スーパーGTで劇的な勝利を手にし、チャンピオンに輝いた山本尚貴。タイトル獲得から1週間経たず、スーパーフォーミュラ第5戦、第6戦が開催される鈴鹿サーキットにやってきた。スーパーGT最終戦のあの興奮から新たなチャンピオンは今週末のスーパーフォーミュラ初日をどのように迎えたのか。
先週日曜日にスーパーGTでタイトルを獲得してから、今週はスーパーフォーミュラに臨む山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。ポイントランキングは現在4位につけている。
「スケジュールとしてはそんなに忙しくはなかったですね。この間、月、火、水の3日間しかなく、木曜日にはもう鈴鹿に移動していました。月曜日と水曜日はいつものトレーニング施設に行って月曜は身体のケアや回復メインのトレーニングをしていました」といつもの日常のルーティンのトレーニングを行っていたという山本。
「スーパーフォーミュラもチャンピオンの可能性を残していますし、プロのドライバーとしてしっかりと準備を進めるというのは、それまでの結果云々関係ない。チャンピオンを獲ったからとか、獲らなかったからとかではなく、あくまでも予定通りにですね」
「あとは、チャンピオンを獲らせてもらったので、取材や今後のイベント関係のスケジュールの調整だったり事務的な部分もこなして、あとは普通にお父さんでもあるので家のこともやって(苦笑)、そうしてたらあっという間に鈴鹿にいるという感じですね」
鈴鹿2連戦が勝負どころなのは承知の山本、専有走行ではセッション開始早々に1分36秒699とレースレコードから0.7秒しかかわらない速いタイムを記録した。
「どうしてあんなにぶっちぎっていたのかというくらいのタイムでした(笑)。勢いって大事なのかなとちょっと考えさせられるくらい、専有走行からすごく乗れていたし、クルマもよかった。タイムを出すときに前のクルマに引っかかっていなければもうちょっと上には行けていたと思います」
一発のタイムだけではなく、決勝セットにも手応えを感じているようだ。
「相手の燃料とかタイヤの状況もわからないのですけど、比較的こちらはレースの想定をした条件で走っていましたが、決勝に関してはかなり自信があります。ただその決勝のペースを活かすも殺すも、予選のポジション次第というところはあるし、予選のポジションとレースの展開次第になってくると思います。この前のオートポリスから決勝に分があるクルマにより過ぎているので、そのまま、なんとか予選でも前に行けるクルマを両立できると、かなり有利になるかなと思っています」
金曜の練習走行のタイムのトップは平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。山本は3番手で、今週末も平川×山本の戦いが見られそうな展開になってきた。山本としては平川の存在はどこまで意識するものなのか。
「彼は彼で、スーパーGTで気持ちを切り替えられるほどの展開じゃなかったのはよくわかります。だけどそれはもう、レースをやって結果を残してくことでしか気持ちは切り替わらないと思います。僕は僕で、いい流れをそのまま翌週に持ち込むことができるようなレースをさせてもらったし、また今回もいい流れで臨める。でも、欲を言えばチャンピオンを決めたレースの後なので、もうちょっと余韻に浸る時間は欲しかったなと、正直思いますね(苦笑)」
勝った山本も、自分なりにメンタルの切り替えを意識したようだ。
「当然この鈴鹿にも懸ける思いも強いものを持って臨むつもりですが、さすがにちょっと一瞬気が抜けてしまうというか。ほっとしたというか、ふと抜ける瞬間はあったので、自分でもそこはちょっと怖いです」
「それで気を抜いたら、今週はやられてしまいます。スーパーGTのニュースとか動画を見て、その喜びは喜びで感じたい部分もあるし、それで気持ちが上がる部分もある。だけどこの鈴鹿に来る前には前回のオートポリスのレースを見て、気持ちを戻したというか、やはりすごく悔しいレースだったので。勝てるパフォーマンスがあったのに勝てなかったというのは、やっぱり自分の力不足。そのオートポリスを見直して気持ちまた戻して、ここに来たので、僕は僕で気持ちを切り替えることができました」
カテゴリーは違えども、ドライバー同士のコース上のバトルだけでなく、背景のストーリーを含めた心理戦もまた、レースの魅力でもある。
「彼は彼でここに懸けてくる思いは強いだろうし、僕も僕でここにかけている思いは強い。本当に気持ちのぶつかり合いがモータースポーツの一番の醍醐味だと思うので、しっかりと切り替えて、スーパーフォーミュラでも勝ちたいし、チャンピオンを撮りたいし、平川選手にも負けたくないです」
これまでの傾向では、予選で平川、決勝で山本に分がありそうな気配だが、スーパーフォーミュラでもまたすぐにふたりの戦いが見られることになりそうだ。