12月15日にLMDh規定でのスポーツカーレース復帰をアナウンスしたポルシェは、2023年のプログラム開始後にLMDhマシンをカスタマーチームに供給することに興味を持っている、と同社のファクトリーモータースポーツ部門の責任者であるパスカル・ズーリンデンは述べている。
ポルシェが行うプロトタイプレースプログラムの詳細はまだ確認されていないが、ズーリンデンはSportscar365に対し、ポルシェはファクトリベースのメインプロジェクトに加えて、顧客向けのクルマの生産を目指していると語った。
同氏のコメントはアウディのモータースポーツ責任者を務めるユリウス・シーバッハと同様のもので、シーバッハもまたワークスプログラム用とプライベーターであるカスタマーチーム用、両方のクルマを導入したい考えであることをSportscar365に伝えている。
「1980年代、90年代のポルシェモータースポーツの歴史を見てみると、カスタマーチームがトップクラスに存在し、ワークスチームと戦い最大のレース(ル・マン)で勝利を収めることさえ当たり前の光景だった」とズーリンデン。
「ポルシェが勝てば私たちはハッピーだ。だから今回のプロジェクトでは我々の伝統的なDNAに戻ることができる」
「LMP1と比べてマシンの構造がシンプルでコストが低いため、チームがレーストラックにマシンを持ち込むのは簡単だと思う」
ポルシェのLMDhマシンはWEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権というふたつのシリーズにフル参戦することが可能となるが、2017年限りでLMP1クラスから退いたドイツメーカーが両シリーズにワークス体制で参戦するかどうかは決まっていない。
「IMSAとWECで同じマシンを走らせることができるため、私たちはプロトタイプレースに復帰することにした。そして我々は2023年に両方の選手権にフルシーズンエントリーするつもりだ」
どちらもファクトリープログラムになるのか、という質問に対してズーリンデンは「それはまだ評価中だ。ワークスプログラムでも、ワークスとしてカスタマーをサポートする体制でも可能である」と述べた。
また、同氏はメーカーのプログラムとカスタマーの努力がミックスされる可能性があることで、トップカテゴリーに相当数の台数が加わることを期待しているという。
「今後6カ月の間にビッグネームが登場することを期待している。自動車メーカーの数が多ければ多いほど良い。LMDhはプライベートチームにも総合優勝を争うチャンスを与えるからね」
「10台から15台がグリッドに並べば、良いレースをするのには充分な数だと考えている。だが、それがもっと大きくなる可能性もある」
「我々はこのコンセプトに確信を持っている。何年もの間、IMSAのDPiクラスは最高レベルのレースがコストを抑えながらできることを証明してきた。現在のモータースポーツは、コスト効率を最大限に高めることが求められている」
「LMDhのコンセプトによって、ポルシェはブランドのDNAである耐久レースを継続的にアピールすることができる。すべてがフィットしているんだ」
■まもなくシャシーパートナーが決定
ズーリンデンはポルシェが「今後数週間から数カ月の間、2021年初頭までにLMP2のシャシーサプライヤーを決定する予定」だと説明した。
“耐久の雄”が行うプロジェクトにおいてこの側面が確認されれば、ポルシェは次の数カ月の間に技術的な決定を行うことができるだろう。
「次のステップは(オレカ、リジェ、ダラーラ、マルチマチックの4社から)パートナーを決定することだ」
「好みはあるが、まだ決まっていない。この決定を基に我々はロードマップを構築することができる」
「そのための最初のステップがパートナーを選ぶことなんだ」
一方、ドイツメーカーのエンジン選択は“最終段階”にあり、ズーリンデンはロードカーに搭載されているユニットがベースとなる可能性を示唆した。
「ポルシェのスポーツカーを見てみると分かるとおり、当社にはパワフルなエンジンがたくさんありLMDhマシンに搭載するのに最適なユニットがどれなのかを評価している」
「いまは最終的な評価を行っている段階だ。しかし、これまで述べてきたように我々にとってはコスト効率が重要だ。その点、ロードカーベースのエンジンは費用対効果が高いことを付け加えておく」