日本看護管理学会が12月10日、看護師の窮状を訴える声明を出した。同学会の別府千恵理事長はキャリコネニュースの取材に
「コロナ患者を看護していることを堂々と話せるような社会になるよう、国民の皆さまに理解を求めた次第です」
などと声明の背景を語った。
「家族と離れてホテルやウィークリーマンションで生活している人もいます」
声明では、新型コロナウイルスの感染患者の看護に従事する看護師に対する差別や偏見をやめるよう要求。「なぜナースたちは看護していることを社会の中で隠し、テレビに出る時にはモザイクをかけなければならないのでしょう」と疑問を呈している。
別府理事長は「モザイクで取材を受けるということがすべてを象徴していると考えます」とコメント。実際にいま、看護師が受けている差別や偏見について聞くと、
「育児休業の終了後、職場復帰のために保育園を探しているが、看護師であることが理由で預け先が見つからず、復帰できない看護師がいます」
と人手不足が続いている看護師の裏側を明かした。
また、声明の中では「自分自身の感染の危険性と私生活、自分のキャリアに目を瞑り、時には自分の家族にも仕事の内容を隠し、コロナウイルスに感染した患者さんを看てきました」と自身の家族との距離感に関する記述もあった。別府理事長は、
「小さい子ども、高齢者と同居している看護師の中には、家族と離れてホテルやウィークリーマンションで生活している人もいます」
と話し、生活拠点の見直しまで迫られたケースもあるという。
同学会によると、新型コロナウイルスの感染患者が増えているのに伴い、一般病棟の看護師がコロナ病棟に応援に行くケースもあるという。別府理事長は、
「例年冬は、循環器疾患や、脳血管障害の患者が増えます。その対応も含め、一般病棟の看護師の負担も大きくなっています」
とコロナ病棟に限らず、その負担は一般病棟の看護師にまで及んでいるという。また、マスコミで「看護師不足」が度々報じられているが、
「その報道によって国民の皆様に、看護職がコロナ病棟で働くことに協力していないとらえられてしまうのは、残念なことです」
と語った。
愛知県看護協会が6~7月に看護師を対象に実施したネット調査では、12.2%が「風評被害にあった」と回答。被害内容の内訳は「看護師であることで避けられる等」(46.2%)、「家族への攻撃、偏見等の影響」(28.1%)などが多かった。