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カブリオレに高級ゴルフ場が沸いた? メルセデスの新型「Eクラス」試乗

2020年12月07日 07:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
メルセデス・ベンツの中核モデル「Eクラス」を選び、あえてクーペあるいはカブリオレに乗るとは、なんとも大人なやり方だ。2020年10月のマイナーチェンジで、これらのしゃれたEクラスがどう変わったのかについては、気になっている御仁も多いことだろう。試乗してきたので、ご報告したい。

○背中、もみます! 至れり尽くせりなEクラス

試乗したのはクーペとカブリオレの「E300スポーツ」。搭載するのは2.0リッター直列4気筒エンジンだ。車両本体価格はクーペが919万円、カブリオレが956万円。

最初に乗ったのはクーペモデルだ。Eクラスのクーペといえば、初代EクラスのW124から常にラインアップに加えられてきたメルセデス伝統のスタイルである。実用的なセダンやステーションワゴンに比べて、Eクラスベースのクーペは低く伸びやかなボディがエレガント。2ドアの高級クーペを求める一定の層がいつの世にも必ず存在することを、このクルマの存在自体が物語っている。特にEクラスのクーペは、今や貴重な存在となったピラーレスの2ドアハードトップを載せているから、4ドアセダンやSUVにまでクーペスタイルを展開する同社のモデル群の中でも、際立って贅沢な存在だ。

ボディサイズは全長4,845mm、全幅1,860mm、全高1,430mm。セダンに比べ、ボディは110mm短い。エクステリアカラーは濃いエメラルドグリーンで、強い光が当たると緑色が浮き出てくるような凝った塗装が施されているのに気がつく。

新しくなったフロントエンドは、クロームの縁取りをなくすとともに、下側を広くした台形のラジエーターグリルが目を引く。上下方向に薄く、少しだけ切れ上がった形状に変更となったヘッドライトも、同社のスポーティーモデルに共通するデザインだ。バンパー下部左右の2本のフィンと相まって、低くシャープな印象になっている。

ロングノーズショートデッキで、薄い三日月のような形のウインドーを持つサイドデザインは、フロントとのつながりがマイチェン前よりスムーズになっている。クーペらしさがより強くなった印象だ。

長いドアを開けると、3本のツインスポークを持つステアリングホイールが変化を感じさせる。右側スポークに安全運転支援システム、左側スポークにナビゲーションやインストルメントクラスター内の各種設定を行う機能を振り分け、ほぼ全ての操作がここで完結できる機能を持たせてある。

それ以外には、センターコンソールのタッチパッドが新形状になっている。試乗車のインテリアは、マキアートベージュ/ヨットブルーの2トーンレザーにアッシュウッドを組み合わせたもの。先代同様、「Sクラス」に似てとても優雅な仕上がりだ

天井の大きなパノラミックスライディングルーフから光が差し込んでくるので、サイドウインドーが薄いにもかかわらず、車内には望外な開放感がある。ホイールベースはセダンの2,940mmに比べて70mm短い2,870mmとなっているものの、絶対値としては十分に長いのでリアシートの足元も広い。2人で座っても窮屈さを感じさせないのは、さすがEクラスといったところか。

E300グレードが搭載するエンジンはE200と同じ「M264」型だが、排気量は2.0リッターにアップしている。最高出力は258PS(190kW)/5,800~6,100rpm、最大トルクは370Nm/1,800~4,000rpm。E200の1.5リッターに比べて低い回転数から最大トルクを発生する代わりに、「BSG」や「48Vシステム」といった補助動力は積んでいない。

そのパワー感は、1,800キロ(スライディングルーフ搭載車)の車重に対して必要十分といった感じ。アクセルを踏み込めば思った通りの加速が手に入るし、もっと速いモデルをお望みであれば、エキストラコストを支払って「E450」や「AMG E53」をお買い上げになるのがいいと思う。

E300でちょっと気になるのは、4気筒直噴エンジンのサウンドだ。スポーツモードなどを選んで走っているとアイドリングストップが行われず、停車中にはガラガラというディーゼルエンジンに似た音が車外に結構な音量で響くことになる。

それと、セダン/ステーションワゴンと同じく、例のランフラットタイヤも気になった。セダンはグッドイヤー、ステーションワゴンはピレリ、クーペはミシュランを履いていたが、このタイヤに起因すると思われる低速域でのコツコツ感はクーペでも感じた。クーペはコストのかかるエアスプリングと電子制御ダンパー「AIR BODY CONTROL サスペンション」を搭載しているのでちょっと期待していたのだが、その現象が解消されているわけでもなかった。

一方で気持ちよかったのが、エクスクルーシブパッケージ(94.9万円のオプション)に組み込まれていた左右前席のリラクゼーション機能だ。穏やかな力で背中のツボを「ポツン、ポツン」と押してくれるので、長時間使用しても体への負担が少なく、気持ちがいいからといって眠くなることもない。インテリジェントドライブと併用すれば、どんな遠いところへでも疲れ知らずで行けそうな気がする。ただし、オプション込みで試乗車の価格は1,020万円強となっていたから、おいそれと手に入れられるものでもないのだが……。

○高級ゴルフ場で大向こうから声がかかるカブリオレ

クーペよりもスペシャルなモデルを手に入れたいのであれば、次に乗ったカブリオレが文句なしにピッタリだ。エクステリアやインテリアの変更点はクーペに準ずるもので、2.0リッター4気筒のパワートレインなども同じになる。もちろん、オープンエアを満喫できるところはカブリオレでしか味わえない魅力で、4人がきちんと座れるシートや285~360リッターをキープするラゲッジなど、実用面も優れているところには感心させられる。

ソフトトップを開け、サイドウインドーまで下げたフルオープン状態では、前席のシートベルトが風圧でブルブル震えたり、後席に激しく風を巻き込んだりするけれども、ウインドーを上げ、フロント上部のウインドディフレクターと後席後部のエアロボードを組み合わせたエアロキャップを併用すると、空気は頭上を撫でるように流れるだけになる。

寒い季節になっても、エアコンとヘッドレスト下部から暖気を首元に送るエアスカーフを使えばオープン走行に何の問題もない。屋根を開けて走っていると、あまりにも気持ちがいいので、クーペで感じた乗り心地のネガな面を感じられなくなってしまうのもいい。

試乗は千葉県の高級ゴルフ場を拠点に行ったのだが、場内の道路を走行中、たまたま通りかかったメンバーの方から「やっぱりベンツのオープンはカッコいいねー!」との声が。パッケージオプション込みで1,050万円強とクーペ以上のお値段だが、このクルマの想定ユーザーは、カートで走り去っていったあの紳士のような御仁なのだろう。だとすれば、想定ユーザー層からの評判も、サンプル数は1人ではあるものの、上々なようだ。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)