2021年01月13日 18:02 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの感染拡大で、ふたたび「時短営業」の要請を受けた飲食店では、シフト制ではたらく労働者たちに大きなしわ寄せがきている。「シフトカットされた分の給料を全額補償してほしい」。ラーメン店「一風堂」のアルバイト従業員、高橋さん(29)はこのように訴えている。
【関連記事:「パスタ2品だけ注文」の客にレストランが怒りのツイート、客に問題はあった?】
1月8日、二度目の「緊急事態宣言」が発令されて、営業時間の短縮を要請されたことを受けて、一風堂を運営する「力の源カンパニー」は、原則として「20時閉店」(それまでは23時閉店だった)とした。
これにともなって、アルバイトたちの労働時間も削減されることになった。
横浜市内の店舗ではたらく高橋さんの場合、1月上旬は10日ほどシフトに入っていたが、1月下旬は3日に削減されてしまった。コロナ以前は月17万円ほどあった収入は、ざっと計算して月5万円程度になっているという。
高橋さんは貯金を切り崩すなど、生活に支障があらわれている。しかし、会社からは、勤務シフトが確定した1月前半については「休業手当」を支払うが、シフトが確定していない1月後半については支払わないというアナウンスがあったという。
高橋さんが加盟する労働組合「飲食店ユニオン」は、力の源カンパニーに対して、シフトカットされた分の給料について、全額補償することをもとめている。
しかし、会社からは「シフト制労働者の場合、シフトが決まっていなかった期間については所定労働時間が観念されないため、休業手当の支払い義務はない」という回答が電話であったという(なお、1月12日付の文書では「現在検討中」となっている)。
1月13日、都内で記者会見を開いた高橋さんは「一番納得できない部分でした」と怒りを口にした。
「一風堂は(店舗ではたらくスタッフの)9割がアルバイトです。未曾有のコロナ禍という事態でも、そのアルバイトたちで会社を支えたのに、所定労働時間が算出されないので、休業手当が支払われない。会社からはちゃんとした説明もありません。
コロナ禍に乗じて、うやむやにして、経営陣は逃げ切ろうとしていると感じてしまいました。ぼくたちアルバイトは、企業の都合でこういうふうに切り捨てられることがあります。現場では物が言えず、泣き寝入りしていることが多くあります」
飲食店ユニオンの栗原耕平さんは会見で次のように話した。
「シフト制労働者であっても、家計にとって重要な収入源になっている例は広がっています。また、企業運営におけるシフト制労働者の役割・責任が非常に重くなっているにも関わらず、こういう厳しいときには、真っ先に切り捨てられて、法律にも見捨てられる現状があります。
(シフト制労働者の)労働時間が不安定で、企業によってどうとでもできるのは、やはりおかしいので、契約書のつくり方やシフトの決め方も含めて、労使交渉で是正していく方向をつきつめたいと思います。また、労働時間をどうとでもできる契約書も、はたして合法と言ってしまっていいのでしょうか」
力の源カンパニーは、弁護士ドットコムニュースの取材に「(飲食店ユニオンの主張の中に)こちらとしては事実と異なると思える部分がいくつかあるが、交渉中であることから、詳細は控えさせていただきたい」とコメントした。