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三石琴乃・福圓美里が語る劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』

2021年01月07日 19:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●平和を守りながらもそれぞれが抱く夢
1991年12月に雑誌『なかよし』で連載開始、翌92年にTVアニメの放送がスタートした『美少女戦士セーラームーン』。2014年にアニメ『美少女戦士セーラームーンCrystal』シリーズがスタート。原作第4期を元にしたストーリーは、劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』として、1月8日に『前編』が、2月11日に『後編』が劇場前後編二部作で公開される。

今回は、スーパーセーラームーン/月野うさぎ役の三石琴乃、スーパーセーラーちびムーン/ちびうさ役の福圓美里にインタビューを実施。物語の中核を担ううさぎ・ちびうさを演じるふたりに、劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』の見どころ、そして『美少女戦士セーラームーン』が愛され続けてきた理由について話を聞いた。
○●セーラー戦士たちの夢と葛藤

――まず、本作のシナリオを読んだときの感想を教えてください。

三石 原作4期「デッド・ムーン」編の物語が展開されるということで、全体を通してやはり、ちびうさちゃんとエリオス(ペガサス)の関係性が見どころになると思いました。また、『前編』はうさぎちゃんを除くセーラー戦士の4人が、それぞれ自分の進むべき道について悩み、葛藤しながらも進んでいくシーンが大事なポイントになると感じたんです。これらの注目シーンがスクリーンのなかでどうやって動くのかなと、ワクワクしながらシナリオを読み進めていました。

福圓 本作でもたくさんの強敵が出てきて、平和を守るためにセーラー戦士たちが戦います。ただ、セーラー戦士は平和を守るという使命と併せて、それぞれがお嫁さんになりたい、アイドルになりたい、お店を持ちたい、お医者さんになりたい、神社を継ぐといった夢を持っているんですよね。今回は、その夢についてが、しっかりと描かれているなと感じました。ちびうさとしては、パパママからの自立と、家族や友達以外に向ける愛情がテーマだと感じ、演じるうえでそういう変化も意識しなければ、と思いました。

三石 うさぎちゃん的に『前編』はちょっと出番が少なめなので、もう少し喋りたかったなという気持ちが正直あります(笑)。ただ、物語の冒頭でちびうさやまもちゃん(タキシード仮面/地場衛)との関係性が描かれるシーンがあるので、あまり贅沢を言っていられないですよね。『前編』で出番が少なめな分、『後編』ではすごく活躍しますので、ぜひ期待していてください!

福圓 ちびうさは『後編』で言葉通りに成長した姿を見せます。あのシーンは、思わずドキッとしてしまいました。

三石 私も早く観たいな!

福圓 すごくいいシーンになっていますので、読者の皆様にもぜひ『前編』『後編』どちらも観て欲しいですね。

○●変化するちびうさと変わらないうさぎ

――本作では、中学生だったうさぎが高校生となり、ちびうさもさまざまな試練を経て成長しています。そういった変化を物語のなかで感じることはありましたか?

三石 これまでの戦いを経て、守るべきものの為に戦うという意識が芽生えていると感じました。以前はルナなどに「早く行きなさいよ!」と尻を叩かれて、泣きながら戦いに向かっていましたが、今回は「誰かが困っている、ピンチだ、助けにいかなきゃ」と、自分の意思で動いています。だから、戦士としては少し気持ちが変化しているかなと思いました。一方で、普段のうさぎちゃんは相変わらずドジで泣き虫(笑)。愛されキャラクターのままです。演じるうえでは、そういう日常と戦いのシーンのギャップが彼女の魅力です。

――戦いを通じて戦士としては成長したけども、高校生になったからといって何か変化があったわけではない。

三石 そうですね。セーラー戦士として色々な経験や戦いをしてきたとはいえ、急には大人になれないと思います。やっぱり、恋をしたり悔しい想いをしたり、夢破れたり……そしてそこから自分の足で一歩踏み出しすことで、人は成長していくんじゃないかな。

