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『VS嵐』総合演出が振り返る、“嵐の5人とだからこそ”できた番組づくり 名物企画誕生秘話や思い出深いエピソードも明かす

2020年12月23日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『VS嵐』ロゴ

 12月24日に最終回を迎える『VS嵐』(フジテレビ系)。独自のゲームや嵐とゲストの和気あいあいとしたトークなどで、2008年の放送開始から10年以上にわたり親しまれてきた。リアルサウンドでは今回、そんな番組を立ち上げ、総合演出として携わってきた萬匠祐基氏へ最終回を前にインタビュー。番組スタートの経緯や嵐の魅力、印象深いエピソードなどを聞いた。(編集部)


(関連:V6×嵐、共演する度に“何か”が起こる2組 メンバー揃っての『VS嵐』出演に寄せる期待


■出演者が可愛らしく、チャーミングに見える企画を


ーーまず、萬匠さんがこれまでに関わった番組を教えてください。


萬匠祐基(以下、萬匠):僕は1999年入社で嵐と同期です(笑)。最初は『LOVE LOVE あいしてる』をメインに主に音楽番組のADをやっていました。そのあと3年目にスポーツ局に異動しました。


ーーもともとスポーツ番組志望だったんですか?


萬匠:そういうことでもなかったんですが、ADがとにかく辛くて逃げるように(笑)。大学までずっとラグビーをやっていたこともありまして。ただスポーツ局ではバラエティで培ったものが活きて、すぐディレクターをしたり、色々やらせてもらう機会がありました。それでディレクターをやるのが楽しくなって、遅ればせながらバラエティの華やかな世界でもやってみたいなという思いになりました。


ーーその後に『VS嵐』を立ち上げられたんですね。


萬匠:入社5年目にスポーツから音楽バラエティに戻ってからは『HEY!HEY!HEY!』のADを1年くらい、ディレクターを半年くらいやりました。そのあと28歳の時に先輩の急な異動もあり、『HEY!HEY!HEY!』の総合演出になって(笑)。ディレクターの方々は全員年上で、多分ゴールデン番組では当時最年少の総合演出でした。音楽番組をやっていたこともあって、2007年に初めて『ジャニーズカウントダウン』の総合演出をやりました。それが、嵐が初めて司会をする年で。嵐は当時土曜のお昼、30分枠で番組をやっていたんですけど、『花より男子』もあり人気が出始めていました。年が明けてすぐに上司から電話があって、「4月スタートで、土曜のお昼枠からゴールデンに行けるような嵐の番組を考えなさい」と言われて。それで考えたのが『VS嵐』でした。


ーー『VS嵐』のアイデアは、どういったところから思いついたんですか。


萬匠:僕が担当していた『HEY!HEY!HEY!』の裏で『フレンドパーク(関口宏の東京フレンドパークII)』が放送されていたんですよ。当時、そういうアトラクションやゲームをやる番組が『フレンドパーク』くらいしかなかったので。あとゲームだと、トーク番組や演技をしている時には見られないような、素の熱のある顔が見えるんじゃないかと。魅力的なゲームを開発して、嵐の皆さんが豪華ゲストの皆さんと対決する、という内容ならゴールデンを目指せるんじゃないかなと思いました。ゲームはその時点で、もう4つくらい思いついていて。最初は土曜のお昼でしたけど、最初からゴールデン帯を意識していたので時間帯には合っていなかったかもしれません(笑)。


ーー当時浮かんでいた4つは今もあるゲームなんですか?


萬匠:クリフクライム、フォーリングパイプ、ローリングコインタワー、もう1個は今はやってないんですけど、キャッチングブリッジ。コインタワーははたまにやっていますし、クリフクライムはバージョンアップして今もまだ続いています。


ーーアトラクションはもちろん、「BABA嵐」、最近だと「クイズ松本潤」「Mr.VS嵐」なども名物企画になっています。こうした企画はどんなふうに考えていったんでしょう?


