2021年01月03日 10:21 弁護士ドットコム
迷惑駐車に腹を立てることは、誰しも経験がありそうです。しかし、腹いせに仕返しをしてしまったらどうなるのでしょうか。
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弁護士ドットコムに「迷惑駐車をしていたミニバイクに腹が立ち、鍵穴にガムを入れた」という相談が寄せられました。
相談者によると、ミニバイクの持ち主は、マンションの管理会社側に対して、ガムがとれなかったので「鍵を交換せよ」と訴えているようです。そのうえ、修理にかかった費用を請求するのではなく、「言い値を払え」などと言ってきているそうです。
また、犯行の様子はマンションの防犯カメラにおさめられていました。そのため、マンションの管理会社は、相談者が加害者であることを認識しており、やりとりは管理会社を通じておこなっています。
相談者は「カッとなってガムを入れたこと」は反省していますが、今後、刑事、民事上の責任に問われることになるのか心配しています。相談者の責任はどうなるのでしょうか。また、迷惑駐車をしたミニバイクの持ち主に責任はないのでしょうか。半田望弁護士に聞きました。
——どんな罪に問われるのでしょうか。
バイクの鍵穴にガムを入れる行為は、バイクの使用を難しくする、もしくは不可能にする行為であり、器物損壊罪が成立すると考えます。
器物損壊罪は物理的に物を壊すだけではなく、本来の効用を失わせる場合も処罰の対象だという確立した裁判例があります。
——民事上の責任はどうでしょうか。
不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負います。
賠償の範囲は、実際の修理費か車両の時価のいずれか安い金額、および修理に関連する費用(レッカー代など)が考えられます。交通事故でバイクを壊した場合と同じ考え方です。
ミニバイクの持ち主の「言い値」で支払う義務は生じません。また、物損ですので、一般的に考えると、慰謝料などを支払う義務も生じないでしょう。
——迷惑駐車をしていたという事情はどう影響するのでしょうか。
ミニバイクの持ち主が迷惑駐車をしていたことは、原則として、相談者の法的責任の有無を定めるうえで影響しません。
相談者の行為を正当防衛と評価することはできませんし、違法行為を自力で排除したり報復をすること(自力救済)は法律上、認められていませんので、今回のケースで過失相殺(本来の賠償額から何割か差し引かれる)がなされることもないでしょう。
ただし、刑事手続上は、ガムを入れられた被害者にも落ち度があったとして、相談者に対する処分を決めるうえで考慮されることがあります。
また、迷惑駐車で相談者に何らかの具体的な損害が生じている場合には、今回とは別に、ミニバイクの所有者に対して、生じた損害の賠償を求めることができると考えられます。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
半田 望(はんだ・のぞむ)弁護士
佐賀県小城市出身。主に交通事故や労働問題などの民事事件を取り扱うほか、日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、刑事弁護・接見交通の問題に力を入れている。また、地元大学で民事訴訟法の講義を担当するなど、各種講義、講演活動も積極的におこなっている。
事務所名:半田法律事務所
事務所URL:http://www.handa-law.jp/