2020年12月27日 10:02 弁護士ドットコム
人気タレントと同等、ときにはそれ以上に、アナウンサーという存在は、「華やかなゴシップのネタ」となる。
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だが、熱愛・離婚など、私生活を追いかけられるようなアナはごく一部。ほとんどのアナウンサーは、週刊誌に追いかけられる生活とは無縁で、堅実に暮らしている。
弁護士ドットコムニュースによる、非正社員として地方テレビ局を渡り歩いてきたフリーアナ対談企画。第1回では「お金」のシビアな話を紹介したが、第2回は「アナの結婚」について語ってもらう。
配偶者の「安定収入」がなければ、フリーアナの仕事は続けられないという(取材は12月上旬に実施)。
ミホさん(仮名・30代):複数のローカル局の契約アナウンサー(契約社員)をへて、現在は首都圏でフリー。独身。
エリコさん(仮名・30代):NHKの契約キャスター(業務委託)出身。その後、複数のローカル局の契約アナウンサー(契約社員)をへて、現在は首都圏でフリー。会社員の夫がいる。
ーー結婚の経緯は?
エリコ:いくつかの局を経たのち、地元に戻って全く違う仕事に就きました。現在は東京拠点にフリーアナの仕事を再び始めています。
東京行きのチャンスは過去にもありましたが、独身で覚悟できなかった。主たる収入を稼いでくれる夫がいるからできたことです。
「フリーのアナウンサーになったとしても、月の稼ぎは全く計算できません。さらに、妊娠・出産すれば、私の稼ぎはゼロになるんですよ」
こう念押ししてから結婚しました。
結局、固定収入がないと精神的に不安なので、私はアナとは関係ない事務の仕事もしています。
ーー配偶者(=安定収入)を得て、アナを続けられる女性は多い?
エリコ: 多いと思います。東京で1人で生計を立てるのは大変です。
ミホ:働いていた地方局の契約が切れてフリーになり、私は独身ですが、今は実家から仕事に通っています。
ーー反対に、結婚でアナを辞めた同僚は
ミホ:いっぱいいます。
エリコ:同期のほとんどが辞めました。結婚。違う業界への転職。フリー事務所に所属して、実働していない人もいます。
結婚した正社員の女性アナが、他部署への異動によって辞めることも多い。
ミホ:同年代の女性(正社員)は、地方局入社時に「結婚したら会社を辞めて」と言われたそうです。この時代に。
女性アナは若いほうがいい。おばさんアナばかり社内に溜まらないように、ある程度は間引く必要がある。限られた仕事のなかで、若い子、キャリアのある人が担当する仕事は決まっています。
ーー年代が上のアナの仕事とは?
ミホ:たとえば、トークがすべてのラジオです。ラジオがある局は、正社員を採る数が多く、年配の女性アナが目立ちます。長く働くという観点から、就活で選んでみては。
こんなに年齢で仕切られる仕事ってないと思いますね。実績は上がるのに、需要は減っていく。実績と年齢が反比例みたいな感じです。
ーーミホさんは婚活をされているそうですね
ミホ:最近の夫婦は正社員、共働きで、生活費から子どもの教育費まですべて割り勘が多いじゃないですか。男性は女性にも働いてほしいと考えている。
フリーの私が結婚したら、子どもを産んだ瞬間に失業です。復帰には、仕事探しから始めなければいけません。教育費の折半など無理です。結婚のハードルが高い。
ーーメディアの影響か、「アナウンサー」はモテるというイメージがあるのですが
ミホ:局アナと違い、フリーアナウンサーってモテないなと思います(笑)。CSの仕事をしているのですが、地上波でないと、初対面の男性の反応は「ふーん、そうなんだ」で終わって、食いつきがわるい。モテない。
安定収入を求める世の男性からすれば、フリーランスの私って不安じゃないですか。
逆に、私も、パートナーの収入を気にしないくらい経済的余裕のある男性を求めざるをえない。テレビ局の正社員の身分があれば、こんな不安もなかったのに。
エリコ:仕事を通じて取材相手と親密になることもはばかられ、なかなか出会いがありません。
「モテ」とはズレるかもしれませんが、NHKは不倫が多いと言われています。男性職員の単身赴任が多く、若い女性契約キャスターから上司として慕われる。私がいた局では「独身者と既婚者は二人きりで飲みに行かないでください」と会議で通達されました。
ーーアナを辞めても、セカンドキャリアに不安はありますか
ミホ:フリーになって、営業の仕事もしています。アナウンサーって本当に潰しがきかない職業だと実感しました。PCを使えない。メールの「CC」「BCC」がわからなかった。
魅力的な仕事に見えるので、フリーアナを切っても切っても、下からは若い女性がどんどん入ってくる。私も仕事は楽しくて、アナになったことだけは後悔したことがありません。ただ、競争相手が減ることもないし、長く続けられず、しんどいです。
エリコ:若いうちにしかできないし、2~3年チャレンジしてみて、適性を判断しようとする人が多いので、若い人の数が減ることはないと思います。
(つづく)
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