2020年12月26日 21:22 リアルサウンド
劇団EXILEの町田啓太が、自身初の写真集『BASIC』(光文社)を11月20日に発売した。新宿・ゴールデン街で大人の表情を映し撮った第1部、地元・群馬で学生時代の思い出の地を巡った第2部で構成され、町田啓太がこれまでに培った感性や美意識が豊かに表現された本作は、どのように作られたのか。町田自身のアイデアや、撮影を通して気づいたこと、演じることと被写体になることの意識の違いなど、表現者としての横顔に迫った。(編集部)【インタビューの最後にプレゼント企画あり】
参考:橘ケンチ×秋山真太郎が語る、“紙の本”の色褪せない魅力
■ルーツや根本にある今の自分を表現したかった
ーー今回の写真集の企画はどのようにスタートしたのでしょうか?
町田啓太:写真集については、撮影に入るずっと前からお話をさせていただいていました。僕が好きなものや29歳の今、感じているものを写真集に詰め込みたいということを伝えたんです。もともと写真集は詳しくない領域だったので、本屋さんに行って海外の写真集だったりいろんな作品を手に取って、「こんな感じがいいと思うんです」というのをスタッフさんに見ていただきました。僕が香港映画や湿気のある質感、フィルムショウが好きというところから、撮影場所としてゴールデン街が決まり、ルーツや根本にある今の自分を表現するために地元の群馬でも撮りましょうということで、だんだんとコンセプトが固まっていきました。カメラマンの彦坂(栄治)さん、編集の方やスタッフのみなさんが親身になって僕のアイデアを聞いてくださったので、チームとして楽しいものを作ろうというモチベーションで撮影に挑めました。
ーー同じ劇団EXILEでは、鈴木伸之さんが昨年写真集を出しています。町田さんとしても写真集を出したいとの思いはあったのでしょうか?
町田:もともとは、自分の写真集を出すということは考えていませんでした。というのも、写真集には10代とか20代前半の若かりし頃を切り取るような、ありのままの姿や無邪気な姿を映し出しているイメージがあったんです。でも、お話をいただいてから様々な写真集を手に取って、いろんな表現があることがわかって。今の僕が等身大で出来る写真集を作るために、どうすればいいかを考えていきました。
ーーストーリー性があって映画的でもあるし、町田さんの映画に対する好みが色濃く感じ取れるのが印象的でした。
町田:感じ取ってもらえたなら嬉しいですね。ストーリー性については撮っている中でスタッフさんから案が出てきたりして、より流れを意識した構成になっていきました。スタッフさんは僕の好きなものや感覚をすくい上げてくださって、相談しながら作り上げていったので、これなら良い写真集になると思いました。
ーー「BASIC」というタイトルはどのように決まったのでしょう?
町田:タイトルは表紙、全体の構成が決まった後、一番最後に決まったんです。今の自分があるのは、好きなことやルーツがあるからだという考えから出てきた言葉が「BASIC」だったので、僕から提案させていただきました。「BASIC」というコンセプトありきで作っていったわけではなかったんですけど、自然とそういう作品になっていったのもあって、このタイトルがいいと思ったんです。
■雨模様がかえって独特の雰囲気になった
ーーモノクロ写真などもあって、昭和的なロマンが感じられるのも新鮮でした。
町田:本屋さんに行って写真集を漁っていた時、手に取ったのはモノクロ調、フィルム調の作品で、そういったテイストがいいなとは思っていました。彦坂さんの写真集の中にも、世界の様々な方を撮ったモノクロ調の作品があって、かっこいいなと思って、今回モノクロでも撮ってもらいました。
ーー町田さんは平成生まれですが、本作には昔の日本映画のような風情もあります。もともとそういった作品が好きなんですか?
町田:好きなんだと思います。銀幕スターがたくさんいた頃は、日本映画の勢いが凄かったと聞きますし、松田優作さんは今観てもかっこいい存在で、憧れている部分もあります。
ーーゴールデン街での撮影では、タバコを吸っているショットもあります。町田さんにとってゴールデン街はどのような場所ですか?
町田:ロケーション的に、昭和の匂いを感じる場所です。東京の中で僕がやりたい雰囲気の写真を撮るなら、やはりゴールデン街だなという印象でした。いい意味で猥雑な雰囲気のある場所だからこそ、タバコのショットも自然な流れで撮れたのだと思います。当日はたまたま雨模様だったんですけれど、かえって独特の雰囲気になったのも良かったです。東京のコンクリートジャングルの湿った質感や、雨粒に光が反射する様が、映画的な雰囲気を演出するのに一役買っているのではないかと。
ーーお酒を飲んでいるショットもありますね。
町田:ゴールデン街のお店でマスターから強いお酒を勧められたんです。昔、ウイスキーを飲んでいたので、シングルを頼んだら「これがシングルか……?」ぐらいな分量で(笑)。前はけっこう強かったんですけど、今は1杯でベロベロになってしまいます。この時もほろ酔いでした。
ーー衣装のタキシードもゴールデン街に溶け込んでいますね。
町田:ゴールデン街の衣装の候補には、柄シャツもあったんですけど、スタイリストの方とタキシードを崩して遊んでみたら面白いんじゃないかということで。昼に続いて夜の撮影では、衣装を替えて撮るつもりだったんですけど、そのままタキシードを着て、表紙にも使ってもらって。「BASIC」というタイトルにもハマっていると思います。
ーースタジオでの撮影はどのようなイメージですか?
