2020年F1第17戦アブダビGP決勝レースは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポール・トゥ・ウイン、アレクサンダー・アルボンも3位ルイス・ハミルトン(メルセデス)に肉薄しながらの4位入賞を果たした。今季はずっとメルセデスの厚い壁に阻まれ続けたシーズンだったが、最後に一矢報いた形となった。
レッドブル・ホンダはこの1年で、最大のライバルにどこまで近づくことができたのか。今回の勝利についてホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターは、「あくまで今年のこのサーキットのコンディションで上回ったという、非常に限定的な意味」と慎重な物言いに終始したものの、それでも来季に向けての確かな手応えを感じているようだった。
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──まずは最終戦を振り返ってください。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):フェルスタッペンがポール・トゥ・フィニッシュで優勝、1年間をいい形で締めくくることができました。ただ終わりよければすべてよしと言いますが、チャンピオンを獲って終われなかったことには、まだまだ王者メルセデスには敵わなかったことを胸に刻む1年になりました。
来季はホンダ参戦最後の1年になりますが、悔いのない形で1年後の最終戦を迎えたいと思います。終わりよければすべて良しの1年にするべく、明日から開発に集中したいと思っています。
──メルセデスはMGU-Kに問題を抱えて、抑えて走っていたという情報もあります。田辺さんは今回の勝因を、どう分析していますか。
田辺TD:メルセデスが実際にどうだったのか、私たちにはわかりません。いつも言ってることですが、信頼性、戦略なども含めた総合的なパッケージとしてメルセデスを上回ったということなんでしょうね。ただ、あくまで今年のこのサーキットのコンディションで上回ったという、非常に限定的な意味です。
──結果的にスタートからチェッカーまで首位を走り続けたレースになりましたが、田辺さん自身はどんな気持ちでレースを見守っていましたか。
田辺TD:スタートで2台を抑えて1コーナーに入って行った時点で、ひとつホッとしました。ただ向こうは、2台で攻めてくる。序盤から徐々に離していったわけですが、戦略を分けてくる可能性はあった。その可能性がある限りは、一段落はできなかったですね。
SCのタイミングでタイヤ交換して、そこで戦略が固定された。そこでもう一段落。そこからタイヤが保つかという不安要素はありましたが、安定したペースで2台を離していけた。ラップタイム差とマックスの走りは安心できるものでしたが、パワーユニットは生き物で最後まで何が起きるかわからない。なのでゴールを切った瞬間に、本当にホッとしました。
──今回はメルセデスに勝てましたし、シーズンを通してレッドブル・ホンダは着実に進歩してきたと思います。シーズン序盤から今まで、対メルセデスでどれだけ差を詰められたと考えていますか。
田辺TD:けっこう近づいた、という感じでしょうか。
──それはスタート地点が、あまりに酷かったからということですか。
田辺TD:レッドブルに、そう言っておきますよ(笑)。まあその意味でいうと、開幕数戦の状況、そこから中盤に移って一歩近づき、終盤でさらに一歩近づいた。そうやって近くには来ました。去年から今年にかけてのオフシーズンを見た時、メルセデスと他チームの進歩には差があった。それを見るにつけ、今年から来年にかけても相当頑張らないと、追いつけ追い越せというわけにはいかないと思っています。