5代目となったルノー新型ルーテシアは2020年11月16日から国内販売が開始された。ルーテシア(欧州名:クリオ)は欧州Bセグメントクラスをリードする人気モデルで、先代のルーテシア(4代目)は、これまでベンチマークとされていたフォルクスワーゲン・ポロの牙城を崩したモデルだ。
その後継モデルとなる5代目ルーテシアはプラットフォームを一新して登場。早速、試乗レポートをお伝えしよう。
Bセグメントクラスに求められる性能は、キャビンスペースなどのユーティリティへの要求値が最も高く、次に燃費、そしてダイナミック性能やデザインといった項目が並ぶ。
そうした全領域を進化させたのが新型ルーテシア。それに加えて、Bセグメントクラスの常識を超える先進安全技術も搭載されている。
その先進安全運転支援システムはルノー、日産、三菱のアライアンスによるシナジー効果によるものだ。
その技術は『ルノーイージードライブ』で、日産が開発したプロパイロットを搭載している。
日産車では軽自動車も含めてプロパイロットが搭載されているが、これまでのルーテシアにはそこまでの安全運転支援技術は搭載されていなかった。
この度のフルモデルチェンジでグレードによる多少の装備、機能の違いはあるものの、デフォルトでレベル2の安全運転支援システムが搭載されているのはセグメントを超える装備と言っていいだろう。
今回はトップグレードの『インテンス テックパック』を、横浜の市街地や周辺の高速道路を含める日常的に走行するシーンで試乗した。
『インテンス テックパック』は1.33リッターターボエンジンを搭載し、7速EDC(DCT)を組み合わせている。国内導入はこのパワートレーンのみになっている。
駆動方式はFFのハッチバックスタイル。このパワートレーンはルノー、日産、三菱アライアンスにメルセデスも加わって開発したコンパクトカー用のエンジンで、メルセデス・ベンツのAクラスにも搭載されているH5H型だ。
7速EDCはゲトラグ製で、先代の乾式6速EDCから湿式7速EDCへと変更されている。
市街地、高速道路を含め、7速EDCは滑らかに変速する。エンジンの排気量は小さいが、トルクフルな走りが可能でストレスはない。
出力は96kW(131ps)/5000rpm、240Nm/1600rpmで、高速走行中からの加速も鈍くなく、力強く加速するあたりは欧州生まれの素性を垣間見る。
ステアリングにはパドルシフトが装備され、瞬時にダウンシフトやマニュアルシフトへの切り替えが可能になっている。
操舵では、ステアリングギヤ比を先代の15.2から14.4までクイックに変更しているため、俊敏なレスポンスをする。
ステアフィールはドライブモードで変更でき、コンフォート、レギュラー、スポーツが選べ、操舵の手応えの違いを任意に設定できる。
またドライブモードは『マイセンス』『スポーツ』『エコ』の3モードで、デフォルトは『マイセンス』になる。
マイセンスとはインディビデュアルの意味で、好みによる個々の設定を意味し、ステアリングフィールやパワートレーン設定などを個別にセットアップできる。
サスペンションは思いのほか、硬めだった。スポーティといったほうが正しいかもしれないが、ロールやピッチングがよく抑えられていて、フラットな印象を受ける。
こうしたセットアップは、ルノーらしいストローク感のあるサスペンションとは異なり、“ルーテシアらしさ”は少し薄味に感じた。サスペンションや乗り味が薄味だと感じるのは、先進安全運転支援システムが少なからず影響しているという。
つまり、緊急時の急激な、つまり大トルクでモーターを動かすときに、正確なレスポンスとスピードが要求されるため、アクチュエーターやソレノイドのチューニングが要求される。
さらにハードパーツもそれに対応したものとする必要があるため、全体に引き締まった乗り味になっていくわけだ。
とはいえ、こうした先進技術の搭載によって、正確性や俊敏さは人間の反応速度以上のスピードで操作されるため、より安心・安全になったということは言うまでもない。
さらに言えば、こうした先進技術を使いながらもルーテシアらしさを作り出すことが次の課題と言えるだろう。
◾️エクステリアは継承、インテリアは大きく変化
じつは、この新型ルーテシアに採用した新プラットフォームは『CMF-B』タイプで、特徴として、ガソリン、ディーゼルはもちろん、ハイブリッドにも対応している。
バッテリー搭載の課題もクリアし、かつ衝突安全でもユーロ5を獲得している最新版だ。ちなみに、プラットフォームの開発は最初に採用するメーカーが開発することになっており、CMF-Bはルノーが中心となって開発されている。
そして、2020年12月に投入される日産の新型コンパクトカーは、このCMF-Bが使われたモデルということになる。
新型ルーテシアの開発の主眼は、セグメントに捉われず、マーケットが要求するジャストサイズで応えるとして開発されている。
ボディサイズは全長4075mm(先代比マイナス20mm)、全幅1725mm、全高1470mm、ホイールベース2585mmとなっており、やはりBサイズであることに変わりはない。
エクステリアデザインは、先代のデザインを踏襲しており、ひと目でルーテシアとわかるデザインになっている。
それは変化が乏しいようにも感じるが、4代目ユーザーの購入動機で最も多い理由が“デザイン”だったことから、キープコンセプトデザインとした経緯がある。
いっぽうでインテリアは大きく変化した。まず、これまでの常識を破るものとしてソフトパッドの多用が挙げられる。
ドアサイドからグローボックス、ダッシュボードなどがソフトパッドになっていて、Bセグメントクラスでは考えられない上級な装備だ。
モニターはメーター内に7インチモニターを設置し、センタークラスターにも7インチのオーディオディスプレイが設置されている。
オーディオディスプレイはApple CarPlay、AndroidAutoが接続できるが、ナビはこれまで通り標準設定されていない。
新型ルーテシアのグレード展開は3つ。エントリーモデル『ZEN』は受注生産で、車両価格は236万9000円。その上に『インテンス』と『インテンス テックパック』の2グレードを用意する。
パワートレーンは全モデル共通で、装備違いによる価格差になっている。車両価格は『インテンス』が256万9000円、『インテンス テックパック』が276万9000円(税込み)。
ボディカラーは6色展開で、新色はオランジュ バレンシアメタリックとブルー セラドンメタリックの2色となっている。