管理職のみなさんから、こんな声がよく聞かれます。
「部下の言っていることがさっぱり伝わってこない」
「コミュニケーション能力の低い若手が多い」
「細かい事ばかりを言っていて、何を言いたいのか分からない」
このようなメンバーに困っていませんか?
今回はコミュニケーション下手なメンバーに対して、どのような関わりを持ちながら、成長に繋げていけばいいのかについて話していきます。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
リアルコミュニケーションが苦手な世代
上司層の若い頃には、インターネットやSNSといったものが無かったので、リアルコミュニケーション能力を求められました。
しかし、今の若い方々はデジタル世代です。隣にいる同僚に対してすら、メールやSNSでコミュニケーションを取っていることに違和感を持ちません。ただ、デジタルコミュニケーションは、どうしても端的なコミュニケーションになりがちで、感情表現力に関しては乏しくなってしまいます。
また、語彙力もコミュニケーションには不可欠です。「すごい」「素晴らしい」「魅力的だ」「きれい」「美しい」といった表現も、現代の若手はすべて「やばい」と表現したりします。言葉は我々の感情を生み出すので、人の感情を動かすコミュニケーションや、自分の感情を表現するコミュニケーション能力に問題のある方が多いようです。
メンバー自身も自分の想いや考えを整理できるように
何が言いたいのかさっぱりわからないメンバーには、論理的なコミュニケーションスキルを教える必要があります。論理的なコミュニケーションスキルとしては、SDS法やPREP法といったものがあります。ここではよく使われるPREP法をご紹介します。
PREP法は、P(Point)・R(Reason)・E(Example)・P(Point)の頭文字をとったものです。例えば、自分の趣味を相手にお勧めする場合ならば、次のような流れで会話を組み立てます。
P(Point):キャンプはお勧めです。
R(Reason):なぜなら、自然の癒しの力は絶大だからです。
E(Example):先日も、仲間と千葉の房総にキャンプに行ったのですが、夜にたき火を見ながらお酒を片手に自然を感じる。最高の瞬間でした。日頃の悩みや疲れもどこかへ飛んでいき、頭をクリアにすることが出来ました。
P(Point):なので、キャンプはお勧めですよ!
このような、流れです。いかがでしょうか。非常に分かりやすいと思います。
このフレームをメンバーに教えていくのです。仕事の中でも、まずはPointを言わせる。そして、その理由(Reason)と詳細、具体的事項(Example)を話させ、最後にPointを繰り返させるのです。メンバーにこの基本が身に付くと、メンバーの言いたいことの理解が進むことは勿論、メンバー自身も自分の想いや考えの整理が付いていくようになります。
「要約力」を鍛える!
細かいことばかり言っていて、話が長く、的を射ないメンバーには、言ったことを要約させましょう。このようなメンバーの頭の中では、自分の言いたいことの整理がついていません。整理が付かないまま、その時の状況を細かく、何の脈絡もなく話し続けてしまうのです。メンバーとの会話の中で、次のようなフレーズを所々に入れていきましょう。
「要するに?」
「今言ったことを一言で言ってみると?」
「これまでの話を3つのポイントにまとめてみると?」
このようなフレーズで、メンバーの頭の中を整理させ、メンバーのコミュニケーション能力を鍛えていきましょう。最初のうちは、なかなか上手に出来ないことも多いと思いますので、所々で上司の皆さんの要約力を披露しましょう。
「要するに、A君の言っていることはXXということだよね!」
「一言で言うと、XXということかな!」
といった感じです。
以上、今回はメンバーのコミュニケーションスキルを上達させるための上司としての関わり方について紹介してまいりました。知識だけに終わるのではなく、ぜひ実践していきましょう!
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。