F1の元最高責任者であるバーニー・エクレストンは、恒例の呼びかけを行って新年を始めた。F1に対し、ハイブリッド・パワーユニットをやめてV8燃焼エンジンが轟音をたてる時代へ戻ることを求めたのだ。
2014年以来、F1は1.6リッターV6ターボハイブリッドを使用しており、メルセデスが7年連続でコンストラクターズ選手権タイトルを獲得してこの時代を支配している。現在のテクニカルレギュレーションは、少なくとも2024年までは有効だ。
しかしながらファンたちは、荒々しい爆音を発する以前のエンジンに比べて、静かでより効率的なエンジンについて嘆いてきた。2020年F1第17戦アブダビGPでフェルナンド・アロンソが2005年のタイトル獲得マシンであるV10搭載のルノーR25を走らせたことには大きな反響があり、F1はモータースポーツの栄光の時代に戻ることを再考すべきだという声が上がった。これは明らかにエクレストンが共有する考えだ。
「今のまったくばかげたエンジンを追放しようではないか」とエクレストンは『Motorsport Magazine』の新たなインタビューで語った。
エクレストンは、V8エンジンを暫定的に復活させることで、ハイブリット技術開発にかかるコストの高騰というF1の問題を一気に解決できると述べた。
「以前の自然吸気エンジンを救い出すのだ」とエクレストンは語った。
「誰もが以前のエンジンを使えば、コストはすぐに下がり、爆音が戻ってくるだろう。そのエンジンを5年使い、その間に将来のエンジンの件を解決するのだ」
「F1はエンターテインメントビジネスの世界にあり、人を楽しませることをやめたら、ビジネスがなくなってしまう。グランドスタンドの観客は、エンジンがどれだけ高効率であるか、どれだけ燃料を使うか、どれだけパワーがあるのかということに興味はない」
■「F1は自動車産業と直結する必要はない」
10年前にエクレストンはハイブリッド技術への移行を受け入れるよう説得された。F1が市販車との足並みを揃えるようにするためだったが、今ではエクレストンはそれが間違いだったと感じている。
「F1は自動車産業と直結する必要はない。多くの変化がもたらされるだろう。誰もが電気自動車に乗るようになる。政治家たちはそうさせようとしているのだ。ガソリン車を都市で走らせることはできなくなるだろう」
「人々はこう言うだろう。『ちょっと待て。走り回っているこれらのF1マシンは、なぜ電動じゃないんだ?』と。また、メーカーはガソリン車やディーゼル車の製造を数年以内に停止する予定だ」
フォーミュラEは、すでにFIAから全電動シングルシーターによるモーターレース開催権を得ている。一方でWEC世界耐久選手権はのスポーツカーレギュレーションを改定して、高価でよりコストがかかるハイブリッドと入れ替えようとしている。電動化を支持してアウディやポルシェのようなマニュファクチャラーの復帰を促すためだ。
F1では、現在4社のマニュラクチャラーがグリッド上の10チームにパワーユニットを供給している。しかしホンダは、2021年末でF1から撤退することをすでに発表している。
そのためレッドブルとアルファタウリの2022年シーズンのエンジンは現在のところ未確定の状況だ。チーム代表たちは、開発凍結を実施することで現在のホンダ製パワーユニットの使用を継続できるようにするため、F1の説得を試みている。
「ホンダは去り、レッドブルはエンジンを得るが、それは他チームが凍結に賛成した場合のみ使用できる。さもなければ、彼らは上位に留まるためにどれだけになるか分からない支出を続けることになる」
しかしながらメルセデス、ルノー、フェラーリは、当面の間ハイブリッド技術を確実に支持し継続していくことを改めて表明。彼らはF1での支出について、ハイブリッドと電動モデルが増加している市販車ラインアップの販売に与えている影響が、根拠を示していると主張している。