2020年スーパーフォーミュラ第5&6戦鈴鹿 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 2020年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦決勝レース(30周)が行われ、ポールポジションからスタートした山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が一度もトップを譲ることなく、ポール・トゥ・ウインで今季初勝利を飾った。
2位には中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)、3位には国本雄資(carrozzeria Team KCMG)が予選9位から大幅ジャンプアップした。予選2位の野尻智紀(TEAM MUGEN)はスタート前にアクシデントに見舞われ7位。
最後尾から挽回を目指した平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、終盤3台でのアクシデントに巻き込まれリタイアとなった。
セーフティカーが3度も出る荒れたレースとなった第5戦。その兆しはスタート前から見えていた。スタート進行が始まり、各車がグリッドへ向かうレコノサンスラップ中、野尻のマシンがスプーンカーブ手前でストップしてしまう。
オフィシャルの手を借りてピットまで戻ってきた野尻のマシンは一旦、2番グリッドに着いたものの、フォーメーションラップでは全車両がスタートするのを見送り、最後尾スタートとなった。
またこのフォーメーションラップ中に、10番グリッドスタートだった関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が2コーナー立ち上がりでストップ。関口のマシンを回収するために、エクストラフォーメーションラップが2周追加され、決勝レースは28周で争われることになった。
また、フォーメーションラップの4周目に入るところで大嶋和也(ROOKIE Racing)が緊急ピットイン。ピット前でメカニックがトラブル修復の作業を行ったのちにピットスタートとなっている。
4周のフォーメーションラップを終えて、いよいよレーススタート。山本と福住仁嶺のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの2台は順当なスタートを切る。
後方では6番手スタートの小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)がスタートダッシュを決めて中嶋、牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)をとらえて3番手にポジションアップした。
その直後、牧野が挙動を乱しながらコースオフを喫し、ダンロップコーナーのタイヤバリアにヒットしてしまった。このアクシデントにより、レースはセーフティカー(SC)が導入される。
オープニングラップを終えた段階で上位3台は山本、福住、小林という顔ぶれ。後方では、トラブルのため予選に出走できず、最後尾スタートとなった平川が抜群のスタートを決めた後、混乱を潜り抜けて12番手にポジションアップを果たしていた。
スタート直前のトラブルにより、最後尾にまわった野尻も15番手まで順位を回復している。
クラッシュした牧野のマシンの回収が終わり、レースは6周目に再開。リスタート時の日立オートモーティブシステムズシケインでオーバーランを喫した中嶋は大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)にかわされ、5番手に後退。
後方では坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)と笹原右京(TEAM MUGEN)の9番手争いが白熱。笹原がオーバーテイクシステムを使って坪井の攻略にかかるが、坪井も応酬してブロック。2台の争いはピット作業後にも再び激しくなり、レース終盤に大きなアクシデントを引き起こすこととなる。
先頭を走る山本は7周目、8周目とファステストラップを更新しながら2番手につけていたチームメイトの福住以下、後続との差をどんどんと広げていく。山本について行きたい福住だったが、レース10周目、西ストレートで突如スローダウン。
なんとかピットには戻ってきたが、そのままピットにマシンを戻してレースを終えることになった。これにより3番手につけていた小林が2番手にポジションアップしている。
10周目に入ってピットウインドウが開くと、上位陣では4番手を走行していた大湯がピットに向かう。同じ周に7番手を走行していた松下信治(Buzz Racing with B-Max)とニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)、平川もピットイン。
