2020年12月13日 10:11 弁護士ドットコム
「職場でセクハラにあい、退職しました。これはよくある話かもしれません。しかし、よくある話にしておきたくありません」。弁護士ドットコムニュースのLINEに、20代の前田みさとさん(仮名)からこんなメッセージが寄せられました。
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驚くことに、その職場では、男性社員から女性社員に対するセクハラ発言やスカートめくりが「日常茶飯事」だったというのです。
「1年ほど前に会社を辞めてから、いろんな人から話を聞いて『あれってセクハラだった』と気づいた」と話す前田さん。今振り返ると「異常だった」という職場での経験を話してくれました。
「不倫しよう」、「体触らせてえや」。前田さんが勤務していた通信関連会社では、仕事中にもオフィスでこんな言葉が飛び交っていました。
「50代の男性マネジャーが、女性社員に仕事中にセクハラ発言をしていました。私も皆の前で『胸触らして」『ええ女やな』と言われて、周りも『また冗談言って』とケタケタ笑っているような雰囲気で…」
ある日、前田さんが仕事のことで悩んでいたところ、そのマネジャーから突然「飲みに行こう」と誘われました。
「予定していなかったのですが、すごい勢いで『ほら行くよ、準備して』と言われて。社内で偉い立場の人でもあり、断れなかったんです」
そうして始まった2人の飲み会。あまりお酒が強くなかった前田さんは、その日酔っ払ってしまい気分が悪くなりました。マネジャーは「家が近くにある」と言い、前田さんを休ませるために家に連れて行きました。そこから「変な雰囲気になった」と振り返ります。
「自宅で耳を舐められたり、ズボンの中に手を入れられたりしたんです。変なことされるやばい、と思って『すみません、体調が良くなったので帰ります』と抵抗したのですが、怖くてどうしたらいいか分からなくて」。
その後も、マネジャーからのセクハラ行為は続きました。飲み会の翌日には、前田さんが休憩室で洗い物をしていたところ、マネジャーが急に入ってきて鍵を閉めたというのです。
「休憩室は監視カメラがなく、後ろから急にバッとスカートを脱がされました。無言でやってきて、振り向くとニタニタしていて。でも、目撃者もいないし、何もできませんでした」
会社のハラスメント相談センターに連絡したが、「証拠がないから対応できない」と言われてしまった。
「告発したところで、カメラで撮影したり録音したりした証拠もないので、下手したら言いくるめられてしまう。どうにか証拠を集めようとしたのですが、突然やってくるので対応も取れませんでした」
職場では他にも揉め事が発生し、すっかり疲れ果ててしまった前田さん。体調を崩し病院に行くと、うつ状態だと診断された。当時を振り返り「セクハラと自分で判断するのが難しかった」と話す。
「当時はとにかく周りに合わせなきゃという考えが強くて、これはおかしいって一人で言える勇気がなかったんです。『自分がおかしいんだろうか?』と思い、何がおかしいのかも判別できませんでした」
今回自分の体験を話すにいたったのは、「今悩んでいる人がいたら、そういう人の背中を押せるようになれたらいいな」という思いからだ。
「私やっぱり早めに周りに相談しておけば状況が変わったのかな、とすごく後悔しています。ちょっとでも心に何か違和感や嫌悪感があったら、受けたハラスメントについてメモをとって、どこかに相談するべきだと思います」
セクハラを受けた場合は、加害者や会社に対して損害賠償請求ができる。また、体を壊した場合には、労災申請もできる。最近では、身体接触がないセクハラでも労災認定がされた事例がある。
前田さんが受けたセクハラのように、短い時間での接触型セクハラは証拠が集めにくい。こうした場合には、同じような経験をした仲間を探して、たくさんの被害の証言を集めることも一つの手だという(詳細:https://www.bengo4.com/c_5/n_11246/)。
セクハラの中には、刑法の強制わいせつ罪や強制性交等罪などに当たる悪質なケースもある。密室でおこなわれることが多い性犯罪だが、事件化するにあたっては、被害後にとった被害者の行動も重視されることは知っておきたい。(詳細:https://www.bengo4.com/c_1009/n_10617/)。
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