2020年12月20日 08:51 弁護士ドットコム
選択的夫婦別姓をめぐり、夫婦同姓を定めた民法の規定について、最高裁大法廷が「合憲」と判断してから5年。ふたたび最高裁が憲法判断を下すことになった。
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夫婦別姓の結婚姻届が受理されないのは憲法に反するとして、都内の事実婚夫婦3組が訴えている家事事件について、最高裁は12月、15人の裁判官全員による大法廷で審理することを決定した。
選択的夫婦別姓を求める声は年々、大きくなっており、2015年の最高裁判決以降も、複数の訴訟が起こされている。今回の最高裁大法廷では、どのような論点から審理されるのだろうか。
複数起こされている選択的夫婦別姓訴訟の1つで、婚姻時に夫婦が別姓を選べない戸籍法は憲法に反するとして、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久さんら4人が国を訴えている訴訟の原告代理人をつとめている作花知志弁護士に聞いた。
2015年の最高裁が憲法判断した際と異なる点は?
「2015年12月16日にあった最高裁大法廷判決から、ちょうど5年になります。ふたたび大法廷が、民法750条の夫婦同氏義務付規定について、憲法判断をおこなうことになります。加えて、事件では民法750条に関して、婚姻届の手続きを定めている戸籍法の規定の違憲性の主張もされていることから、同規定についての憲法判断もおこなわれることになります」
大法廷で審理されることの意義は?
「この5年間で、それまでも指摘されてきた問題が、特に大きくクローズアップされたり、新しく問題が生じたりして、次の社会事情の変化があったといえます。
・結婚に際して『氏』を変える不都合があること、96%の夫婦で女性がその不都合を受けること
・パスポートで旧姓併記すると外国の渡航先でトラブルになる報告がされていること
・氏を変えたくないために結婚自体をしない方がおり、それが少子化の一因となっていると指摘されていること
・世論では選択的夫婦別姓に賛成の方が多数となっていること
・特にこれから結婚をされる若い世代で多数意見が多いこと
・地方議会から国会に対して選択的夫婦別姓を求める意見が多く出されていること
これらの社会事情の変化を最高裁がどのように考えて大法廷に回付したのか、そこでどのような新しい判断をしようとしているのかが問題だと思います。
2015年の大法廷判決では、選択的夫婦別姓も合理的な理由があり、それを導入するかどうかは国会の役割であるとの判示がありましたが、その後5年経過しているのに、国会で導入されませんでした。
ある意味で、選挙権訴訟のように、裁判所が国会の動きに業を煮やして新しい判断をおこなう可能性もあると思います」
この決定が、作花弁護士たちが現在、最高裁に上告している選択的夫婦別姓訴訟に与える影響は?
「実は、今回の最高裁大法廷回付について、先日、あるマスコミの方とお話をさせていただく機会がありました。その方から伺ったのは、次のような話でした。
『今回の最高裁大法廷への回付は、民法の審理を最高裁大法廷でするためというよりも、戸籍法について判断するために、あえて大法廷に回付したのではないか』
民法については、5年前に最高裁大法廷で判決が出ていますが、戸籍法についての判断はまだ出ていません。
その意味で、私たちが訴えている戸籍法上の選択的夫婦別姓訴訟も、大法廷に回付されて今回の事件と同時期に判断される可能性が考えられます。私としては、そのようなことが実現されることを期待しています」
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/