2020年11月28日 17:31 弁護士ドットコム
「息子が、高校時代に借りた奨学金の返済を拒否している。母親である自分が代わりに支払わないといけないのか?」。 弁護士ドットコムに50代の女性からこんな投稿が寄せられました。
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2人の息子を女手一つで育ててきたという女性。長男は専門学校を卒業して就職し、二男も現在専門学校に通いながら就職活動をしているそうです。
女性によると、息子は2人とも高校時代に、それぞれ月1万8000円、3年間で計64万8000円の貸与式奨学金を受け取っていました。
専門学校に在学している間は、返金猶予届を出すことで、奨学金の返済をしなくていいそうですが、その期間を過ぎると、半年に一度8万円の返済をしなければなりません。ところが二男は…。
「俺の学費は、公立だからかかってない。兄貴の学費や生活費になってたんだから、俺は、払わない」
女性によると、たしかに二男の奨学金は生活費にあてていましたが、本人の修学旅行積み立てや、通学費にもなっていたといいます。
女性は二男に奨学金を返済してほしいと思っていますが、話し合いをしても「払わない」の一点張り。
「私には養育する義務があるからだと言うのです。納得できる理由がない限り払わない可能性があり、いちど、決めたら頑固に突き通す気質なので、諦めています」
二男が借りていた奨学金の返済義務は、本人にあるのでしょうか。それとも、母親にあるのでしょうか。加藤寛崇弁護士に聞きました。
最近の奨学金は、利息付貸与が中心で、利率も高額です。取立ても厳しくなっており、多々問題が生じている現状があります。
今回問題となっている「奨学金」がどの制度を利用したのか不明ですが、基本的に、奨学金はあくまでも「借金」です。そして、生徒・学生(本件では二男)が借主となりますから、二男が返済義務を負うことになります。
借りたお金がどう使われたのかということは、法的には意味がありません。通常の借金であっても、借主が、借りたお金を第三者に渡したりすることもあります。しかしそうであっても、貸主に返済義務を負うのは、あくまでも借主自身です。
もし仮に、母親が二男に奨学金の借入れをする話すらせずに、勝手に二男に代わって署名押印していたような場合であれば、二男と貸主との契約は成立していません。この場合、奨学金を返済する義務は二男ではなく母親にあります。
そうでなくても、保護者が連帯保証人になっていれば、借主である生徒・学生が返済しない場合に保護者が返済しないといけません。
返済が難しい場合は、弁護士に依頼して債務整理や自己破産などの法的手段を検討するのが現実的な解決策です。
これらの法的手段により不利益を被ることは避けられませんが、その不利益は永久に続くわけではなく、5年から10年程度で登録は消えます。延滞を続けるよりも、早めに法的手段をとって解決した方が賢明です。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/