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運転中のサンキューハザード、本当は違法なの? 警察庁に聞いてみた

2021年01月04日 10:31  弁護士ドットコム

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車を運転しているときの割り込みで、車線をゆずってもらったら、後ろの車両の運転手に感謝を示す意味で「ハザードランプ」を点灯させるドライバーは多いでしょう。「サンキューハザード」と呼ばれており、慣例的に広くおこなわれています。


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しかし、このサンキューハザードについて、「本当は違法なのではないか」という疑問を抱いている人も少なくないようです。弁護士ドットコムにも、そんな相談が寄せられています。



ある相談者からは「そもそも、ハザードランプは感謝を示すために使用するランプではなく、緊急時に点灯させるのが本来の機能。それ以外の目的で点灯させてはいけないのではないか」という質問がありました。



●「サンキューハザード」は法令に定めのない使い方

ハザードランプは、法令上は「非常点滅表示灯」といいます。具体的にどのような使い方が法令で定められているのでしょうか。



国が運用・公開している法令データベース「e-Gov法令検索」で、非常点滅表示灯を全文検索にかけると、「道路交通法施行令」「道路運送車両の保安基準」「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」という3件の法令が表示されます(2021年1月4日時点)。



「保安基準」はハザードランプの装備について定めており(41条の3)、「液化石油ガス法」もガスの充てん作業中の点灯を定めているだけです(72条1号ヘ)。そこで「道路交通法施行令」を見てみますと、以下の内容が定められています。




道路交通法施行令18条2項
自動車(大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車を除く)は、法第52条第1項前段の規定により、夜間、道路(歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道)の幅員が5.5メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示灯又は尾灯をつけなければならない。



同26条の3第2項
通学通園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているときは、車両の保安基準に関する規定に定める非常点滅表示灯をつけなければならない。




要するに、ハザードランプをつけなければならないケースとして、(1)夜間に一定の道路で駐停車する場合、(2)通学通園バスが乗降のため停車する場合が定められています。



それ以外の使い方については、特に法令で決められていないことから、サンキューハザードは法令に定めのない使い方といえそうです。



●警察庁「直ちに違法とは解されない」

では、サンキューハザードは違法なのでしょうか。



警察庁交通局は、弁護士ドットコムニュースの取材に「ハザードランプを道交法施行令に定められた方法以外で使用することは、直ちに違法とは解されません」と回答しました。法令に定めのない使い方とはいえ、必ずしも違法というわけではないようです。



一方で、「道路交通上、他に危険を及ぼすような場合には、安全運転義務違反(道交法70条)となる可能性があります」(警察庁交通局)ともいいます。ただし、サンキューハザードを取り締った実例については「把握していない」とのことです。



決められたシチュエーションで、ごく短時間点滅させるサンキューハザードならともかく、むやみにつけるような行為は違法になることもありそうです。



●あくまでマナー、気持ちに余裕をもった運転を

ネットでは、サンキューハザードについて、「後方車両に対して何かしらの感謝の表現は必要」「マナーとして定着している」など、基本的には肯定的な意見が多いようです。



もっとも、「ハザードランプをつけようとする動作で追突など危険を起こす可能性があるからやってない」など否定的な意見や、「下肢の障害で、運転中は両手が常にふさがっており、物理的にできないので、常識にされては困る」という切実な声もありました。



また、車同士のトラブルが発端となって「あおり運転」がおこなわれ、重大な事故に発展してしまうケースが近年社会問題となったことも影響しているのか、「とりあえずサンキューハザードしておけばトラブル回避になる」という意見も複数ありました。



いずれにせよ、サンキューハザードは義務というわけではなく、マナーの域を出るものでもありません。直ちに違法というわけではないことを念頭に、「感謝の意を示したいと思う人がする分には気持ちよく受け取り、しないからといって特に何も思わない」という心構えで、気持ちに余裕をもって運転するのが良さそうです。