回り。
今はもう街ゆく人々の首から獣の襟巻きはだいぶ消えてしまいましたが、少し前までは冬場にリアルファーのキツネの襟巻きを身につけている女性はさして珍しくはなかったように思います。
「襟巻となりて獣のまた集ふ」という句では、結婚式の二次会なのか何かしらのパーティーなのか、人間たちが集まる会場のクロークの片隅で襟巻たちもまた密かに集結し、生きた獣のように群れとしての意思を宿していく模様が描かれており、やはりどこか楽し気な気配を漂せています。
相互関係によって成り立つヒエラルキーの有無が、単なる群れと“社会”とを区別する上での重要なポイントとされますが、かえってヒエラルキーなどない方がよかったのだとも感じてしまいます。今週のあなたもまた、上でも下でもなく、ただ純粋に興味や関心を分かち合える関係性の価値を改めて見直していくことになるはず。
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夜とかがり火
今週のしし座は、言葉にすることがほとんど不可能であるようなことをあえて口にしてみようとするような星回り。
語りがたいことを語るのが詩人の役目だとして、それはしばしば「創造(クリエーション)」であると誤解されがちです。しかし実際には「翻訳」と言ってしまった方が適切ではないでしょうか。
世界に現に存在し、力をふるっていながらも、依然として符合以外の言葉を受け付けないものを、生きた言葉に置き換えること。ただし、翻訳と言っても忠実かつ正確な逐語訳は不可能であり、また既存のあらゆるテキストによらず、自分の口で語らなければなりません。
21日にしし座から数えて「与えられた任務」を意味する10番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、「感ぜよ」「思い出せ!」といったかすかな合図を受け取っていけるかどうかが試されていくでしょう。
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猫にもいろいろある
今週のおとめ座は、本能だけでなく美学に基づいて生きていこうとするような星回り。
「何もかも知つてをるなり竈猫」に詠まれている「竈猫(かまどねこ)」とは、冬場に火の消えた竈に勝手に入り込んで暖をとる猫のこと。「何もかも」というのも、知っているのは快適な場所のありかだけでないんだよ、と猫という存在の奥ゆかしさとそら恐ろしさへの感慨を含んでいるのでしょう。
長年飼い続けても、犬と猫とでは飼い主に対する向きあい方や語り口が違っています。犬はたとえ寒くても元気にはしゃいで「がんばろうよ!」と無邪気に誘ってくるような感じがする一方、猫は「今年はまた一段と寒いんだな」とぽつりと呟くように何か言うことはあっても、あまり視線は合わせてくれません(個人差はありますが)。
だからこそ、作者もそこに本能だけではない、猫は猫なりの美学を持ってわれわれ人間に接してくれており、場合によっては人間以上にこの世界のことを知っていて、あえて黙っている可能性のようなものを感じていたのかも知れません。今週のあなたもまた、ラクな相手や底の知れた関係から距離をおいて、これは歯が立たないかなという相手やそこでの関わりのなかで揉まれてみるといいでしょう。
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生きようとする意志をめぐって
今週のてんびん座は、生きることが辛いという本質的問題に目を向けていこうとするような星回り。
うつ状態で苦しんでいる人に対し「がんばれ」が禁句であることは、だいぶ認知されてきたように思います。ただ、だからと言って悩み苦しむ人に「頑張らなくていいよ」などと安易に慰めの言葉をかければいいという訳ではなく、そういう言葉を吐くのだとしても、それには相応の責任の背負い込みが求められるのだということは言及しておく必要があるはずです。
では、自死を考えるほどに悩み苦しんでいる人がもし目の前にいるとしたら、何を考え、いかに語ればよいのか。ここで思い出されるのがショーペンハウアー『自殺について』の記述。ショーペンハウアーが考えているこの世の苦悩は、あくまで巨大な根本的問題としてあり、個別的に命を断ったところで本質は何も変わらず、そういう形で根本的問題の克服方法を見出そうとしても不可能なのだと何度も述べています。
21日にてんびん座から数えて「生きんとする意志の否定」を意味する8番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、許せないものや耐えがたいものをめぐる苦悩に対して、それを直視しつつも、なんとか生きていこうとする方へ身を傾けていきたいところです。
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ジャズは冬
今週のさそり座は、宝物のような小さな言葉や思いを大切に繰り返していくような星回り。
言われてみればそうだった、と思わずハッとする。そういう瞬間を力まず自然に迎えられること。そこが俳句鑑賞と占い体験という異なる円が重なりあっていく隣接点と言えますが、「かほぎゅつと集めて吹きぬジャズは冬」はまさにそんな一句と言えるでしょう。
寒いなあと肩と顔を同時に縮めながら言うときの表情や仕草は、確かにジャズのサックス奏者が浮かべるここぞという場面の決め顔にそっくり。それをもって「ジャズは冬」と結論づけてしまうあたりも、宇宙の真理を悟ってしまった気分になってる子供みたいでなんだか笑ってしまう。