萬匠:「BABA嵐」は、嵐のメンバー同士で対決をする時に、ババ抜きをやってみたところとても面白かったので、「特番に投入しよう」とすぐ提案しました。嵐の皆さんは最初「手ごたえ感じるの早すぎない?! 本当に大丈夫?」という反応でした(笑)。アトラクションでかっこよく登っている姿もそうですし、ババをひいちゃうシーンなど、どの企画を考えるにしてもとにかく出演者の方が可愛らしく、チャーミングに見える方が良いなとイメージして作っています。


ーー「クイズ松本潤」はいかがでしょう。


萬匠:松本さんが映画の番宣でゲストチームとして登場した回に、松本さんを主役にしてゲームができないかなと思ったんです。その時は番組が始まって10年くらい経っていて、関係性もできつつある頃で。松本さんは、常人では貫き通せないような芯を持っているというか。正しいことではあるんですけど、「あ、それ言うんだ」というのが面白かったりもするし(笑)。それを見てクスクス笑っている他の4人の姿だったり、4人にしかわからない松本さんの素顔が見えるのも良いなと思ったんです。嵐の4人以外はなかなか松本さんをいじれないじゃないですか(笑)。


ーー(笑)。SNSを見ていても楽しんでいるファンが多いなと感じます。「Mr.VS嵐」はどんな経緯で思いついたんですか。


萬匠:相葉(雅紀)さんが以前、「メンバー同士で対決したら面白いんじゃない?」と言っていたことがあって。いつか実現したいなと思っていたのが始まりです。僕は小さい頃から野球が好きで、ドラフト会議もやりたいなと思っていて。


ーーなるほど。そこでスポーツが活かされるんですね。


萬匠:真剣なドラフトの形式の中で、チームメンバーを選んだら面白いだろうなと。収録をやってみると僕が思っている以上に、5人だけでなく、チームメンバーも含めて、いつもの5倍くらい真剣に対決してくれるので、すごく熱がある対決になりました。賞金や賞品ではなく、ただ名誉をかけて戦う。12月3日の放送では、大野さんが今までに見たことないくらい真剣に戦ってくれていました。


■嵐は何をするにしても誠意ある姿、言葉を届けてくれる


ーーこうした企画だけでなく、オープニングトークもいつも面白いですが、テーマはどのように決めているんですか。


萬匠:嵐って、スーパーアイドルですけど、いわゆる芸能人っぽくない、本当に一般の人の感覚を持っているんです。だから、視聴者の皆さんにも身近に感じてほしいなと。視聴者が「自分はこうだけど、嵐はこうなんだ」って、比べられるような内容になったらいいなと考えています。「好きなアイスクリームなんですか?」とか(笑)。彼らの中学生、高校生時代はすでに一般の方とは少し違った人生ですけど、小学生の頃の話とかは視聴者と同じ経験をしているはずなので、そういう思い出話も共感して見てもらえるのではないかと思い、盛り込むようにしていました。


ーープラスワンゲストや対戦相手などのキャスティングを考えるときのポイントはありますか?


萬匠:“共通の言葉がある人たち”ですかね。控え室でも楽しいチームがいいなというイメージです。チームワークというか、仲良くやって欲しいので、例えば、同い年の年男・年女のチームだったり、お土地柄が出やすい地域の同じ出身地括りだったり。ゲームでのチームワークもそうですけど、トークもそのほうが楽しくなるかなと思っています。


ーーゲームがメインの番組ではありますけど、合間のトークがキモになっているなと思います。


萬匠:ゲームがあるから、トーク番組で投げかけるような質問とは違う、もう少しライトな質問ができるというか。「ゲームのついでに喋ります」くらいの方が、聞き出せることがあるし、柔らかい雰囲気でゲストも話しやすいのかもしれません。


ーーまもなく最終回ですが、改めて振り返ってみて特に思い出深いエピソードは?


