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明石市で「コロナ中傷禁止条例」制定へ 相談に駆け込む被害者、市はどこまで助けてくれる?

2021年01月15日 19:21  弁護士ドットコム

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兵庫県明石市は、新型コロナウイルスの感染者などに対する差別禁止を盛り込んだ条例案を発表した。パブリックコメントを2月10日まで実施している。


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3月の市議会に提出し、4月施行を目指す。条例ができることで、どこまでの支援をしてくれるのか。市を取材した。



●福祉施設への支援と、差別禁止の2本柱

1月12日、「明石市新型コロナウイルス感染症の患者等に対する支援及び差別禁止に関する条例案」が発表された。



条例案では、福祉施設などで、感染者が出たり、クラスターが発生したりした場合、保健師を派遣して指導・助言するほか、消毒作業や必要な資材を提供する。



この「総合的支援」が条例のひとつの柱であり、もうひとつの柱が「差別的取扱いの禁止」だ。



コロナの感染者や、感染のおそれがある人、またはクラスター等が発生した施設などに対して、SNSなどの差別や誹謗中傷をしてはならないと定め、被害者らに支援を提供する。支援について書かれた条例案の条文を紹介する。




(1) 支援対象者からの相談に応じ、必要な調査及び指導を行い、並びに必要な情報を提供する支援



(2) 支援対象者が安心して日常生活を営むために必要な経済的支援その他の支援



(3) 差別的取扱い等の防止のために必要な措置の実施その他の支援対象者の権 利の擁護のために必要な支援




●金銭的支援も

明石市長とともに、条例案の作成にあたった総務局総務管理室長 兼 法務担当課長の久保井順二さんに話を聞いた。



明石市では、市民が受けたインターネットの中傷について、具体的な被害事例を把握していない。だが、これから起こり得ると見込み、先んじて、「早期の発見・解決」を目的とし、行政に支援の責任があることを示す。



市には、弁護士資格を持った職員が12人在籍している。個別の相談事案に応じて、市民相談課や弁護士職員らと連携し、どういったサポートができるのか検討していく。



「書き込んだ相手が特定できているのであれば、投稿の削除のサポート。匿名の書き込みに悩んでいるのであれば、特定のため、プロバイダへの情報開示を求める法的な手続きなどをサポートします。外部の弁護士を紹介するなどの支援も想定しています」



明石市の犯罪被害者等支援条例に則したかたちを想定して、金銭的な支援もおこなう。



たとえば、被害によって仕事を続けられなくなった人には、上限12万円の就労準備費用が支払われる。



「泉房穂市長は、SNSで受けた誹謗中傷は、個人の力で削除要請はなかなかできないと考えています。被害者救済のために、適切に早めに支援を講じていくイメージです」



●同様の条例は各地で制定

感染者への中傷禁止条例は、各地で制定され始めている。たとえば、昨年12月に施行された和歌山県の条例では、発信者やプロバイダーへの削除要請にとどまらず、要請に応じない場合、勧告までおこなう。



久保井さんは「罰則を設けることは想定していないが、和歌山県条例と同等の勧告、行政指導も含めて、必要であれば運用していくと考えています」