松下はチームの素早いピット作業により大湯を逆転して、4台中トップでコースに復帰。大湯は松下の後ろでコースに入ったものの、直後にキャシディにかわされポジションを落としてしまった。
12周終了時点では国本がピットイン。6.7秒という速い時間で作業が済み、松下の前でコース復帰する。その翌周には小林もピット作業を行うが、タイヤ交換に手間取りタイムロス。
さらに後ろから他のマシンがピットに戻ってくるタイミングと、小林の動き出しのタイミングが重なってしまったことで、14秒以上タイムをロスしてしまい、同タイミングでピット作業を行った中嶋の逆転を許してしまった。
レース折り返しの15周目時点で、トップの山本から7台がピット作業を行っておらず、8番手を走る中嶋と山本との差は38秒。その差は縮まることなく、18周を終えたところで山本がピットロードへとステアリングを切った。
チームがタイヤ交換を行い、再びコースへと出ていくちょうどその時、130Rで松下がクラッシュ。マシンのリヤからタイヤバリアにヒットしてしまった。
これによりレース19周目、2度目のセーフティカーが導入される。このタイミングで、坪井、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、山下健太(KONDO RACING)、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)、シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)、そして野尻がピットイン。
これで全車が作業を終え、トップは山本、2番手には中嶋、3番手には国本、4番手に笹原、5番手には坪井が並んだ。野尻はピット作業でKONDO RACINGの2台をかわし、ポイント獲得まであとひとつの11番手でコースに復帰した。
レースは23周目に再開。リスタート直後から笹原と坪井の4番手争いは激しさを増し、スプーンコーナーでは坪井が笹原の背後に接近する。お互いにオーバーテイクシステムを使いながら130Rを駆け抜けると、坪井は日立オートモーティブシステムズシケインで笹原のアウト側に並ぶ。2台の後方には隙あらばと小林、平川も近づいていた。
ホームストレートでテール・トゥ・ノーズになった笹原と坪井。そのアウト側には2台を一気に抜き去ろうと小林が。笹原を抜こうとアウト側にマシンを振った坪井は、小林と笹原に挟まれる形になる。
そのバトルのスキをぬって笹原のイン側に入った平川が3台まとめて抜きにかかる。4ワイドとなったマシンはそのまま1コーナーへと入っていったが、これが大きなアクシデントを招いてしまった。
笹原がわずかにアウト側にマシンを振ると、坪井のマシンの右フロントに接触。挙動を乱した笹原のマシンは右前に出ていた平川のリヤにぶつかりながらスピンを喫し、マシンは横転しながらタイヤバリアに乗り上げる形でストップ。リヤに大ダメージを負った平川のマシンもクラッシュの影響で1コーナー先でタイヤバリアにぶつかってしまう。
坪井はなんとかコースにとどまったものの、タイヤとマシンにダメージを負ってピットに戻り、そのままリタイアとなってしまった。3台のアクシデントを奇跡的にギリギリで回避した小林は4番手にポジションアップを果たしている。
2台のマシン回収のため、3度目のSCが導入。27周目にスタートが切られ残り2周の超スプリントでレースが再開された。山本はSCのライト消灯を確認すると、スプーンコーナーでスピードを大きく落とし、後方をけん制。
バックストレッチで加速すると、オーバーテイクシステムを駆使して逃げにかかり、残しておいたオーバーテイクシステムも一気に使って、ファステストラップも更新。そのまま背後を脅かされることなくトップチェッカーを受けた。
山本は今シーズン初、2019年の第3戦SUGO以来となる勝利をポール・トゥ・ウインで飾った。2番手の中嶋も今季初表彰台を獲得。KCMGの2台とキャシディによる3番手争いは国本が制し、こちらもうれしい今季初表彰台となった。
山本はポールポジションの3ポイントと優勝の20ポイントを加算し、ランキングトップを死守してきた平川を上回り、ポイントリーダーに躍り出た。
明日は第5戦と同じスケジュールで第6戦の戦いの火蓋が切って落とされる。果たして、絶好調の流れを引き寄せている鈴鹿マイスターの山本が連続で勝利を飾るのか。はたまた、新たなウイナーが誕生するのか。
第6戦の予選は12月6日(日)9時15分から行われる予定だ。
※追記:終盤の1コーナーでのクラッシュに関しては全日本スーパーフォーミュラ統一規則第15条1.1(危険なドライブ行為)に該当するとして、レース終了後、笹原に40秒加算ペナルティおよびペナルティポイント3点が加算された。