2020年12月07日 16:21 弁護士ドットコム
借金を抱える夫に疲れ果て、離婚を検討している女性たちがいます。弁護士ドットコムにも「ギャンブルで200万円の借金を作った夫と離婚したい」という相談が寄せられています。
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相談者の夫は結婚前にも同じように借金を作ったそうです。「もう2度としない」という言葉を信じて結婚しましたが、結婚後わずか1年でその約束は破られました。子どもが生まれたばかりですが、「嘘をついて自分を守ろうとする夫に、家族としての意味もわからない。限界です」と、離婚を考えています。
別の相談者は、結婚14年目で夫の借金が発覚。「ずっとだまされ続けていたと思うと、離婚したくなりました」といいます。「子どもは3人、借金は総額350万円ほど。使ったのはパチンコ。返せなくなり、闇金に手を出したことで発覚しました」。
また、中には妻の両親が夫の借金を立て替えるなど、妻の実家を巻き込むケースも。ある相談者は、娘の夫の借金のために200万円を立て替えましたが、娘の夫は懲りずに180万円の借金を新たに作ったそうです。
借金を理由に、夫との離婚は認められるのでしょうか。濵門俊也弁護士の解説をお届けします。
ーー夫に借金があるという理由で離婚は認められるのでしょうか。
配偶者の借金が、夫婦間のトラブルを生むことはよくあります。しかし、単に「夫に借金があるから」という理由だけでは、離婚は認められません。
ただし、ご相談者が旦那さんに「借金だらけの生活は嫌だ。離婚したい」と切り出し、旦那さんが合意した場合は、離婚することができます。しかし、夫婦二人で話し合っても結論が出ない場合は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てる必要があります。
調停とは、二名の調停委員と裁判官からなる調停委員会が、第三者として当事者の間に入り、紛争解決に向けて話し合う手続です。調停離婚では、特に離婚の理由を制限していません。今回のケースのように、夫の借金を理由とする申立てもできます。
ただし、離婚調停は、あくまでも話し合いでの解決を目的とした場でしかありません。話し合いがまとまらなければ、調停が不成立となります。旦那さんが離婚することを拒否し続けた場合、最終的には、訴訟手続で決着をつけることになります。
訴訟では、離婚をしたい理由が、民法が定める離婚原因、つまり、「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「回復の見込みのない強度の精神病」「その他婚姻を継続し難い重大事由」のいずれかにあたれば、裁判所に離婚を認めてもらえます。
ーー夫に借金があるという事情は、民法で定める離婚原因に含まれるのでしょうか。
夫の借金を理由とする場合は、通常「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして離婚訴訟に臨みます。しかし、過去の裁判例をみても、配偶者の借金のみを理由に離婚を認めた事案はありません。
多くは、借金を原因として夫婦生活が破綻するに至ったことを重要な判断材料としているように思います。たとえば、夫がギャンブルで借金まみれになり、家に生活費を一銭も入れず、妻が夫への愛情を喪失して夫婦関係が修復不能になっているような場合です。
しかし、単なる「夫の借金」だけでは、夫婦関係が破綻しているとはいえず、離婚は認められないと考えられます。
とはいえ、離婚ができず、借金の返済に追われる毎日はとても辛いでしょう。どうしても借金を返していくことが難しくなった場合は、まず弁護士に相談していただければと思います。債権者と話し合って返済条件をゆるやかにするなどの交渉ができますし、最後の手段として、自己破産も可能です。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/