福圓 ちびうさは明るくて生意気な性格の子なのですが、美しく絶大な力を持つ母親のネオ・クイーン・セレニティ(未来のうさぎの姿)への劣等感や友達がいないことなど、実はコンプレックスをたくさん抱えています。それ故に、敵に利用されてしまったこともあります。でも、友だちとの出会いと別れを経て、少しずつ成長してきました。そんなちびうさは、本作では少し大人になった一面を見せます。これまでは起きた事象に対して直情的だったのですが、今回は素のリアクションをそこまで出しません。そういう意味では、うさぎちゃんより大人になったかも(笑)。

三石 そうだね(笑)。

福圓 言いたいことがあっても、グッとこらえる描写があったのが印象的でした。また、セーラー戦士との関係性も変化した気がします。本作でちびうさがある悩みを抱えるのですが、その時に相談する相手が、まこちゃん(スーパーセーラージュピター/木野まこと)。これまで本音を言える相手は、ほたるちゃん(スーパーセーラーサターン/土萠ほたる)やせつなさん(スーパーセーラープルート/冥王せつな)でした。

ただ、ふたりがいなくなってしまったことで頼ったのが、まこちゃんだったんです。まこちゃんお手製のご飯を食べながら話を聞いてもらうシーンは、ちびうさの変化が分かる大切なシーンだと感じました。演じるうえでは、見た目通りのかわいらしさに加えて、今回は想いを寄せるエリオスに対して一喜一憂する心情や、成長した一面などを場面場面に応じて表現することも意識しました。それくらい、本作ではちびうさがさまざまな心情や表情を見せます。そこにも注目して欲しいですね。

三石 そして、今度の劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』のテーマは「夢」です。子供の頃にアニメを見ていた方は、当時のトキメキや夢が蘇ると思います。そして、現在「夢」に向かって頑張ったり、壁にブチ当たって落ち込んだり立ち止まっている人に、エネルギーや元気を注入してくれると思います。一歩進む為に、セーラー戦士たちが背中を押してくれますよ。

●『美少女戦士セーラームーン』には、女の子の夢が詰まっている
○●私にとってのチューナーがうさぎちゃん

――先ほどお芝居で意識した点などについても触れていただきましたが、実際のアフレコ現場はどのような雰囲気でしたか?

三石 『前編』では、セーラー戦士5人とちびうさちゃんとまもちゃんとエリオスくんを演じる声優が、同じ空間に集まって収録することができました。女子たちは仕事外でも会っていたので「超久しぶり!」という感じではありませんでしたが、それでもスタジオに集まるとかしましい(笑)。もちろん本番になったら芝居に集中していましたが、現場に集まれたのが嬉しくて、ついついお喋りをしてしまいました。今はみんなになかなか会えない状況になってしまい、寂しいですね。本音を言えば、仕事でももっと同じ時間を共有したいです。

――うさぎ以外のセーラー戦士4人やちびうさ、衛さんなどは『美少女戦士セーラームーンCrystal』でキャストが変更となりました。

三石 オーディションで選ばれて集結した皆さんですが、『美少女戦士セーラームーン』という往年の人気作ゆえに、並々ならぬプレッシャーを抱えていたと思います。ただ、今はそれを乗り越えて、それぞれの役柄を自分のなかに落とし込んで芝居ができていると感じています。変に気を遣って話しかけることもなく、安心して後ろから見ていられますね。

福圓 嬉しい言葉、ありがとうございます! ちびうさを演じる私にとっては、うさぎちゃんの存在って特に大きくて。うさぎちゃんがいないところでちびうさを演じると、あまりしっくりこないことが多いんですよね。私にとってのチューナーが、うさぎちゃんになっているんです。

三石 できることなら一緒に収録したいよね。そういうアフレコのスタイルで育ってきたから、どうしてもそれが体に馴染んでいて。その場でお互いのポジション取りをする、あの感覚は特別なものかなと思っています。

福圓 集まれずとも、せめて、みんなの声を聞きながら収録したいですね……。そういう意味では、『前編』で主要キャストが集まって収録できたのが本当によかったです。『後編』は新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、少人数でのアフレコとなりました。

私はうさぎちゃんや衛さん、また別日でエリオスと一緒に収録したのですが、『前編』で集まってアフレコをしていたから、その場にいないみんなの声も思い出しながらお芝居ができたんです。それでも、やっぱり寂しいという気持ちはありました。セーラームーングッズやコラボの話で盛り上がる、あのかしましいスタジオが懐かしいです(笑)。

三石 みんなでグッズの話をするのが、楽しいんだよね!

