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ホンダF1参戦終了の発表を機に生まれた、次世代エンジン導入と開発凍結の前倒しを求める声/2020年振り返り(2)

2020年12月28日 18:11  AUTOSPORT web

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2020年F1第14戦トルコGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
ホンダがレッドブルとタッグを組んで2年目となった2020年。タイトルをかけてメルセデスとの戦いに挑んだが、そんななかホンダは2021年シーズン限りでF1参戦を終了すると発表した。

 参戦終了の発表に驚く反面、過去の撤退を思い出した人もいるだろう。しかし今回の参戦終了の発表によって、F1には新たな流れが生まれたのだという。autosport webでもおなじみのF1ジャーナリスト、尾張正博氏がパワーユニットにまつわる状況について振り返る。

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 日本人にとって、2020年は残念なシーズンとなった。それは期待していたレッドブル・ホンダがタイトルを獲れなかったからでもあり、鈴鹿の秋の風物詩である日本GPが開催されなかったからでもあるが、最も残念だったのは、10月2日の発表だったのではないか。そう、ホンダが2021年限りでF1参戦を終了するという発表だ。

 当初、この発表は自分も含めて残念なニュースとして取り上げていた。それは、2008年12月に「撤退」という言葉でF1活動を突然やめたにも関わらず、7年後の2015年に復帰し、再びF1を去るという決断を下したからだ。要するに「またか……」という思いが当初は強かった。

 ところが、その後のF1界の動きを見ると、今回のホンダのF1参戦終了は、「決して対岸の火事ではなく、ホンダがこのような決定を下さなければならなくなった現在のF1をもう一度見つめ直そう」という、新たな風潮をF1界に作ったような気がする。

 そうでなければ、2022年以降もレッドブルとアルファタウリがホンダのパワーユニット使用を継続できるようF1界が調整するわけもない。また、これに伴って、2026年から導入される予定だった次世代のパワーユニットの導入を2025年に前倒ししたり、2023年に予定していたパワーユニット開発凍結も2022年に前倒ししようという動きも、ホンダの決定が引き金となった。

 ホンダが参戦終了の発表を行った直後の囲み取材で、ある記者が「今回の決定で、F1にはもうホンダの居場所がなくなるんじゃないですか?」と質問した。そのときは筆者も、その記者と同じ気持ちだったが、あれから2カ月以上が経過したいまは少し違う。いまなおF1はホンダを必要としており、2022年以降もホンダのパワーユニットは居続けるかもしれない。

 アブダビは、ホンダにとって忘れられない場所だ。それは6年前のテストでトラブル続きでまともに走行することができないという屈辱を味わった場所だからだ。当時、テストに参加したメンバーの多くがガレージで3日間徹夜で作業し、チェックインしたホテルのベッドで寝ることなく、チェックアウトしたという。あれから6年、2020年の最終戦でホンダはポール・トゥ・ウィンを飾った。

 10月2日に本社が下した決定は残念だったが、ここまでパワーユニットを開発し、現場で走らせてきたスタッフの方々が重ねてきた努力は無駄ではなかったし、誇りに感じてもらいたい。

 もちろん、ホンダの戦いはまだ終わっていない。最後に大輪の花が咲くことを願っている。