2020年12月15日 10:02 弁護士ドットコム
「母の散財を止める方法を教えてください」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
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相談者の母親は、父親の収入のほとんどを買い物で使い、カードローンも利用しているという。
母親に悩まされてきた相談者の家族は、これまでも散財を止めるべくカードを解約させるなどしてきた。しかし、そのたびに母親は新たに父親名義のカードを作り直し、結果的にいたちごっことなっていた。
父親も定年退職したため、このままの状態が続くことに相談者は不安を抱えているという。強制的に散財をやめさせる方法はないのだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。
——母親の借金や散財を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。
家族で母親を常に監督して、散財しないようにさせるというのが一番シンプルな方法ですが、家族にも生活がありますので、なかなか監督しきれないのが実情でしょう。
そうすると、母親が父親名義のクレジットカードを新規に作成・利用できないようにするという方法を選択するのが、現実的な解決方法かと思われます。
——具体的にはどうすればよいのでしょうか。
クレジットカードやカードローンの申し込みをすると、一般的にカード会社や金融機関は審査をおこないます。審査に用いられるのが「信用情報」というものです。
過去に債務整理手続をおこなっていたり、支払いを滞納したといった情報が信用情報として登録されていると、審査が通りません。いわゆる「ブラックリスト」に入っている状態です。
そこで、今回の相談者のお父さまが意図的に支払いを延滞し、信用情報の登録をさせるという方法が考えられます。ただ、デメリットとして、長期間にわたって信用情報として残ってしまうため、必要な借り入れやローンを組むことができなくなってしまうという点です。
——「ブラックリスト」に自ら飛び込むということですか。力技という感じもします。
そこで、信用情報を傷つけずに借り入れできない状況にする「貸付自粛制度」を利用するのが望ましいです。
この制度は、2019年3月29日から始まったものです。本人または法定代理人などが日本貸金業協会に申告することで、貸付自粛情報が信用情報に登録され、意図的に借り入れができない状況になります。
デメリットは、基本的に登録してから3カ月間は登録の撤回ができず、本人が急に借り入れを必要とする場合であっても、借り入れができなくなる可能性があるということです。また、借り入れ先次第では借り入れができてしまう可能性が残っています。
とはいえ、何もしないよりはマシですので、検討してみる価値はあると思います。
——家族が散財をやめないというケースは今回に限られる話ではなさそうです。
買い物がやめられないという方は、依存症である可能性があります。その場合、医療機関での治療が必要です。ご家族の協力により、専門外来で診てもらい、本人に治療を受けてもらうというのも重要でしょう。
【取材協力弁護士】
鈴木 淳也(すずき・じゅんや)弁護士
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。
事務所名:鈴木淳也総合法律事務所
事務所URL:https://law-sj.com/