2020年12月16日 16:22 弁護士ドットコム
GoToトラベルが全国で一時停止されるなど、新型コロナ感染拡大が深刻な状況となり、マスク着用や手指の消毒などの対策が、改めて呼びかけられている。ところが、そんな対策をあざ笑うかのようなツイートが波紋を呼んでいる。(監修:濵門俊也弁護士)
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「事務所の受付に置いてある来客用の消毒液、こっそり中身を捨てて、水に入れ替えておきました。みんなの安全を考えて」というツイートが12月15日に写真付きで投稿された。
写真からは、消毒液の入った容器をひっくり返して中身を捨てた上で、空となった容器に水を詰めているように見える。なお、ツイートしたアカウントはすでに削除され、ツイートも閲覧できない状態だ。
このツイートに対して、ネットでは「タチ悪すぎ」「コロナでも風邪でも消毒自体は有用でしょ」「業務妨害にならないの?」など批判が殺到している。
なぜこのような行為に及んだのか。投稿者の真意は不明だが、水を手指に霧状で吹き付けても、消毒液と同じような効果は得られないと考え、来客が手指を消毒しようとするのを阻もうとしたのかもしれない。
いずれにせよ、勤務先に置かれている消毒液を捨てる行為は、他人の財物の効用を害するものとして、器物損壊罪が成立する可能性がある。
また、来客用の消毒液は勤務先の業務で使用されているものであり、それを捨てれば、勤務先としてはあらためて消毒液を用意する必要に迫られるなど業務遂行に支障が生じ得ることから、偽計業務妨害罪が成立する可能性もある。
刑事責任とは別に、捨ててしまった消毒液と同額程度(さらに、立証できれば、業務に支障を来した場合、支障を来さなければ得られるはずであった営業利益等)の民事上の損害賠償責任や、勤務先の備品を故意にダメにし、業務に支障を来したことに対する懲戒処分などを受けることも考えられる。
「消毒液はコロナ対策にならない」と考えることも、その信念を実践するため消毒液を使わないことも本人の自由だ。しかし、それを自分以外の人にも求めようと今回のような行為をすれば、法的な責任が発生する可能性があることを忘れてはならない。軽率な行為は慎むべきである。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/