2020年11月30日 17:22 弁護士ドットコム
豊胸手術の事実を隠してバストアップ商品をプロデュース、販売していたことが発覚したYouTuberのてんちむさん。11月29日に自身のYouTubeチャンネルにアップした動画で、商品の推定返金額が3億7千万円を超えると報告した。
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すでに計2億2000万円を支払済みとしたが、さらに、メーカーに対する損害賠償金が5000万~6000万円ほどが残っており、合計支払額は4億3千万円ほどになるという。
コメント欄には「一人の人間に負わせる罰ではない…」「ブラが悪いわけじゃないんだから返金は全額じゃなくてもいいのでは」と返金額に驚く声が相次いでいる。
てんちむさんは9月2日、今まで豊胸手術をしたことが一切ないとしていたが、6年前に自分の脂肪を胸に注入する豊胸手術をしていたと告白。商品の返金希望者には、返金対応をすると発表した。
てんちむさんは「担保がないので、(銀行からも)大きな額を借りることはできない」と打ち明け、新たに銀座のクラブなどでも働き始めている。
ただ、残りの支払い金額は約2億円と途方も無い金額だ。てんちむさんは「自己破産したら返金もできなくなるので、しっかり返させてもらいたい」と話しているが、もし仮に自己破産を希望した場合、支払いも免除されるのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
——残りの支払い金額は約2億円となっていますが、仮に自己破産したらどうなるのでしょうか
まず、代金の返還については、てんちむさんが自身の意思で決められたということですが、本来は返金に応じる必要はない類のものです。てんちむさんは、あくまでも商品の対価としての代金を受領しただけであり、その点において何ら詐欺的要素はないからです。
つぎに、メーカーに対する損害賠償金が5000万~6000万円ほどが残っているとのことですが、これは自己破産の申立てをすれば免責されます。
メーカーが有する損害賠償請求権は、てんちむさんが悪意で加えた不法行為に基づくものではないと思われます(破産法253条1項2号)し、故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権でもない(破産法253条1項3号)からです。
——てんちむさんは「自己破産はしません。絶対完済します」と話しています
お金をいつまでに完済しなければならないという制約はありません。先ほども述べましたとおり、代金の返還についてはあくまでもてんちむさんが任意で応じるものであり、法的に強制できるわけではないためです。
また、メーカーに対する損害賠償については、てんちむさんが弁済を継続するかぎり、債務が消滅時効にかかることはありません。
自己の非を素直に認め、謝罪し、贖罪の行為に及ぶことは、なかなかできることではありません。他人にはないインフルエンサーとしての力を遺憾なく発揮され、無事完済されることを希望します。そして、再び信頼を回復され活躍できるよう願っています。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/