2021年01月01日 10:01 弁護士ドットコム
職場でネームプレートを便器に捨てられたーー。勤務先で嫌がらせを受け、悩んでいるという相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
【関連記事:夫は死んだのに、義母との同居が続いて…「監視生活」に限界を迎えた女性の決断】
相談者によると、自家用車にガムをつけられたり、ワイパーを折られ、ひっかき傷だらけにされたりしたことがあるという。誰がやったのかは分からないが、車の駐車位置を変更しただけで、「邪魔」「生意気」などと陰口を言われることがあった。
このほか、ネームプレートを便器に捨てられたり、まったく身に覚えのないことを「(相談者が)やった」と噂されたりするなどの嫌がらせもあったそうだ。
相談者は結婚したばかりということもあり、退職することは考えていない。状況を改善するためにはどのように対処すべきだろうか。太田伸二弁護士に聞いた。
ーー相談者は嫌がらせについて「誰がやったか分からない」そうです。このような場合において、状況改善のために取りうる手段はあるのでしょうか。
今回のケースで難しいのは「加害者」が誰か分からないことでしょう。
職場の状況によって取ることのできる手段は異なると思いますが、「加害者」を知るための手段として(1)防犯カメラを設置する、(2)警察に相談することを提案します。
ーー(1)防犯カメラを設置する場合に注意すべきことはありますか。
駐車している自家用車内にカメラを設置して撮影する場合、それまでにも被害を複数回受けている経緯から、違法行為の証拠保全としての必要性が高く、法的な責任を問われる可能性は低いと考えます。
一方で、職場内での嫌がらせの現場を押さえようとして自分のデスク周りの録画を常時するとなると、嫌がらせ以外の行為も多く撮影されてしまうので、会社から問題にされる可能性があります。
ーー(2)警察に相談することも方法として考えられるのですね。
今回のケースでは、自家用車に対して器物損壊罪にあたる行為がおこなわれています。被害を相談して捜査してもらう(それによって加害者を特定してもらう)ことも考えてはどうでしょうか。
ーーこのほか、状況を改善するために会社内で取りうる手段はありますでしょうか。
今回の件の状況からすれば「加害者」が同じ社内の人間である疑いが濃厚です。
会社は従業員に対して働きやすい環境を維持する義務を負っています。一般的な注意を従業員にするだけではなく、個々の従業員に嫌がらせの事実について聞き取りを行うなど真剣な取組みが必要です。それをせずに、相談者の方が精神疾患を発症するなどの事態に至った場合は、使用者の義務違反として損害賠償責任を負うこともあり得ます。
また、会社の動きが良くない場合は、会社内外の労働組合に相談して、改善を求める交渉をすることも一つの手段です。
以上を考えましたが、状況によって取るべき手段(たとえば「どうやって証拠を保全するか」)は変わってきます。嫌がらせによって精神的に追い込まれる前に、労働問題に取り組む弁護士に相談していただきたいです。
【取材協力弁護士】
太田 伸二(おおた・しんじ)弁護士
2009年弁護士登録(仙台弁護士会所属)。ブラック企業対策仙台弁護団事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団全国常任幹事。Twitter:@shin2_ota
事務所名:新里・鈴木法律事務所