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「一人暮らし」は実家暮らしに比べてどれくらいお金がかかる? - FPが解説

2020年12月29日 06:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
リモートワークが急速に拡大し、実家での在宅業務に不具合を感じている方も多いと思います。仕事とプライベートの時間と空間をコントロールできる自分だけのスペースが欲しくて、一人暮らしを考え始めている方もあると思います。

それでも社会が不安定な中、一人暮らしはやはり不経済であることには違いありません。はたしてどれほどの費用が掛かるのでしょうか。また、一人暮らしを始めるに際して、どのような点を考慮すれば費用を節約できるでしょうか。
一人暮らしの費用を比較してみよう

実家暮らしの方で、どれだけの金額を実家に入れているかは人それぞれでしょう。全く負担していないケースも少なからずあると思います。地域によっても家賃や光熱費は相当な違いがあります。また昨今は在宅勤務という状況もあり、光熱費はその分大幅に増加します、実際の状況に合わせて金額を比較してみて下さい。

初期費用を算定してみよう

最近は一人暮らしパックのようなものがあり、かなりリーズナブルに取りそろえられたりします。それでも細々としたものがトータルすると相当な金額となります。下記の表は当面必要かもしない項目を列記したものです。

■のマークの項目は、団塊の世代が大学を卒業したころに取りそろえたと思われるものです。アパートと言っても下宿に近く、キッチンは個室にありましたが、風呂はなく、トイレも共用のことが多く、必要品もそれを想定しています。人により必要とするものは様々ですので、あくまで参考として考えてください。

項目の中の消耗品は日々追加購入が必要なもので、家計簿をつけていると分かりますが、月々かなりの額が必要となります。特に昨今はマスクや殺菌・消毒用品の費用もバカにならないでしょう。

電化製品やキッチン製品などは人によって違いが出やすい項目です。しかし、昔の暮らしを見るとほとんどの項目がないことがわかります。それだけ生活が広がっていることになります。

初期費用としては調度品以外にも、引っ越し費用、家賃、敷金(3カ月くらい)、礼金(1カ月くらい)、仲介手数料がかかります。また最初の食材や調味料購入などは、まとまった金額を必要とします。
無駄をなくして、一人暮らしを豊かにする方法

一人暮らしは確かに不経済です。欧米はルームシェアが普通のような印象ですが、日本はあまり聞きません。それはなぜでしょうか。自力で大学へ行く風潮の欧米比べて、日本人は親がかりの傾向が強く、やはり贅沢なのではないかと思います。

とは言え、一人暮らしを考えるには相応の事情もあり、成人したら自立するのが本来の姿でしょう。無駄をなくして、一人暮らしでもきちんと貯金もできる生活スタイルはどうすればよいでしょうか。

実家暮らしの間にウォーミングアップを

現在実家暮らしであれば、その特権を生かして一人暮らしに必要な費用分と家に入れている費用の差額は別会計で貯金してみてはどうでしょうか。相当苦しいと感じるかもしれません。一人暮らしをする前に一旦生活を絞ってウォーミングアップをしておくと、無駄な初期費用も抑えられそうに思います。

何よりもその分貯蓄がたまるメリットもあります。一人暮らしをするとなかなか貯蓄ができなくなります。家賃分が貯金できていったら、どんなにか楽だと思うはずです。6.5万円/月の家賃は1年で78万円です。10年で何と780万円にもなります。実家暮らしの間だけ、この得点を利用して貯蓄してみましょう。
実家の不用品を活用しよう

日本の家庭には、いろいろなものが溢れがちです。上記の表にある一覧の中で、かなりのものが実家に使われずに眠っているのではないかと思います。スタイリッシュに自分好みに整えたいところでしょうが、それは持って行ったものが劣化して買い替えるときまで我慢しましょう。
ミニマリスト生活をイメージしてスタートする

そもそも1ルームの部屋に収納できる身の回りのものは限られています。高校生の時、寄宿舎生活をしていましたが、自分用に使える収納スペースは押し入れ半間(中棚の上下分)とロッカー45㎝幅だけです。押し入れには布団などの寝具と衣装ケースの中に衣類や小物を保管していました。これだけで十分に生活できます。新居の収納が少ないからと言って、いろいろ家具や収納グッズを買うよりは、ある範囲ですっきり生活することを考えてみましょう。
無くて済む物は買わない・兼用できるものは買わない

例えばトースターは朝パン食の方にはぜひ欲しいと考えるかもしれませんが、無くても何とかなります。フライパンでフレンチトーストでもよいですし、網があればガスコンロで焼けます。コーヒーメーカーなどもコーヒー党には必需品と思うかもしれませんが、やかんとドリッパーで十分です。

一人暮らしはキャンプのように、ある程度の不便を楽しむ工夫があるとそれも楽しいものになります。
長く使えるものを選ぶ

大学を卒業して親から独立したときに、長く使えると店の勧めで、よい包丁を購入しました。その時の包丁が自分では研げないレベルになったので、最近メーカーに仕立て直しを頼み切れ味が戻りました。22歳から平均寿命まで、おそらく一生使えると思います。いろいろなタイプの包丁を取り揃えなくても、1本でほとんどのことができます。

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住まいや不動産活用の仕事をしていると多くの方々に会う機会があります。仕事柄、その人の生活スタイルや考え方を必然的に把握することになります。そうした経験から人は男女を問わず、成人したら親から独立して生活する方が望ましいと感じています。

最近は結婚年齢が高く、必然的に長く親元で生活することも増えているとは思いますが、少なくとも一人暮らしをしたと仮定した際の生活水準で生活し、経済的に恵まれた分は蓄財することをお勧めします。社会人になったら、自分の実力相応の暮らしをすべきだと思います。

学生時代は親の実力水準の生活であり、急に社会人1年生水準の生活になると確かに窮屈でストレスでしょう。しかし、後々独立したときに味わうストレスは早めに味わい、早めに蓄財した方が後々はるかに楽なはずなのです。

佐藤章子 さとうあきこ 一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。 この著者の記事一覧はこちら(佐藤章子)