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こうすればうまくいく! あしたのチーム流「ワーケーション」 サテライトオフィスとリフレッシュ休暇を組み合わせ

2020年11月30日 10:30  キャリコネニュース

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コロナ下の「新しい日常」の一環として、政府が提唱したワーケーション。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせ、旅行先でリモートワークを行うというものだ。

しかし巷では、実現性が低いと評価はさえない。そんな中でも、業務への影響を最小限におさえながら、社員の心身のリフレッシュ機会を設け、会社に対するエンゲージメントを高めようとしている会社がある。

そんな会社のひとつが、人事評価サービスを提供する株式会社あしたのチームだ。ボトルネックをひとつずつ解消し、ユニークな制度を作り上げている。他社でも参考になるのではないだろうか。(キャリコネニュース編集部)

「リモートワーク」と「休暇」をどう組み合わせるか

ワーケーションの最大のねらいは「有給休暇の取得促進」だ。労働基準法の改正により、2019年4月から全ての使用者に対し「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務づけられている。

これを遵守する制度設計は、会社のコンプライアンス上、重要となる。従業員のリフレッシュによる生産性向上や、プライベートの時間充実による仕事へのモチベーション向上、離職防止や採用力強化、健康経営という効果も期待できる。

しかし、休暇中に業務をさせることはできないし、出勤扱いなら休暇が消化できなくなってしまう。労務管理上の問題を起こさずにワーケーションを実現するには、「出勤扱いのリモートワーク」と「仕事をしない休暇時間」を組み合わせる方法を考えるしかない。

社員の懸念としては、滞在に費用がかかることや、オンとオフの切り替えがうまくいかなくなることがある。会社としても、セキュリティが十分確保された場所で仕事を行ってほしいという思いがある。

あしたのチーム流「ワーケーション」の制度は、そのような課題をクリアする。入社5年・10年の永年勤続者が徳島県三好市をはじめとする同社のサテライトオフィスでワーケーションをする場合、会社が最大20万円の補助を出すというものだ。

地方のサテライトオフィスで「午前中だけ勤務」

あしたのチームには、オペレーションセンターを設置する三好市を含め、全国に4か所のサテライトオフィスがある。地元雇用や地方創生への貢献が目的だが、今回はワーケーションの起点として活用するのがポイントだ。

例をあげてみよう。10月上旬にこの制度を利用した早川将和さんは、サテライトオフィスの近くに4泊5日で宿を取った。ともに交通の便のよい場所にあるので「出勤時間」は徒歩1分だ。

宿泊した4日間の過ごし方は、午前中は業務、お昼にはホテルに帰り、家族と昼食をとってそのまま午後は観光を楽しむ。会議がある場合には午後6時から7時までに入れてもらい、それ以外はプライベートの時間をゆっくり確保できたという。

あしたのチームは、もともとフレックスタイム制を採っており、コアタイムも月曜・火曜の午前中のみだ。月の所定労働時間は160時間で、そのほかの時間は柔軟に使うことができる。早川さんは、実際に行った感想をこう述べる。

「特に事前の準備もせずに、到着当日から普通に仕事ができました。いきなり1週間の休暇を取るためには、結構な準備が必要になります。でも、午前中毎日働けるのであれば、特に引き継ぎもいりません。ゼロ(完全休暇)か100(完全仕事)かではなく、50や70という選択肢があると、休みをもっと取れるようになると思います」

仕事の時間を自分で設定できることが条件になるが、コロナ禍をきっかけにリモートワークが急速に普及した影響も大きい。これまで無理と言われてきたリモートの壁を越えた会社は、ワーケーションの実現に近づくことになる。

「会社が認めた場所」ならセキュリティも安心

あしたのチームの新制度には「永年勤続者への特別休暇」というベースがあった。しかし、休暇の消化が進んでいなかったのが実情だ。早川さんは、従来の制度が抱えていたジレンマについて、こう説明する。

「業績優秀者や永年勤続者に対して、休暇を与える会社は多いと思います。でも、仕事ができる社員ほど、取引先への対応や業務の調整を行う手間も大きく、休みが取りにくいというジレンマがあります。
会社としても、社員にリフレッシュして永く定着してもらいたいと思うものの、戦力社員が長期離脱するのは痛手で、休暇を付与したものの、実際に使われてみるとお互いに困るという状況があったのです」

これは通常の社員の休暇取得にも通じる話といえる。日本人の働き方に対するマインドや、オンオフの切り替えなどの問題もある。

「リゾート地のビーチから、テレビ会議でボスに“元気?”と呼びかけるような欧米流のワーケーションは、日本人のマインドにはないですし、実際にやってしまうと、上司や同僚の反発を買ってしまいます(笑)。
また、仕事の場所がホテルということになると、仕事の環境が目の前にあって休暇にならない。宿泊地とサテライトオフィスという2つの場所を確保することによって、休暇と仕事の線引きができるようになります。
ネットカフェや漫画喫茶で仕事をすることは、セキュリティ面でも不安がありますが、会社が認めたサテライトオフィスがあれば安心です。会社で認めた場所からのウェブミーティングなら、他の社員に気後れすることもありません」

オフィスにいるより「仕事がはかどった」面も

ワーケーションの期間を長くとり、「1日数時間の仕事」と「完全な休暇」を組み合わせれば、確かに有休取得の促進になる。

これまで “水曜日は外せない仕事があるので長期の休みが取れない”という人は、長期の旅行が取れず、一泊二日などの短期旅行を選ぶしかなかった。しかしこの方法なら、旅先で水曜日だけ働けば、残りの日は羽を伸ばすことができる。

「リフレッシュ休暇を5日取るのであれば、ワーケーションの地に2週間くらい行って、半分仕事をして半分休むといった過ごし方で、長く使うのがいいと思います」

2週間もいれば、現地の生活イメージも湧いてくる。移住促進につながるのであれば、地元自治体もお得な平日・長期滞在プランで支援してくれるようになるかもしれない。

早川さんの場合は、休暇中はレンタカーを借りて、吉野川や大歩危・小歩危(おおぼけ・こぼけ)、祖谷(いや)のかずら橋(国指定重要有形民俗文化財)など、点在する観光地をゆっくり見て回ったという。

会社の保養所があっても、一泊二日では急ぎの旅となり、体力的にも消耗してかえって疲労が溜まってしまう。やはり長期滞在で、働きながら休暇を取る「ワーケーション」でなければできないリフレッシュがありそうだ。

また、仕事面でもメリットがあったと、早川さんは振り返る。

「オフィスにいるといろんな人に話しかけられて、けっこうバタバタして1日が終わっちゃったりするんですけど、サテライトの静かな環境で仕事をすると、だいぶはかどったというのが正直な感想です(笑)」

早川さんは、ワーケーションの活用方法として「子どもの夏休みに合わせて来られると、とてもいい」と感じたという。

「大人が仕事をしたり休息を取ったりしている間に、子どもだけで一週間の合宿に参加できたりしたらいいですよね。自分が住んでいるところではない場所に、中長期滞在できる制度があるというのは、いろんないいことがある気がします」