2021年01月06日 10:01 弁護士ドットコム
都内メディア関連企業に勤務するJ子さんは、社内結婚をめぐる会社の「暗黙のルール」が気になっています。
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J子さんの職場では、同じ部署の人同士が結婚した場合、暗黙の了解として、その次の異動のタイミングでどちらかが部署を出るのが習わしです。
以前はどちらかが違う建物にうつるというルールもありましたが、社内結婚が増え、建物移動にも限界が出てきました。そこで、せめて部署を変えようというルールになっています。
「正直、同じ部署に夫婦がいると、他の部員としても気を遣います。出張に同行させていいのか、評価は直接やらずにすむ方法はないのか、など色々考えなくてはいけません。社内結婚の場合は部署を変えた方がいいと思ってはいるんですけど、法的な問題がないのか心配です」(J子さん)
同じ部署の人同士が結婚した場合、どちらかを異動させるという会社のルールは法的に問題ないのでしょうか。鈴木謙吾弁護士の解説をお届けします。
ーー異動を拒否することはできるのでしょうか。
まず、会社が下した適切な人事異動については、社員は拒否できないと考えられます。
大前提として、会社には、そこで働く人に指揮命令をする権利があります。どのような場所で、どのような仕事をさせるのかを自由に決めることができます。
「あの部署に人が足りない」「●●さんにはこちらの部署で能力を発揮してほしい」など、その時々の会社の状況や社員の適性に応じて、適切な人事異動をすることには、何ら問題ありません。
ーー部内での結婚を理由に、たとえば営業職から総務職への異動など、異なる職種への異動を命じることに問題はないのでしょうか。
営業と総務の仕事内容は異なりますので、経験のない仕事を一から覚えることにはなるでしょう。「外回りしている方が好きなのに」と、自分の適性との間で悩むかもしれません。
しかし、営業職で入社していたとしても、雇用契約書などに異動先に制限がない旨が明記されている場合には、職種変更を伴う異動であっても、基本的には拒否することはできません。
しかも、部署内に夫婦がいるとなると、多少なりとも周りの従業員が気を遣うでしょうし、少なからず影響が出る可能性があります。
周りの社員への影響を優先して、他の部署へ異動させるというJ子さんの会社の判断には、正当性があると考えられます。
ーー人事異動を拒否できる場合もあるのでしょうか。
はい。どのような人事異動も絶対に拒否できないわけではありません。会社が命じた人事異動が「適切でない」場合は、その命令を拒否できます。
たとえば、部内で結婚することを理由に、ほとんど仕事がない部署に異動させるような「降格」ともいえる対応をされたケースなど、社員への嫌がらせともいえる人事に対しては、会社の目的が不当という理由で拒否できるでしょう。
また、「職種」や「勤務地」を限定して採用されたのに、専門外の職種や該当エリア外に異動するよう命じられた場合も、会社側に正当な理由がなければ拒否できる可能性が高いでしょう。
さらに、部内で結婚することを理由に、「解雇」や「退職勧奨」を実質的に強制された場合は、法的に極めて問題があり、拒否できると考えられます。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
鈴木 謙吾(すずき・けんご)弁護士
慶應義塾大学法科大学院教員。東京弁護士会所属。
事務所名:鈴木謙吾法律事務所
事務所URL:http://www.kengosuzuki.com