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リブセンスが「はたらくを、発明しよう。」プロジェクトで新しい働き方の指針策定 「自由と自律の両立」を重視

2021年01月13日 10:30  キャリコネニュース

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インターネットメディア運営企業のリブセンスが2020年12月9日、ニューノーマル時代の働き方の指針を発表した。指針策定を推進した「はたらくを、発明しよう。」プロジェクトがベースとしたのは「自由と自律を高いレベルで両立していく」という考え方だ。

指針では「私たちが大切にしたいもの」として「人を大切にする文化」と「リブセンス・コミュニティ」を掲げている。どのような経緯で、このような取り組みを行ったのか。プロジェクトリーダーを務めた人事部の金土太一(こんど・たいち)さんに話を聞いた。(キャリコネニュース編集部)

コロナ禍でパフォーマンス最大化策を検討

――今回の「新しい働き方の指針」は、どのような経緯で定めようと考えたのですか。

当社にはこれまでリモートワークの制度はあったものの、基本的に「出社」を前提に仕事や働き方を考えてきました。それがコロナ禍によって、期せずして全従業員を対象としたリモート勤務を実施することになりました。

2020年7月からは「リモート推奨」でオフィスワークを一部緩和させましたが(21年1月13日からは「全社一斉リモート」に切り替え)、このような取り組みの結果を踏まえて、会社として今後どのような働き方を基本にしていこうか、という話になったのです。

リモート勤務を経験したことで、働き方の一つとしてもっと活用できると実感できました。そこで、働く時間や場所についてより柔軟な運用にすることで、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化していこうという話になりました。

そうした中で、リブセンスとしてニューノーマル時代にどのような働き方を今後のスタンダードにしていくのかを考えるために「はたらくを、発明しよう。」、通称“はたはつプロジェクト”を立ち上げました。

プロジェクトがまず掲げたのは「自由と自律を高いレベルで両立していく」という考え方です。これは、働く場所や時間をより柔軟な運用とすることで一人ひとりがパフォーマンスを最大化できる環境を整え、同時に個々人に合わせた多様な働き方の実現を目指していく、というものです。

――これまでの日本企業のマネジメントは指示命令と管理監督の側面が強く、「自由と自律」はそれと対立する概念に思えます。

働く場所や時間を柔軟に選択できることは、自由である反面、一人ひとりが自分自身の役割や使命に基づいて自律的に動いていくことが大切になってきます。

ただ、「自由と自律」だけでは、共同体としての会社が何を価値としているかが見えにくい。そこで、リブセンスとして大切にしたいものを整理し、組織や働き方の指針を示すことを目的として、プロジェクトの「声明文」を策定することになりました。

「コミュニティ」を大事にする文化は変えない

――「わたしたちが大切にしたいもの」には“リブセンスはどちらかというと、「メンバーシップ寄りの文化」”と明記しています。ジョブ型に移行する会社が増える中で、逆行しているといえませんか。

ジョブ型に移行する会社が増えている背景として、「会社は仕事(だけ)をする場である」という考え方があるのかもしれません。しかしリブセンスとしては、仕事上のつながりだけでなく、プライベートを含めた人と人とのつながりを含めた「リブセンス・コミュニティ」を大切にしていきたいと考えています。

ありがたいことに、採用面接の候補者や従業員、退職者など多くの人から「リブセンスは人がいい」というお声をいただくのですが、それはわたしたちが採用段階から企業理念・ビジョンへの共感や、誰と一緒に働くのかを大切にし、ご縁をいただいた人に敬意を払い、お互いを尊重する姿勢が文化になっているからだと捉えています。

――オフィスの存在感が薄れる中で、会社の概念を「人間関係」に拡張しているようにも解釈できます。その一方で「わたしたちが考えるオフィスの意味・価値」についてもまとめています。

私たちはオフィスを、単に人が集まる場所ではなく「文化の拠点」と考えています。イベントなどのポスターや、過去に受賞した盾や賞状、会社のロゴを模した来客用のウォーターボトルなど、オフィスを通して当社の思想やカルチャーに触れることができます。

それと同時に、オフィスは「余白や遊び心を感じられる場」「同じ場所や時間を共有することで熱やコミュニティを感じられる場」であるとも考えています。オフィスに集うことで自然とコミュニケーションが生まれ、そこからコミュニティが形成されます。

