歴史的僅差の最終決戦となった2020年スーパーGT第8戦富士スピードウェイでのGT500クラス決勝は、ほぼレース全域を支配した37号車KeePer TOM'S GR Supraがまさかの結末を迎え、そのライバルを最後まで追い詰める走りを見せた100号車RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/牧野任祐組が2020年初優勝を飾ると同時に劇的な大逆転劇でこの波乱のシーズンを制した。山本はジェンソン・バトンと組んだ2018年以来2度目、牧野はGT500参戦2年目にしてのタイトル獲得。そしてRAYBRIGブランドのラストランを飾るGT500チャンピオンを手にした。
例年どおりノーウエイト戦として開催された今回の富士は、11月29日(日)という開催時期のみが異例で、前日土曜午後の予選は気温13℃、路面温度も17℃と今季初の冷間コンディションに。ここで躍進したのがロードラッグなマシン特性を武器とするGR Supra勢で、開幕戦勝者KeePer TOM'S GR Supraがポールポジションを奪取。以下、4番手までトヨタ勢が並び、ホームコースでの決勝レースに向け盤石の体制を築き上げた。
2周を予定していたフォーメーションラップが走行中に急きょ1周追加され、レース距離が1周マイナスの65周に変更。王座決定戦に向け、スタートではポールの37号車KeePer山下健太を先頭に、2番手DENSO KOBELCO SARD GR Supraヘイキ・コバライネン、3番手au TOM'S GR Supraのサッシャ・フェネストラズ、4番手ZENT GR Supra立川祐路がディフェンスラインを組むように1コーナーのTGRコーナーへ。
■マシンを降り、拳でガードレールを叩いた平川亮
ともにタイヤに苦しむMOTUL AUTECH GT-R、ZENT GR Supraは、ともに16周目にさらにポジションを失い、KEIHINバゲットが4番手、13番手スタートだったWAKO'S 4CR GR Supraの大嶋和也がコントロールラインからの3ワイドバトルを制し、一気に7番手浮上に成功する。
ホームストレートへと入った37号車KeePer TOM'S GR Supraは、なんとそこから加速することができず。攻めに攻めていた燃料搭載量が、この重要な局面で運命の悪戯を引き起こし、勝負の結果のガス欠でストレート脇にマシンをストップ。マシンを降りた平川は右拳でガードレールを叩き、その場に崩れるようにしゃがみ込んで悔しさをみせた。
加速できなかったKeePer TOM'S GR Supraの横をすり抜けていった100号車RAYBRIG NSX-GT、山本尚貴がトップでフィニッシュラインをくぐり、2020年初優勝を飾ると同時に劇的な形で自身2度目のチャンピオンを獲得。そのRAYBRIGもウイニングランを走り切ることができず、こちらの燃料もギリギリを攻めた、まさにGT500クラスのコンペティションレベルの熾烈さを象徴する幕切れとなった。