福圓 楽しいです!『後編』のアフレコのとき、琴乃さんがセーラームーンコラボの化粧品と、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとのコラボグッズのお土産をたくさん私にくださったんです。さらに、同じ日に、東映アニメーションさんからも袋がパンパンになるくらいのグッズをいただけて! セーラームーングッズに囲まれて、何とも幸せな一日でした(笑)。

三石 (笑)。

――そういう空気感が作品に影響することもありそうです。

三石 もちろん、そういうスタイルじゃなくても芝居をできなければいけませんが、あの空気感の中で演じることが芝居にもいい作用を働かせることがあります。何より集まれることが嬉しいんですよね。早くみんなでアフレコができるようになるといいな。

○●月の光に導かれて集結したスタッフ

――『美少女戦士セーラームーン』が誕生してから、もうすぐ30年になります。おふたりは、ここまで長年多くの人から愛されるのには、『美少女戦士セーラームーン』にどういう魅力があるからだと感じていますか?

福圓 女の子が頑張って戦う、媚びずに自立して戦うという姿が、当時はセンセーショナルなことだったと思います。チョーカーやハイヒールの可愛さを知ったのも、悪霊退散という言葉を知ったのも『美少女戦士セーラームーン』。今や他の作品でも使われているようなアイテムや言葉のなかには、『美少女戦士セーラームーン』が原点のものがたくさんある気がします。それだけに、みんなの憧れとして、今もそれぞれの心に根強く残り続けているんじゃないかな。

――みんなの憧れであり続けている。

福圓 そうですね! そして、その憧れが色々な人や作品にいい影響を及ぼしているんだと思います。私が今も「水金地火木土天海冥」を覚えているのは、絶対に『美少女戦士セーラームーン』のおかげですからね(笑)。個人的には、「転生」というのにも心を打たれました。恋仲だった月の王女様と地球の王子様、そしてそれを取り巻くみんなが「転生」して今も一緒にいる。とても素敵なお話で、夢がありますよね。

三石 『美少女戦士セーラームーン』は、ドジで泣き虫、敵から逃げるといううさぎちゃんが主人公なんです。そんな自分よりもダメな子が変身して守ってくれるというギャップに驚いて、興味を持った子もたくさんいたんじゃないかな。「怖い、痛い、嫌だ」と正直に言える彼女だからこそ、信頼もできて、応援もしたくなったんだとも思います。加えて、コスチュームが可愛くて、恋愛要素もあり、うさぎちゃん以外のセーラー戦士も主人公になりえるくらい魅力的。『美少女戦士セーラームーン』には、女の子の夢がたくさん詰まっているんですよね。

――むしろ、人気が出て当然だった。

三石 当時は自分の芝居でいっぱいいっぱいでしたが、今思えば「そりゃ人気が出るだろう」と思います。また、昔の話で恐縮ですが、1990年代に『美少女戦士セーラームーン』のアニメスタッフは、自ら楽しみながら、クリエイターとしての熱意を注いでいたんです。スタッフも役者も、月の光に導かれて集結した。そんな気がしています。

――絵のクオリティや音楽、芝居など、作品がヒットするには色々な要因があると思います、ただ、最後に作品を盛り上げるのは作り手の「想い」なのかなと、常々感じています。

三石 そうだと思います。『美少女戦士セーラームーン』にもさまざまな想いが詰まっています。例えば敵対する相手。ただ悪いヤツということではなく、ちゃんとそれぞれにドラマがあるように描かれていました。

――倒された敵が「リフレッシュ!」などと叫ぶのも、印象的でした。

三石 見ている側もスッキリしますよね(笑)敵を殺すわけじゃない、癒やし、浄化する。そういう想いこそが、『美少女戦士セーラームーン』がここまで長く愛され続けてきた理由なんじゃないかな。

劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』『前編』は2021年1月8日、『後編』は2月11日に公開。

(C)武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会