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大湯都史樹が涙の初優勝。山本、キャシディらはトラブルに見舞われる【第6戦鈴鹿決勝】

2020年12月06日 16:11  AUTOSPORT web

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スーパーフォーミュラ初優勝を果たした大湯はパルクフェルメで号泣し、しゃがみ込む
2020年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦決勝レース(30周)が行われ、予選2位からスタートした大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が終盤の福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)との神経戦を制し、ルーキーイヤーに初優勝を飾った。3位には関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が入り今季初表彰台を獲得している。

 一方、ポールポジションのニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)はレース序盤にエンジントラブル、山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)もレース中のマシントラブルによりまさかの戦線離脱となるなど、ランキング上位勢がアクシデントに見舞われた。

 前日の第5戦決勝はレコノサンスラップから波乱が起きていたが、今回はアクシデントが起きることもなく、静かなスターティンググリッド、フォーメーションラップとなり、この時点では30周のレースは前日とは異なる様相になるかと思われた。

 好スタートを切ったのはキャシディで、2番グリッドスタートの大湯も動き出しは悪くなく、2番手に続いて1コーナーへ。その後ろでは福住がスタートで僚友の山本をかわして3番手に浮上。山本の後ろには、9番グリッドから抜群のスタートを決めた関口が大幅ポジションアップに成功していた。

 後方では序盤から激しいバトルが展開される。スタートでややポジションを落とした小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)と、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が2周目の日立オートモーティブシステムズシケインで接近。

 2台は接触を喫し、小林はパンク、フェネストラズはマシンにダメージを負ってシケインのアウト側でマシンをストップしてしまう。この車両を回収するために、レースは3周目からセーフティカー(SC)が導入された。

 このセーフティカーラン中に、4番手を走る山本のマシンに異常が発生。突如スロー走行になってしまい、西ストレートで力なく後続にかわされていく。何とかピットまで戻ってきたものの、そのままガレージイン。この第6戦の結果次第ではチャンピオンが決まる可能性もあった山本だが、前日のウイナーがまさかのノーポイントでレースを終えることとなった。

 セーフティカーは6周で隊列を離れ、レースは7周目にリスタート。上位陣はほぼ等間隔でコントロールラインを通過していくが、6番手を争う中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)と国本雄資(carrozzeria Team KCMG)が接近。国本はオーバーテイクシステム(OTS)を使い、1コーナーでアウト側から豪快に中嶋をかわしていった。

 その後方では山下健太(KONDO RACING)と、14番手からポイント圏内まで順位を上げてきた平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の8番手争いが白熱の様相を見せる。山下がOTSを使い終わったタイミングを見計らったかのように、今度は平川のOTSを示すライトが点滅し、シケインで逆転に成功した。

 トップを走るキャシディは後続を引き離しつつ、8周目には1分39秒094のファステストラップを記録するほど好調の様子を見せていた。しかし、次の瞬間、ホームストレートで白煙を上げながらスローダウン。1コーナーでコースを外れ、そのままコースサイドでマシンを停めなければならなくなった。

 さらにはチームメイトの中嶋が同じ周の2コーナー立ち上がりで右リヤタイヤがパンクチャーに見舞われ、こちらもスローダウン。中嶋はなんとかピットに戻り、レースへ復帰できたものの、VANTELIN TEAM TOM'Sにとって悪夢のようなラップになってしまった。

 キャシディの車両を回収するために、2度目のセーフティカーが導入され、その間にピットウインドウが開くと、松下信治(Buzz Racing with B-Max)と笹原右京(TEAM MUGEN)を除く全車が一気にピットになだれ込んでいく。

 2台を同じタイミングでピットへと呼び込んだチームも多々あり、数台が順位を落としてしまうことに。特に序盤でなんとかポジションを上げていた平川はひとつ順位を落とし、暫定9番手になってしまった。コースに復帰した順位では大湯、福住、関口の3名がトップに顔をそろえた。

 13周目に2度目のリスタートが切られると、平川の後ろにつけていた野尻智紀(TEAM MUGEN)が勢いを見せ、130Rで平川、日立オートモーティブシステムズシケインで山下も抜き去り、一気に8番手にポジションを上げて見せた。

 レース18周目、6番手を走行し、関口を攻め立てていた国本がS字コーナーで突如スピン。右リヤタイヤのパンクに見舞われたようで、そのままコースオフを喫してしまった。この車両を回収するためまたもやセーフティカーが導入されることに。

 このタイミングでステイアウトを選択してトップを走行していた松下と笹原がピット作業に向かい、これで全車が作業を完了。大湯が名実ともにトップに躍り出た。レースは残り8周でリスタートとなったが、この終盤戦ではトップの大湯と2番手につける福住が3位以降を引き離しながら激しいトップ争いを繰り広げていく。

 レース再開直後の24周目には大湯が1分39秒051でファステストラップを更新して福住を引き離そうとするが、翌周には福住が1分38秒台のタイムでファステストラップを塗り替え、両者は急接近。残り5周は1秒を切るギャップのなかで互いにミスの許されない戦いになった。ファイナルラップではお互いに残しておいたオーバーテイクシステムをフルに使って、最後の勝負へ。

 福住は130Rから日立オートモーティブシステムズシケインで超レイトブレーキングを見せるも、大湯には届かず。福住からのプレッシャーに打ち勝った大湯がトップチェッカーを受け、スーパーフォーミュラのルーキーイヤーで自身初優勝を飾った。3位には今季初表彰台となる関口、4位には坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、5位に野尻が入っている。

 編集部の手元の集計では、第5戦でポール・トゥ・ウインを飾ってポイントを55点に伸ばし、ランキングトップに立った山本がこの第6戦ではノーポイントに終わってしまった。一方、第4戦までランキングトップを死守してきたものの、第5戦でついにその座を降された平川は今回7位でフィニッシュしたため4ポイントを加算。得点は山本と同点の55ポイントに。ふたりの後ろには、野尻(47ポイント*)、キャシディ(46ポイント*)もつけており、最終戦に向けては彼らの逆襲も見逃せない。

 前週に行われたスーパーGTでチャンピオン争いを演じたふたりが、スーパーフォーミュラでもチャンピオンを懸けて、2週間後の富士で直接対決の火蓋が再び切って落とされる。

*注釈:今シーズンは有効ポイント制が採用されているため、ここまで終えた6戦のうち、最小ポイントを除外して算出。