トップへ

中卒の私が「高卒」と偽って金融機関に就職… 罪悪感から「精神的に崩壊しました」

2020年12月05日 08:41  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

中卒の私が「高卒」と偽って金融機関に就職したものの、罪悪感から退職。学歴詐称は罪になるのでしょうかーー。弁護士ドットコムに悩める女性からこんな相談が届きました。


【関連記事:「私、田中さんと不倫してるんだ!」浮気相手がポロリ、噂は一気に広まった!】



●「高卒が条件」だった

女性によると、転職活動を検討していたところ知人に声をかけられ、金融機関の採用面接を受けることになりました。



問題は「高卒が条件」だったこと。女性は中卒だったのです。



しかし、その知人や配属先となる部署の人たちから「適当に学校名を書けば良い」と言われ、ためらいながらも「生活のために転職が必要だったので、履歴書に卒業していない学校名を書きました」。



●罪悪感をバネに仕事に取り組んだが…

女性は面接に合格し、仕事をする上でも何ら問題はありませんでした。むしろ、罪悪感をバネに仕事に取り組み、実績をあげていったといいます。





ところが、次第に「嘘をついている」という罪悪感に苦しめられることになります。自分がしたことは詐欺ではないかと疑い、「精神的に崩壊し、最終的には離職しました」。離職した今も、履歴書を書くのが怖いといいます。



学歴条件つきの会社に詐称して就職し、実績を残したとしても、罪に問われるのでしょうか。森田梨沙弁護士に聞きました。



●刑法上の犯罪になる可能性は低い

今回のケースでは、刑法上の犯罪が成立する可能性は低いと思われます。



詐欺罪や私文書偽造罪が成立すると思われる方もいるかもしれませんが、詐欺罪は単に人を騙しただけでは成立せず、「人を欺いて財物を交付させた」ことが必要です。



今回のケースでは、給与を受け取っていたとはいってもそれは労働の対価であって、会社を欺いてこれをだまし取ったとは言えません。



また、私文書偽造罪が成立する「偽造」とは、他人の名義を偽って文書を作成することを言います。履歴書に偽りの学歴を書いていたとしても、単に、真実に反する文書を作成しただけでは、ここでいう「偽造」にはあたりませんので、私文書偽造罪もやはり成立しません。



●「懲戒解雇」の可能性は残る

ただ、今回のケースで、会社の就業規則に「重要な経歴を詐称して雇用されたときは懲戒解雇とする」といった条項が定められている場合には、これによって懲戒解雇とされる可能性がありますし、そういった条項がなかったとしても、普通解雇になる可能性もあります。





経歴詐称を理由とする解雇を有効と認めた裁判例の多くは、「重要な経歴」に関する詐称であることを要件としています。



ここでいう「重要な経歴」とは、社員の採否の決定や採用後の労働条件の決定に影響を及ぼすような経歴であり、偽られた経歴について、通常の会社が正しい認識を有していたならば雇用契約を締結しなかったであろうといえるような経歴を意味すると考えられています。



一般に、学歴はこれに該当すると考えられますが、職種や、採用の学歴条件が明確にされていたかなどの事情によって、解雇が可能かどうかの判断は変わってくることになるでしょう。



(弁護士ドットコムライフ)




【取材協力弁護士】
森田 梨沙(もりた・りさ)弁護士
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はゴルフと漫画。
事務所名:共進総合法律事務所
事務所URL:http://www.kyoshin-law.com/index.html