「クリスマスイブに彼とディナーを予約していたんですけど、急に体調が悪くなったからキャンセルしたいと言われました」
こんな相談が毎年、12月下旬になると殺到するという――。心理カウンセラー養成スクールを運営するアイディアヒューマンサポートサービスが22日、「人はなぜ浮気や不倫をするのか」と題したオンライン講座を開催した。
現役カウンセラーのほか、資格取得に励む生徒や占い師ら24人が受講。同社の代表取締役で、心理カウンセラーの浮世満理子氏が講師を務め、浮気や不倫に走る人間の心理を解説した。
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「12月24日は浮気、不倫のリトマス試験紙」
浮世氏はまず、心理カウンセラーとして浮気や不倫の相談を受ける場合に「モラルの問題は引き離して考えるべき」と前置きをする。
「『モラルがよろしくないから、不倫はやめましょう』は心理ではありません。それは法律家の仕事であって、カウンセラーの仕事じゃないですよね」
万引きの場合であっても、心理カウンセラーの仕事は「なぜ万引きやめられないの」「(万引きによって)何を精神的に得てるの」「そして、その結果どうなっていくの」などを考えていくことだという。
では、浮気、不倫の場合はどうなるか。クリスマスイブに彼氏と約束をしていた女性のケースでは、浮世氏が「彼に電話したらいいんじゃないの?」と聞いても、女性は「いやーちょっと」と躊躇したという。
「相談に来ている彼女も、彼氏に嘘をつかれていると分かっているんです」
このようなケースは、毎年2、3人にとどまらない。
「12月24日に仕事、出張、残業が急に入る。"24日"は浮気、不倫のリトマス試験紙みたいになっている事実があります」
浮気・不倫は生理現象ではなく、心理現象
浮気や不倫する男性の話をすると、「先祖が狩猟民族だから仕方ない」という認識の人が必ずいるという。浮世氏は「いや、男性の先祖が狩猟民族ならば女性だって同じでしょう」と否定する。
いわく、浮気・不倫は生理現象ではなく、心理現象。「自己肯定感を満たしたい、自分のことを『好き』と言ってほしい」という思いから浮気に走るという。人間が浮気・不倫のきっかけを解説するにあたり、次の3つのキーワードを挙げた。
(1)コンプレックス
周囲が「奥さんがすごい美人、金持ち……なのに、なんで旦那さん浮気するの?」と思うような場合、男性が人知れずコンプレックスを抱いていることがあるという。
「格差婚」という言葉があるが、世の中には、結婚相手がいつも同等のスペックを持つとは限らない。あまりにも"身分不相当"なパートナーと結婚すると、自己肯定感は下がるといい、自己肯定感を埋めるために浮気・不倫に走るとした。
(2)破壊願望、破滅願望
ユング心理学では、人の心に潜む暗い部分を「シャドウ」と呼ぶ。普段は抑圧されているが、ときに破壊願望となって表に出てくることがある。特に "旅人タイプ"の人は要注意だ。
「昔の映画とかでも、旅人がある村にやってきて恋愛した後に"一か所に留まっていられない"と去っていくシーンがありますよね」
平凡な暮らしになると、どうも座りが悪く感じるのが特徴。浮世氏は「この旅人にも、実はコンプレックスがあって、表層的に付き合っている間はいいが、人と深く付き合うと『自分は嫌われるんじゃないか』という思いを内に秘めている」と続ける。
「家庭が円満で、子どもが小さくてかわいい…ってなった時に、そのスイッチが発動する。幸せは自分らしくない、こんな幸せなところにいてはいけない」
男性に限らず、女性の場合も同じで、何らかの焦りや苛立ちがこみ上げてくる。「言ってみれば、"幸せアレルギー"みたいなものです」。こうした人々は、面倒くさそうで、引っ掻き回されそうな人をパートナーに選ぶ傾向があるという。
(3)認知のゆがみ
最後は、単純に道徳観が欠如しているケースだ。認知のゆがみから性行為を安く考えている人も一定数おり、浮世氏は「性行為のバーゲンセール」と表現する。
こうした人は性病を罹患する確率も高いといい、中には「病気を持っていると自覚しながら、不特定多数と性行為をする人も一定数います」と話した。
渡部は(1)~(3)のすべてに該当?
不倫と言えば、人気お笑いコンビ・アンジャッシュの渡部建さんの不倫報道が記憶に新しい。渡部さんのケースは、上記のどれに当たるのだろうか。
浮世氏はキャリコネニュースの取材に「一番大きいのはコンプレックスでしょう」と答える。
「お金持ちで綺麗な奥さんをもらうと、不倫に走る。芸能界では、特に多く感じます」
さらに「藤原紀香さんのケースもそうでした」と陣内智則さんの不倫発覚の末、離婚した藤原さんの名前を挙げる。「芸能界だと、普通の仕事と違って人気ランキングなどで年収が分かってしまうところがあります。そういう意味では残酷ですよね」と格差を感じやすい背景もあるようだ。
認知のゆがみについても「『不倫は悪いことじゃない』『バレなきゃいい』と思っている節はありそうです」と印象を語る。
「モラルが欠けている人は正常バイアスが掛かっていて『多分バレない』『バレなきゃ大丈夫』と思い込み、悪いことをしている自覚もないケースがあります」
また、2年前に長男を授かったばかりだったことから「幸せ絶頂期を壊すという意味では、破壊願望もあるという風に感じます」と述べた。
もし渡部さんが相談に来たとしたら――。浮世氏は「コンプレックスは自分自身で見つめて、社会的地位の関係ないところで一人の人間として生きていくよう意識を変える必要があります」と答える。具体的には、家庭内で自分の役割を持つことなどが効果的のようだ。
また、認知のゆがみについても、次のように語る。
「『多分大丈夫』という部分があったのでしょう。自分の行動がどういう結果をもたらすにズレがある。そこを変えていく必要があります」
自身の行動によって、家族、不倫相手といった傷付ける相手がいることを自覚することが必要とした。また、浮世氏は「自分を変えられるのは本人だけ。しっかりと向かい合えば、不倫癖がなくなる可能性もあります」とまとめた。
浮世氏は、同社運営のアイディアヒューマンサポートアカデミー学院長、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。これまでにプロサッカーJ1クラブやプロテニスプレーヤー、プロゴルファー、陸上、体操選手らのメンタルトレーニングを担当し、2008年にはトレーナーとして北京五輪に同行した。