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またも高齢ドライバーの「高速道逆走」で死亡事故、どんな罪に問われるのか?

2021年01月07日 10:02  弁護士ドットコム

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またもや、高速道路での逆走事故が起こってしまった。


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奈良県大和郡山市の西名阪自動車道で1月6日未明、男性(70代)が運転する乗用車が逆走し、軽乗用車と正面衝突した。軽乗用車のドライバー(30代)が死亡した。



報道によると、事故現場は片側2車線で、男性の乗用車は追い越し車線を逆走していた。男性も頭を打つ軽いけがをしたが、命に別状はないという。



高速道路での逆走はめずらしくない。国土交通省によると、2019年に発生した逆走事案は「200件」。2日に1回以上の頻度で、全国どこかで逆走が発生したことになる。



わざと逆走したのでなければ、どこかのインターチェンジやジャンクションなどから誤って本線に侵入して逆走したものと思われるが、どのような法的責任を負うことになるのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。



●逆走で死傷事故を起こせば「過失運転致死傷罪」

——逆走した場合の法的責任はどうなりますか。



自動車で道路を逆走した場合、本来の通行部分と異なる部分を通行した「通行区分違反」として、「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科せられる可能性があります(道交法119条1項2号の2)。ただし、「通行区分違反」には過失犯の定めがないため、うっかり逆走した場合には処罰されることはありません。



また、行政処分として、道交法施行令で「反則金9000円(普通車の場合)」および「基礎点数2点」と定められています。



——逆走による死亡事故となった場合はどうでしょうか。



過失により道路を逆走して人を死傷させた場合は、「過失運転致死傷罪」に該当します。『7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金』が科せられる可能性があります(自動車運転死傷処罰法5条)。



交通事故を起こしたときは、基礎点数に付加点数が加算されます。死亡事故については、もっぱら違反者の不注意で発生した場合は「20点」、それ以外の場合には「13点」が付加されます。



なお、故意に高速道路を逆走して人を死傷させた場合は、「危険運転致死傷罪」に該当し、 負傷の場合は「15年以下の懲役」、死亡の場合は「1年以上(20年以下)の有期懲役」と定められています(自動車運転死傷処罰法2条6号)。行政処分として「基礎点数62点(死亡)」「同45~55点(負傷)」と定められています。



——今回逆走したのは78歳の高齢ドライバーだったようです。



一般論ではありますが、仮に重度の認知症を患っていたなどの事情があった場合には、「責任能力がない」と判断され、刑事責任を問えない可能性はあります。



●ドライバーを監督すべき者が責任を負う可能性も

——民事上の責任はどうなるのでしょうか。



逆走したドライバーは、原則として、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります(民法709条)。



一方、刑事責任と同様に、ドライバーが重度の認知症を患っているなどの事情で、責任能力がないと判断される場合には、運転者個人の賠償責任を追及することはできません(民法713条)。



ただし、そのような場合でも、ドライバーを監督すべき人がいるときには、監督義務違反を理由として、その人が損害賠償責任を負うことはありえます(民法714条)。




【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/