町田:もともと、写真集の中で使うかどうかは決まっていなかったシーンなんですけれど、彦坂さんのとっておきの機材で撮影していただいて、あまりファッション的になり過ぎず、でも面白い写真になりました。写真集の中では、ゴールデン街のシーンと地元・群馬でのシーンの切り替えに当たるようなページで、構成的にもうまくハマったと思います。
ーールーツとなる地元の群馬は、伊香保温泉での撮影です。
町田:群馬には草津温泉といった温泉地があって、僕も帰ると友達と温泉に行くんです。そういったところも撮影場所にいいかなという話をしていたら、伊香保温泉の現地の方にも協力していただいて。しかも浴衣は自前のものです。大河ドラマや時代劇に念願叶って出演させてもらった時に、稽古で着ていたものなんですけど、写真集で使ってみてもいいんじゃないかと思い、提案させていただきました。
ーー河原での撮影も地元ですか?
町田:地元です。この河原は群馬での一番最初のロケ地で、昔から川では遊んでいたので、田舎はいいな、自然っていいなと思いながら、ゴールデン街とは全然違う感覚で撮影に入ることができました。
ーープールサイドに座るショットも童心に返ったようなイメージです。
町田:地元の小、中学校で使っていた馴染みのあるプールでの撮影でした。行ってみると忘れていた記憶がいろいろ思い出されて、楽しかったですね。衣装も普段から自分が着ていそうな服装を選んで撮りました。等身大のイメージですね。懐かしさを感じながら撮影していました。
■ずっと興味があることに対して挑戦し続けてきた
ーー町田さんは役者として活躍しています。舞台やカメラの前での演じるのと、写真の被写体になるのとでは、意識にどのような違いがありますか。
町田:今回の撮影を経て、全く別物だと感じました。映画、ドラマ、舞台とかになると、台本、ステージングありきで、役があるのでそれだけを考えていればいいことなんですけど、写真集では本来の自分でしかない。演じているとかは全くなく、今回はその場所に行ったときに自然と湧いてくる感情のままに撮影していただきました。きっちりポージングを決めたりすることもあまりなく、動き回りながら、これをやってみようというその場での発想で撮っていきました。演じている時の僕とはまったく違う表情になっていると思います。
ーーTwitterでは青柳翔さんがユニークな反応をしていたりもしましたが、劇団EXILEのメンバーからほかに何かリアクションはありましたか?
町田:写真集発売のお知らせをした日にインスタライブで配信をしたんですけど、その時にたまたま佐藤寛太が来てくれたんです。写真集を見て「エモいっすね」と言っていて、寛太の年齢から見るとそんな感じなんだって思いました。年齢によって見え方も変わってくるのかもしれません。懐かしさを覚える方もいるだろうし、僕みたいに昭和テイストに憧れを持つ人もいるだろうし、新しい見え方をする人もいるだろうし。人によって、いろんな見方があるのも面白いなと思いました。
ーー写真集の中のインタビューでは、今回の撮影が「20代を振り返るきっかけになった」と答えています。改めて、町田さんにとって20代はどのようなものでしたか?
町田:今までの人生を振り返ってみると、ずっと興味があることに対して挑戦し続けてきたなと思います。高校選びも地元から離れて全然違うところに行ったり、パイロットを目指してみたり、かと思ったらダンスをやってみたり。東京に出て体育大学に行ってみたり、そうかと思えば俳優業を始めてみたりと動き回ってきました。20歳からは、今の事務所に所属して俳優としての挑戦が始まり、自分の目指すべき方向がどんどんはっきりしていきました。こうやって9年間、同じことを続けてこれたというのは、今までになかったことです。やればやるほど思うこともたくさん増えたり、やりたいことや挑戦してみたいことなど願望も増えていく。そんな20代だったと思います。
ーー9年間の俳優としての経験を積んで形成された町田さんの世界観が「BASIC」には表れていると思います。
町田:そう見えていたら嬉しいです。20代を通して映画や芝居から吸収して、自分が表現したいと思ったものやその感覚を少しでも感じて楽しんでいただけたら。(渡辺彰浩)