スーパーフォーミュラの合同テスト/ルーキードライバーテストではピットから見守った石浦宏明 12月22~23日、静岡県の富士スピードウェイで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同テスト/ルーキードライバーテスト。複数のチームで、12月20日に決勝レースが行われた第7戦とは異なるドライバーが起用されたが、JMS P.MU/CERUMO・INGINGは坪井翔と阪口晴南のふたりがドライブした。では、2020年までのレギュラーだった2015年/2017年王者の石浦宏明はどうなるのか。石浦に聞くと、「2020年でスーパーフォーミュラからは“卒業”します」という言葉が飛び出した。
1981年生まれの石浦は、苦労を重ねながらカートから四輪へステップアップ。2007年に全日本F3選手権でランキング2位につけ、2008年に全日本選手権フォーミュラ・ニッポンにステップアップ。Team Le Mans/Team KYGNUS SUNOCOから4年間Fニッポンに挑戦した。ただ、スーパーGTでは勝利を挙げていたものの、Fニッポンでは勝利を挙げられず、2012年にはそのシートを失っていた。
しかし2014年、P.MU/CERUMO・INGINGのシートをつかみスーパーフォーミュラに復帰すると、2015年の第2戦岡山で悲願の初勝利。さらに、大きなプレッシャーがかかるなか、その年のチャンピオンを獲得。さらに2017年もピエール・ガスリーやフェリックス・ローゼンクビストといった、いまや世界で戦うドライバーたちを相手に2回目のチャンピオンを獲得した。
そんな石浦だが、じつは2020年のはじめに「今年限りでスーパーフォーミュラは止めよう」と決意していたのだという。
「予選Q1をなかなか通過することができないようになってから止めるのは嫌でしたし、まだ表彰台に乗れたりするうちに止めようと思ったんです。今年はQ1は一度も落ちませんでしたからね(笑)。僕も一度シートを失いましたけど、フォーミュラは多くの人が“自然消滅”だと思うんです。その意味で、自分で止めるタイミングを決められる環境にしていただいたのは、本当にありがたいと思っています」
また石浦は「僕が『乗りたい』といえばまだ乗れたとも思うんです。だから逆に、若いドライバーのために居座っているのもな……という感じもしているんです」と若手ドライバーたちのためにシートを空けたいという思いも語った。
「今回、晴南も(宮田)莉朋もパッと乗って速いですよね。僕たちの世代はそんなのは無理でしたから。だから今の若手は、良い世代なんじゃないでしょうか」
スーパーフォーミュラではシートを退くことになってしまったが、「現場にはいると思います。退いたら監督かな、と思いましたが、いらっしゃるんですよね(笑)」と笑う(横にいた立川祐路監督からは「“助監督”だな」という声も)。
とはいえ、もちろんレーシングドライバー石浦宏明としての引退ではない。まだ正式発表はないが、スーパーGTをはじめさまざまなプロとしての活動は続く。“卒業”という表現も「レーシングドライバーとしては引退はしないですからね……。迷いますね」と話しながら出たものだ。
「ありがたいことに、チームの仕事や市販車のお仕事もたくさんありますし、フォーミュラに乗らなかったとしても一年を通じて忙しくなると思います。多方面でチームに貢献できるように頑張りたいと思います」と石浦は笑顔で語った。