きっとこれから寒くて顔をぎゅっとする度に、ジャズは冬と満足げに言った誰かさんのことを思い出すはず。今週のあなたもまた、「せえの」で呼吸をあわせて誰かと「ジャズは冬」と口に出してみましょう。
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阿房の嗜み
今週のいて座は、みずから阿房(あほう)になっていくような星回り。
文学者や芸術家における阿房の嗜みというのはどこか「賭博」に似たところがあります。つまり、今の一瞬を、過去の暗い淵へと落っことしてしまうか、明日の方へ積み上げていくかという、人生の分かれ道かというくらいギリギリのところに立っていて、それが作品の生き死にの分かれ目と直結している。
そういう「賭博の感覚」というのを、自分の日常的現実や習慣に持ち込んでいける人というのは、なかなかいません。だから、もし今週あなたが、一度でもそういう瞬間に立てたのなら、自分をほめてあげてください。
あるいは、そういう勝負をこれまでも何度かしてきたのだとすれば、それなりの経験を積んできたのだと自負してください。そうして一息つくこともたまには必要ですし、そうであればこそ「軽み」や「ノリ」というものが自分を生かしてくるのだと思います。
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勘所を一つおさえるということ
今週のやぎ座は、型にはまらずギリギリのところで遊んでいくような星回り。
音の調和や色の調和があるように、匂いにも調和するものとしないものがある。「あんずにあかんぼのくその匂ひけり」という句には、甘酸っぱいあんずの匂いと赤ん坊の柔らかな穢れの匂いが混じる、どこかカクテルのような配合の妙が表現されています。
掲句は俳句表現として成立するぎりぎりのところを見極めた作者の成果であり、どこか作者の体臭さえも感じさせるものであるように感じられてきます。句の出来そのものは平明ではありますが、平凡に堕ちることなく、型にはまらずに作者の感受性がキャッチしたある一点を指し示しています。これが実際にやってみると、簡単なことのようで実に難しいのです。
21日にやぎ座から数えて「のびのび元気」を意味する5番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の体質が有する勘所というものを一箇所おさえた上で、できるかぎり楽しみを追求していきたいところ。
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再生する場をもつ
今週のみずがめ座は、一個の肉体をたずさえてさまよえる霊魂となっていくような星回り。
檜風呂や露天風呂、ワイン風呂や酵素風呂、寝風呂、電気風呂、サウナ、ミストルームなどを適当に転々として、館内の食堂か、休憩スペースでビールをあけて一息いれる。
健康ランドを訪れた際にあたりを見回してみると、受験勉強をしている学生や、何日も逗留しているらしいおじさん、デートにきたカップル、手慣れた老人など、じつに多種多様な人たちがそこに存在していることに気が付きます。実際に色々な健康ランドに行ってみると場所や土地柄によって喧噪の配合はさまざま。荻窪あたりだと、レストルームに女性がたくさんいる時などは、いかにもしどけないといった感じでゆるんでいるし、新宿などでは、どうしてもさびしさの度合いが強まる。
都会の、孤独な魂たちの、顔の見えない、何が本当なのか分からない、それでも生きている、という空気の半透明の感触がそこにはあって、健康ランドではみな思いのままに自分自身となり、また他者でもあることができるという特権を与えられているように思えます。今週のあなたもまた、おのれの孤独を賑わせる術を改めて知っていくべし。
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境界線を行ったり来たり
今週のうお座は、心に“気配”や“風”を通していくような星回り。
「遊船の冬暖かきパリの旅」という句の作者、コンラッド・メイリはスイス人の画家。1939年に招かれて来日したものの太平洋戦争の進行で帰れなくなり、1949年に帰国するまで絵だけでなく俳句を知って親しむようになり、亡くなる直前まで俳誌への投稿を日本語で続けたそうです。
掲句は、帰国後にスイスとフランスに半々くらいいたメイリが、夫人の山田菊を連れてのパリの旅を詠んだものでしょう。スイスは山深い雪国ですから、冬のパリの暖かさがなおのこと旅する者の気分を高揚させているのが感じられるのではないでしょうか。エッフェル塔、ノートルダム大聖堂、凱旋門、ルーブル美術館、セーヌ川。そうしたパリの情景を思い浮かべてみると、日本の「遊船」という季語との取り合わせがもはや、日本の季節感にはないものであることに改めて気が付いてきます。
湿度の高い日本では、「遊船」や「舟遊び」と言えば納涼のための舟を出すことで、もっぱら夏の季語であり、ちょうど詠まれた季節が正反対なのです。ただし、弾む胸の内やそこに吹き込む爽やかで楽し気な“風”のようなものは、不思議と共通しているように感じられるはず。今週のあなたもまた、すっかり凝り固まってしまった感受性をズラして遊ばせ、いきいきとした気分を取り戻していきたいところです。
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