萬匠:ハワイで撮影した回(2014年/『祝!嵐15周年記念VS嵐 ハワイで大野が泣いちゃったSP』)はやっぱり印象的ですね。15周年ライブの翌日に『VS嵐』のロケができたのですが、ライブの緊張感から解き放たれた初日だったので、本当に“慰労会”というか。トークテーマも実を言うと、こちらで色々用意はしていたんですけど、持っていたカードは何も切りませんでした。デビュー当時の思い出など、そんな話聞けちゃうんだということが聞けたので。まさか、リーダーが泣くなんて思っていなかったですし(笑)。大野さんって、画面を通しても、普段も、あまり感情を表に出すタイプではないので。当然メンバーの皆さんは知ってる一面だったと思いますけど、10年近く一緒に仕事をしている僕らスタッフでもそういう姿を見る機会がなかったので、すごくびっくりしたというか。とても思い出深いですね。


ーー先日の『第2回VS嵐王2時間SP』でも触れられていましたが、伝説的な回ですよね。


萬匠:そうですね。だから、なるべく変な手を加えたくないな、嵐5人のドキュメントを演出しないで、そのまま素でお届けしたいなと思いました。最近で言えば、緊急事態宣言が出て、観客どころかゲストも呼べない、スタジオに入る人数も限られる状況になったときです。他の番組は再放送や総集編をやっていたんですけど、嵐は今年で活動休止ですし、4月、5月のタイミングで総集編を出すのは違うかなと思っていたのと、こんな時期だからこそ、毎回新しい『VS嵐』をお届けするのが使命だ、という思いもあって。そこで「リモート嵐-1グランプリ」を提案したんです。そうしたら、すごく前向きに乗ってくれて。その段階ではまだ詳細が見えるような内容をお伝えできなかったんですけど、嵐も新しい『VS嵐』を毎週やりたい、と乗ってくれたのはすごく印象的ですね。


ーーリモート収録がまだ一般的でなかった、早い段階で決断されたんですね。


萬匠:あとは番組開始当時に最初に『VS嵐』のセットを見に来たとき、相葉(雅紀)さんが「すごいセットですね!」と言ってくれたのを覚えています。あとは初回収録が終わった後に、二宮(和也)さんが手ごたえを感じてくれたのか、「面白かった?」って聞いてくれて(笑)。当初は土曜のお昼の番組でしたが、ゴールデンでも2回ぐらいスペシャルができて。ずっと『HEY!HEY!HEY!』をやっていたので、ゴールデン特番自体は経験があったんですけど、嵐と土曜の昼にゼロから立ち上げた番組が、特番になり、ゴールデンでレギュラー化するというのがすごく嬉しかったです。


■番組スタッフの目に映る嵐5人の印象と魅力


ーー一緒に番組をやってきた萬匠さんの立場から見て、改めて嵐というグループの魅力はどんなところにありますか?


萬匠:結成21年になりますが、ずっとファンや見ている方を裏切らない。何をするにしても、誠意ある姿、言葉を届けてくれるのは凄いと思いますね。5人それぞれが魅力的なんですけど、互いを尊重しあって、良いフィルターが5枚重なって、良いものが絞り取れているというか。21年間の相乗効果で、他にはない大きな存在になっているのではないでしょうか。


ーー誠実さというのは、画面を通して見ていても感じます。では、メンバー一人ひとりの印象はいかがですか?


萬匠:櫻井(翔)さんは“スーパーコンピューター”のようです(笑)。何を聞いても、「何年の何々でこんなことだった」というエピソードがすごいスピードで処理されて。よくそんなにすぐ出てくるなと驚きます。ニュース番組では真面目な姿を見せてくれますけど、バラエティでは全く違う姿を見せてくれる。どの現場でも全力なんだろうなと感じます。真面目なんですけど、柔軟に面白いものを突き詰めてやってくれるし、我々スタッフのやりたいことを汲んで良い形に進行してくれます。


