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「決して好待遇ではないですが……」パソナの淡路島"新卒1000人契約採用" 広報に改めて意義を聞いてみた

2020年12月19日 00:10  キャリコネニュース

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パソナグループは来年4月、新型コロナで仕事に就けなかった新卒未就労者1000人を契約社員として採用する。契約期間は最長2年。キャリアブランクを作らずに働きながら、ビジネスの基礎や社会人の教養を身に付けられる。

「ギャップイヤープログラム」と銘打った今回のプログラムでは、同社が本社機能の一部を段階的に移転している淡路島(兵庫県)で週30時間のシフト勤務をこなす。希望者は就業後に、同社運営の「日本創生大学校」で社会人の基礎や教養、文化芸術活動などを学ぶこともでき、働きながら自らの可能性を広げるスキルを習得できる。

週30時間勤務で給与16万6000円、そこから寮費、食費などが天引き


応募者のエントリー受付は12月15日にスタート。オンライン説明会を経た後、適性検査、面接試験などを経て採用となる。

広報担当者は、キャリコネニュースの取材に「これまでにも多くのお問合せが寄せられています」と答える。応募を検討段階の学生からの問い合わせが大半で、リリースの中身を確認するような内容が多いという。

給与は、大学院、大卒で16万6000円。短大卒、専門卒で16万1000円。高卒で15万6000円。昇給はなく、ボーナスの支給もない。希望者は社員寮と食堂を利用することができ、その場合は寮費として月2万6000円、食費として同5万4000円が天引きされる。

さらに、任意の「日本創生大学校」で講座を受講する場合は同2万8000円がかかる。これらに加え、社会保険料や住民税(2年目以降)などがかかることから、ネット上では「残った手取り額が少なすぎる」といった声もみられた。

こうした指摘に担当者は「週30時間勤務というのもありますが、初任給で他企業と横並びにみても、決して好待遇ではないと思います」と答える。だが、プログラムの目的は、学生に高給を支払って、労働力を確保することではないという。

「会社によっては、キャリアブランクを嫌う傾向があります。今回のプログラムは、就職困難な学生に対し、不合理な扱われ方をしないように支援する目的があります」

担当者は、就業経験を積みながら社会人の基礎や教養を学べることが、同プログラムの"ウマみ"と表現し、目先の待遇でなく「2年後に巣立つ準備をしたい」と将来のキャリアを見据えている学生の応募を想定しているという。

期間終了後は「他企業の新卒3年目と同等か、それ以上に成長していると思います」

就業場所は、グループ各社の施設や事業所。業務内容は農作物の収穫・販売から、給与計算や契約書作成といった事務業務まで多岐にわたり、中には接客やデジタルマーケティング、Web制作といった実践力が求められる業務もある。

配属については、希望のヒアリングはあるものの、基本的には適正を見極めた上で決める。さらに、2年間の間でポジション異動がある可能性もあるという。

契約期間が終わる3年目以降に関して、同担当者は

「他企業の新卒3年目と同等か、それ以上の知見を持つように成長していると思います」

と話す。同プログラムについて「あくまでも2年後に巣立つことを前提とした取り組み」とした上で他企業への就職や起業を想定しているほか、学生側と受け入れ側のニーズが合えば、将来的に同社で働く道も「閉ざすつもりはありません」としている。

同社は、グループ全体のテーマとして"地方創生"を掲げており、今回のプログラムもその一環。「優秀な人材が世の中に増え、UIJターンなどを通じて、地方で企業することでさらに活性化する。そういう人材を増やすことがゴール」と語る。さらに同社にとってのメリットを聞くと、

「漠然とでも『地方で活躍したい』という思いを持つ学生が、弊社の一部業務を経験し、研修を通じて学ぶことで全国に羽ばたいてもらい、定着することです」

と答えた。同社で学んだノウハウが生きて、5年後、10年後にでも一つのビジネスモデルをつくり出していれば「我々としては喜ばしいこと」としている。

また、今回は上限1000人と例年にないほどの大きな採用枠を設けたことから、大勢の人と仕事を行うこと、関わり合うことで「アイデアなどの化学反応が起こるかもしれない」と期待している。こうした"化学反応"がビジネスの種になることも見込んでいるようだ。

担当者は「成長意欲のあること、チャレンジ精神のあることが前提になります」と応募者に呼び掛ける。

「仕事なので、いつも楽しいわけではないと思います。大変な思いをしつつも『いつかはブレイクスルーしたい』という思いを持って、先を見ている方に来てほしいです」