2020年12月28日 18:51 弁護士ドットコム
「桜を見る会」前夜に開かれた夕食会をめぐる問題で、東京地検特捜部は12月24日、安倍晋三前首相を嫌疑不十分で不起訴とした。安倍氏は12月21日、任意の事情聴取を受けていた。
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一方、安倍氏の公設第1秘書は、安倍氏の後援会の政治資金収支報告書に約3000万円の夕食会の収支を記載しなかったとして、政治資金規正法違反の罪で略式起訴されて、罰金100万円の略式命令を受けた。
NHKなどによれば、公設第1秘書は後援会の会計処理を実質的に取りしきっていた。不記載を認め、罰金もすでに納付したという。
この問題をめぐっては、全国の弁護士などで構成するグループ「『桜を見る会』を追及する法律家の会 」が今年5月、政治資金規正法違反(不記載)と公職選挙法違反(寄附)の疑いで、安倍氏(当時首相)と後援会幹部などに対する告発状を東京地検に提出していた。
同グループの泉澤章弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に「不記載と寄附については、絶対に起訴できるという自信があったからこそ告発状を提出しました。(公設第1秘書の略式裁判のみだったことについて)当然のことながら、われわれはまったく納得していません」と話した。
夕食会をめぐる問題では、(1)政治資金収支報告書に夕食会の収支を記載しなかった点につき政治資金規正法違反(不記載)、(2)安倍氏側が夕食会の費用を補てんしたことが参加者への違法な寄附にあたるのではないかという点につき公職選挙法違反(寄附)、それぞれが成立するかどうかが主な争点となっている。
報道によると、(1)について、東京地検特捜部は、「後援会の収支報告書の作成は、公設第1秘書がもっぱら行っていて、安倍氏が関与したり把握したりしていたと認められる証拠は得られなかった」と報道陣に説明したという。その結果、安倍氏は不起訴、公設第1秘書を略式起訴となった。
泉澤弁護士は、「たしかに共謀したことに関する直接証拠はないが、把握していないなどということが本当にあるのか。納得できる説明とはいえない」と批判する。
また、(2)については、「法律の解釈では、参加者に寄附を受けたという認識が必要だが、懇親会の参加者に寄附を受けたという認識があったと認めるだけの証拠は得られなかった」と報道陣に説明。不起訴になった。
NHKは12月24日、「通常ホテルで開かれるパーティーと比べると安いと感じた」とする参加者の声を報じている。はたして、一人ひとりの参加者まで捜査したうえでの結論だったのか。泉澤弁護士は「安倍氏側の近しい人物にしか聞いていないのではないか」と疑問を呈したうえで、別の法解釈があることも指摘する。
「過去には、利益を受ける側に『寄附』だという認識がなくても、公選法違反が成立した裁判例もあります。それに基づけば、一人でも寄附(利益)ではないかと思った人がいる場合には、公選法違反が成立する可能性があるのではないでしょうか」(泉澤弁護士)
「桜を見る会」を追及する法律家の会は12月21日、新たに告発状を東京地検に提出した。「(公設第1秘書の略式起訴のみになりそうだという)事前の報道等から、危機感を抱いた」(泉澤弁護士)ことによるものだという。
「12月の告発では、後援会だけでなく、安倍氏の資金管理団体『晋和会』の政治資金規正法違反(不記載)をも追及しています。
後援会とは異なり、『晋和会』の代表者は安倍氏自身がつとめていますので、もし『晋和会』に法律違反があれば、安倍氏にも管理監督責任が当然あると考えています」(泉澤弁護士)
今回の略式裁判で結果が一つ出たものの、これですべてが幕引きというわけではない。泉澤弁護士は、今後について「全体像をあらためて精査・点検した上で検討する」としたうえで、「安倍氏の不起訴について、検察審査会へ申し立てるという手段も考えられる」と述べた。
「なぜそこまでしつこくやるのかという方もいるかもしれませんが、これは現役の総理大臣が国政や税金を私物化したかもしれないという問題です。単に『いくらをごまかした』というだけの話ではなく、民主主義や法の支配の問題です。法律家の一人として、しっかりと追及していかなければならないと考えています」