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IZ*ONE、新作『One-reeler / Act IV』で見せた12人の“物語” 日韓でのスタイルの違いも鮮明に

2020年12月14日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

IZ*ONE『One-reeler / Act IV』

 日韓で圧倒的な人気を誇るガールズグループ・IZ*ONEが2020年12月7日、韓国で4枚目となるミニアルバム『One-reeler / Act IV』をリリースした。


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 新作を出すたびにサウンドのクオリティの高さが評価されてきた彼女たちだが、本作でも相変わらず高品質な楽曲が多く収録されており、先日開催された『Melon Music Awards 2020』での出演ステージを観ると、パフォーマンスとビジュアルもさらに磨きをかけたようだ。


 アルバムのタイトル名になった「One-reeler」は、日本語にすると「短編映画」。12人のメンバーの美しい青春と成長の歩みを映画のワンシーンのように表現したいという思いが込められている。“Color of Youth(私たちの青春と美しい瞬間)”、“Becoming One(お互いがお互いを通じて初めてわかる「私たち」という意味)”、“Stay Bold(一緒にいると最も華やかに輝く私たち)”という3つのシーンに合わせて作った計6曲は、いずれも過去の作品に比べて切なさの度合いが高く、ドラマチックなアレンジが際立つ。


 その最たるものがオープニングを飾る「Mise-en-Scène」だ。曲名はフランス語で「演出」を意味するが、愛する人とともに映画のようなシーンを作りたいという気持ちを綴った歌詞や神秘的なメロディライン、展開の激しいアレンジなどが混然一体となったロマンチックなサウンドを聴くと、頭の中に数々の映画の名場面が流れ込んでくるようで、めくるめく心地がする。


 続く「Panorama」は「Mise-en-Scène」の続編と言えそうな世界観を持った曲である。とはいえ、リードトラックであるせいか、よりポップに聴きやすく整理した印象だ。“私の気持ちが聞こえたら/もっと大きく叫んで/静かに始まった一編のドラマだよ”や、“深い闇の中で輝く星のように/私たちどこにいてもお互いを見つけられるよ”といった歌詞はIZ*ONEのイメージにもよく似合い、大ヒットも間違いないだろう。


 ここ1、2年の間、K-POPのメジャーシーンでは古き良き時代の音を新しい感覚で奏でるスタイルが流行しているが、「Sequence」もその流れにあるサウンドで、ディスコファンク風のアレンジが粋に響く。グループのイメージとは少しずれるものの、同曲のようなジャンルで聴く彼女たちの歌声はかなりフレッシュだ。


 ファンにとっては、アルバムの最後を飾る「Slow Journey(遅い旅行)」がいちばん気になるかもしれない。この曲はメンバーのキム・チェウォンが作詞・作曲に参加しており、今この瞬間をもう少しゆっくり楽しみたいと切実に訴える歌詞は、活動期間が決まっているグループのことを考えると、なんとも言えない気持ちになる。


 以上のようにミニアルバムながら注目度の高いナンバーがずらりと並ぶ『One-reeler / Act IV』だが、完成度を高めた要因のひとつにコンポーザーのセレクトがうまくいったことがあげられよう。前作に収められた「Merry-Go-Round(回転木馬)」の仕上がりが評価されたのか、本作ではe.one(チョン・ホヒョン)に「Mise-en-Scène」と「Sequence」を依頼し、リードトラック「Panorama」は、ファンに人気の高い「Up(空の上)」(2ndミニアルバム『HEART*IZ』収録)を書いたKZとNthoniusを再起用している。そして「Slow Journey」では、GFRIENDの代表曲を手掛けたイギヨンベがキム・チェウォンをサポートするなど、制作サイドのセンスが光るものばかりだ。


 本作でガールクラッシュ的な魅力をより強調した彼女たちは、日本ではまったくと言っていいほど正反対のイメージで勝負するのが面白い。12月2日にフジテレビ系列で放送された『2020 FNS歌謡祭』で、IZ*ONEは日本語曲「Beware」を披露したが、こちらは『One-reeler / Act IV』で見せたクールな佇まいと違い、ひたすら爽やかでキュートだ。


 日本と韓国では求められるものが違うということもあるだろうが、とにかくひとつのグループでふたつのスタイルが同時に進行しているというのは、K-POPでもJ-POPでもIZ*ONEだけではないだろうか。


 こんなユニークな個性を持つグループをもっと長く見たいと思うのは、ファンであれば当然である。韓国では最近、「活動期間延長に関する話し合いが近々行われるのではないか」というニュースが報じられた。2021年4月に活動休止すると現時点では決まってはいるものの、延長する可能性も出てきた、というのだ。この話が「事実」になることを期待したい。(まつもとたくお)