今後は、偶発的なコミュニケーションを生み出したり、リブセンスらしさを感じられるようにしたりするためにも、オフィスを「出社したくなる場所」として手をかけていってもいいのかもしれません。

例えば「出社したけれど誰もいなかった」では寂しいので、オフィスで働く日は自由という原則を守りつつ、コミュニケーションを活性化するために「出社推奨曜日」を設けるといったこともありうるのかなと考えています。

一律に「組織を優先しよう」とせずに対話する

――「メンバーシップ型」で「コミュニティ」を大事にする御社としては、新しいメンバーが会社や組織に馴染むためにも、オフィスは大事な場所になりますね。

新入社員が入ってきたときや、組織変更などで異動があったときには、オンボーディング(新しく入社したメンバーが組織に馴染めるようサポートすること)やチームビルディング(組織の団結力を高めること)が欠かせません。その際にはオンラインではなくオフラインでのコミュニケーションが適していますので、指針の中でもこのようなときには「積極的な出社を推奨します」とうたっています。

一方で、オンラインにもメリットはあります。1人で集中して作業に取り組みたいときはリモートの方が生産性は上がりやすく、距離や場所を問わない気軽な交流もしやすい。リモートワークをうまく活用できれば、仕事とプライベートの両立も可能です。

どんな働き方がベストなのかは人によって異なるので、一律で規定はできませんし、リモート万能主義やオフィス万能主義のような二元論で語れるものではありません。

声明文では「ベストな働き方は人それぞれ、お互いの働き方を尊重しよう」とうたっています。「週何日は出社する」などの一律のルールは設けず、出社とリモートワークという選択肢を、個人やチームの状況に応じて自律的に使い分けていく働き方を志向しています。

組織と個人との間で意見が分かれたときにも、単に組織を優先するのではなく、合理的な理由を大切にし、対話によって解決していくことを目指したいと考えています。それでも折り合いがつかないときには、組織が優先されるかもしれないけれども、組織も個人もできる限りの説明を尽くし、お互いがより納得できるように努めることを指針の中で確認しています。

――今回のような「大切にしたいもの」や「指針」をあらためて明確にすることで、どのような効果が得られそうですか。

代表の村上(太一氏)は、コロナショックをチャンスに変え、新しい働き方を実現していくためには、「これまで以上に透明性を重視すること」「目標設定力を強化すること」「自由と自律の両立を高いレベルで実現すること」「変化に柔軟に対応しうる制度設計を意識すること」の4つが必要と指摘しています。

個別具体的な施策や制度は、今後さまざまな試行錯誤が必要になると思われますが、おおもとの考え方や思想、会社が大切にしたいことを今回のような形で明文化したことで、その後の判断がしやすくなる意味があると思います。

「社員巻き込み型」の進め方もポイントに

もうひとつ、今回の取り組みは、声明文の内容に加えて、それを作り上げる進め方もポイントだったと捉えています。このようなプロジェクトの場合、経営陣などが方針を決めて従業員に周知していくというトップダウンの流れが一般的ではないかと思います。

はたはつプロジェクトでは、まずプロジェクトのメンバー間での議論を通じて声明文の叩き台を作り、それを素案という形で全社に公開しました。これをベースに、従業員との対話を通じた意見収集をしながらブラッシュアップし、最終的に経営層の承認を得るというプロセスで進めていきました。

――社員を巻き込む形で進め方を採ったということですね。

リブセンスで働く一人ひとりにとって納得感のある指針にしたいという想いがあり、それを実現するためにこのような形となりました。

当社は「あたりまえを、発明しよう。」というビジョンを掲げていますが、これは誰もが当たり前だと思って諦めている世の中の常識や仕組みを疑うことから出発しようということです。今回のプロジェクトの「はたらくを、発明しよう。」もそれをもじったものですが、この機会に、社員一人ひとりに働くことの意味を考えてもらうきっかけになったのではないかと思います。

リブセンスという社名は「Live(生きる)」と「sense(意味)」、つまり「生きる意味」という造語が由来となっています。

個人と組織の成果の最大化を実現すると同時に、同じコミュニティに属する仲間たちとのつながりを通じて安心感や一体感を得る。そこから世の中を変えて多くの人々を幸せにできるサービスを生み出していけたら、これほど素晴らしいことはありません。それがわたしたちにとっての「生きる意味」だと考えています。