ーー一言で片付けてしまうのも申し訳ないですが、“プロ意識”の賜物ですね。相葉さん、二宮さんはいかがでしょう。


萬匠:相葉さんは、本当にきれいな心を持った人という印象です。すごく優しいというか、年齢的にこの言い方で合っているかわかりませんが、天使のような人だなと。13年間ゲームもいつまでも新鮮な目の輝きを持って全力でやってくれていますし、ピュアだからこそ普通は考えもしないような微笑ましい天然ボケで笑わせてくれます(笑)。気遣いの人でもあるので、全く問題ないのに、「さっきこういうこと言っちゃったけど、まずかったかな」と気にかけることもあったり(笑)。


 二宮さんは、的確なツッコミをしてくれる方です。テレビを見ている方が「いや、それ違うでしょ」と思うであろうことを代弁してくれるというか。アイデアも出してくれます。ゲームをシミュレーションしている段階や、収録の際も「こういう風にしたら面白くなるんじゃない?」とか。あと嵐メンバーそれぞれの個性をファンや視聴者にわかりやすく明確にしたのは二宮さんの言葉の力が強いと思います。


ーートークには欠かせない存在ですよね。松本さんはどうですか。


萬匠:ドキュメンタリー『ARASHI’s Diary -Voyage-』などを見ていると、プロデューサー/演出家としての真剣でストイックな姿が多いんですが、『VS嵐』では嵐のメンバーにもいじられて、我々番組スタッフもいじらせていただいて……という感じです(笑)。4人といる楽しそうな松本さん、というのが良いと思います。あと櫻井さんが松本さんを「イケメンのハブ空港」なんて命名したこともありましたが、豊富な芸能界の人脈から生まれる面白エピソードが番組を盛り上げてくれます。松本さんの真っ直ぐで律儀な性格が人を惹きつけるんだろうなと思います。


ーーでは最後に、大野さんはいかがですか。


萬匠:大野さんは、ゲームもそうですが、本当に何でもできる方です。大野さんの真剣な顔って、なかなか他の番組では見られないところだと思うので、そういう表情が見られるのはすごく良いなと思います。あと、大野さんが笑っていると、こっちも嬉しくなるというか。だから、『嵐にしやがれ』とかを見ていて、大野さんが楽しそうにしていると、ちょっとジェラシーを感じるのと同時に、「楽しそうで良かったな」と思うところもあったりして(笑)。勝負どころでは、大野さんのパフォーマンスが鍵になることもあります。トークでは言葉数が少ないかもしれないですけど、キラーワードを言ってくれる。一撃必殺なところがあるのかなと思います。


ーー萬匠さんが『VS嵐』を通じて得たことはありますか。


萬匠:嵐の皆さんがホストであるが故に、俳優やアスリート、アーティストなど色々な方に出演していただくことができて、すごく嬉しいことだなと思います。嵐のおかげで、長い間番組を続けることができました。実は『VS嵐』は美術や技術含め、スタッフが最初からほぼ変わっていないんです。だから、阿吽の呼吸でクオリティの高いことができる。それは今後も番組を作っていく上での自分の財産になるんじゃないかと思います。嵐は5人が尊重しあったり、柔軟な思考も持っているので、互いの良いところが合わさり、混ざり合って、21年間の相乗効果ですごいグループになっている。彼ら5人が魅力的だから、僕らも、他の現場のスタッフもそうだと思うんですが、それに引き込まれて、「嵐5人とだからこそ」のハイクオリティなライブや番組になっているという印象があります。


ーー来年からは新たに『VS魂』がスタートします。注目ポイントを教えてください。


萬匠:1月3日の生放送で『VS魂』のメンバーを発表しようと思っていますので、それがまず大きな見所だと思っています。セットはもちろん、ゲーム内容も『VS嵐』ではなかったものを考えていますので、新しい対決を楽しみにしていただきたいです。引き続きご一緒させていただく相葉さんと力を合わせて、新しいメンバーともに楽しい番組をお届けしていきたいと思っています。ただ、まずはなにより12月24日嵐5人のVS嵐最終回4時間生放送スペシャルにご期待ください!!(リアルサウンド編集部)