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錦織さん、植草さんはジャニーズ退所後も「少年隊」を名乗れる?

2020年12月16日 10:01  弁護士ドットコム

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デビュー35周年を迎え、12月12日にベストアルバムをリリースした「少年隊」。ジャニーズ事務所で最長の活動歴を持つグループですが、その活動に事実上のピリオドを打つ日が近づいています。


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ジャニーズ事務所は今年9月、「少年隊」を構成する3人のうち、「ニッキ」こと錦織一清さんと「カッチャン」こと植草克秀さんが12月31日をもって退所することを発表しました。もう1人のメンバーである「ヒガシ」こと東山紀之さんは事務所に残るようです。



もっとも、これまでの功績とメンバーの意向を尊重する形で、今後もジャニーズ事務所の所属グループとして「少年隊」の名を残すことを明らかにしています。



事務所側は「今後、グループとしての活動の予定はない」としていますが、錦織さんや植草さんは退所してもこれまでと同じように「少年隊」を名乗ることはできるのでしょうか。そもそも、「少年隊」のグループ名は誰のものなのでしょうか。芸能法務にくわしい河西邦剛弁護士に聞きました。



●「少年隊」はジャニーズ事務所が商標登録しているが…

——グループ名に関する権利は、法的にはどのように位置づけられているのでしょうか。



アイドルやバンドなどのグループ名についての権利は、まず商標登録されているか否かによって異なります。



商標というと、「PRADA」「GUCCI」などのブランド名をイメージしたり、「SONY」「TOYOTA」などの企業名をイメージされる方も少なくないかと思います。



一言でいうと、商標の役割というのは、提供者を明示してその品質を保証できるようにするというものです。



たとえば、「SONY」というマークが付いているテレビは、まさにあの伝統企業の「SONY」が製造したテレビだと消費者は認識するわけで、第三者が勝手に「SONY」というマークを付けることは商標法違反になるわけです。



——「SONY」が商標登録されているからですね。「少年隊」についてはいかがでしょうか。



グループ名も商標登録することができます。実際、特許庁のウェブサイトで確認すると、「少年隊」は株式会社ジャニーズ事務所により商標登録されています。



そして、この提供者を明示するという商標の機能を考えると、たとえば、コンサートのタイトルに「少年隊」という記載があれば、そのコンサートはジャニーズ事務所が提供するコンサートだと認識できることに商標としての意味があることになります。



——「少年隊」のグループ名は、ジャニーズ事務所のものということでしょうか。



たしかに、「少年隊」についての商標権はジャニーズ事務所が持っていますが、「商標権をもっている」=「グループについての名称を独占できる」という意味ではありません。



——商標権をもっていても独占できないのはなぜでしょうか。



商標権というのは特定の範囲にしか及びません。



特許庁のウェブサイトによれば、ジャニーズ事務所によって商標登録されている「少年隊」は、「演芸の上演、演劇の演出又は上演、音楽の演奏」という範囲で登録されています。



したがって、たとえば、ジャニーズ事務所以外の誰かが「少年隊」というバイクを製造販売することは、必ずしもジャニーズ事務所の商標権を侵害することにはなりません。



——登録されている範囲にしか権利が及ばないということですね。



また、グループ名や芸名については、商標とは別の問題があります。



●退所合意書に「グループ名の使用」について明記されている場合も

——商標以外の問題とはどのようなものでしょうか。



タレントが芸能事務所を辞める時には、芸能事務所とタレント側との間で退所合意書を作成し、辞めるメンバーが今後も所属していたグループ名を使用できるか否かが記載されていることがあります。



特に、タレントが芸能事務所を円満退所する場合には、ほとんどのケースで退所合意書は作成されます。



したがって、錦織さんと植草さんが、退所後にこれまでと同じように「少年隊」を名乗ることはできるかどうかは、退所合意書の内容次第になります。



——退所後のグループ名使用について、具体的にはどのような記載があるのでしょうか。



今回の詳しい内容はわかりませんが、「退所したタレントがグループ名を使用したい場合には、その都度、芸能事務所の書面による許可を得ること」とされている退所合意書は、多々目にしてきました。



●「グループ名の使用」、公平な在り方を模索してはどうか

——「少年隊のグループ名は●●のもの」と、一概には言えないということですね。



たとえば、「モーニング娘。」や「AKB48」のように、メンバーが時とともに変遷するのか否か(場合によっては結成時のメンバーが誰も残っていない)、誰が命名したのか、などの事情によっても、グループ名についての権利を誰がもつのかが変わってきます。



芸能事務所とタレントとの契約書においては、ほぼ一様に芸能事務所がグループ名についての権利をもつことになっているものが多いです。



ただ、これに関しては近年様々な裁判所の判断がなされており、グループ名は芸能事務所ではなくアーティストサイドに帰属するという裁判所の判断もあります。



グループ名というのは、メンバーの活動ありきのもので、同時に芸能事務所のマネジメントがあるからこそグループが育成され価値が上がっていくのは事実です。さらに、活動の歴史の中でメンバーやファンの様々な思い出や感情も詰まっているものだとは思います。



ですので、芸能事務所サイドでもメンバーサイドでも特定の誰か一人がグループ名を独占するというのではなく、芸能事務所やメンバーも共有して使用できるようになるというのが公平な在り方かとは思います。




【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。アイドルグループ『Revival:I(リバイバルアイ)』のプロデューサー。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/