2020年12月31日 09:51 弁護士ドットコム
「アダルトサイトの未納料金がある」などと嘘を言われ、お金を約1億円も騙し取られてしまった——。架空請求で実際に振り込みもしてしまった男性の被害が報じられた。
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NHK(12月11日)によると、札幌市の50代男性は「利用料金の確認が取れていない」と書かれたメールを受信し、書かれていた連絡先に電話したところ「アダルトサイトの未納料金がある」と言われ金を要求されたという。
他にも、「サイバー保険料」や「損害賠償の補償金」などの支払いを求められ、数十回にわたり計約1億900万円を振り込んでしまったそうだ。
国民生活センターは架空請求について「身に覚えがなければ絶対に連絡しないように」と呼びかけているが、もし支払ってしまった場合、お金を取り戻すことはできるのだろうか。
池田誠弁護士によると、架空請求に対してうっかり銀行振込をしてしまった場合、まず考えられる被害回復の手段は、「振込め詐欺救済法」に基づく口座凍結だという。
「いわゆる振込め詐欺救済法では、まず、警察もしくは被害者本人からの届出によって、銀行などに振込先の預貯金口座の取引を停止させ、口座名義人による出金を停止させることができます。
銀行などは、その後預金保険機構に対し、口座名義人の預貯金債権を消滅させる手続(公告)を開始するよう求め、その公告期間開始後必要な期間(60日)の経過によって口座名義人の預貯金に対する権利を失わせます。
その後、さらに、金融機関は、預金保険機構に対し、口座名義人の権利が消滅した預貯金残高を被害者に分配するための手続(公告)を開始するよう求めます。公告期間(90日)の経過後、その口座に振込んだ被害者の被害額の割合に応じた分配が実施されます。
詳しくは、預金保険機構のHPに解説があります」
ただ、この手続によって被害が回復されるためには、振込先の口座に十分な残高が残っている必要があるという。
「通常、加害者グループは、被害者から入金があるとすぐに引出しをしてしまうので、現実に十分な被害回復が得られることは多くありません。」
騙し取った側が即座にお金を下ろした場合、口座凍結の方法は使えないということだ。さらに別の方法はないのだろうか。
「このような詐欺を行った加害者やそのグループのメンバーを対象に損害賠償請求等の請求をする方法が考えられます。
しかし、仮に加害者らが逮捕され、その氏名や住所を知ることができたとしても、十分な財産を持っていないことが多い上、被害者が多数で、被害額も多額に及んでいることが多いため、やはり現実の被害回復につながることは多くないと思います。
そこで、今回のような架空請求の件で、振込みを行った先の口座が加害者グループとは無関係の第三者の口座であった場合には、口座名義人に対して請求する方法が考えられます」
「もう1つは、加害者が法人だった場合に、架空請求に直接は関与していない取締役や監査役ら役員に対して損害賠償請求をする方法です。
会社法では、会社が第三者に損害を与えた場合で、役員らがその職務を行うのについて故意があり、または重大な過失があった場合には、役員らに対して直接に損害賠償請求ができることを定めています」
ただ、「いずれの方法をとっても、現実に満足のいく回収が実現する見込みは高くありません」と池田弁護士。架空請求に騙されお金を支払ってしまわないことが、1番の対処法だと肝に銘じておこう。
【取材協力弁護士】
池田 誠(いけだ・まこと)弁護士
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済や企業や個人間の債権回収分野に注力している下町の弁護士です。債権回収特設ページURL(https://nippori-law-saikenkanri.com/)
事務所名:にっぽり総合法律事務所
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